顧客の信頼を育て、「安心と安全」の提供を通じて快適な社会生活と経済の発展に貢献する東京海上日動火災保険株式会社(以下:東京海上日動)。デジタルの力により、さらに豊かな顧客接点を生み出すべく、「Financial Services Cloud」を採用しました。保険業界向けにアップデートされたFinancial Services Cloud について、セールスフォース・ドットコム 常務執行役員 エンタープライズ金融営業本部長の田村英則、リードソリューションエンジニア 宮田武が説明し、東京海上日動IT企画部長の関邦夫氏が、Financial Services Cloud 導入に至る経緯とその成果について紹介します。(本ブログは2019年9月Salesforce World Tour Tokyo 2019で実施されたセッション“Financial Services Industry Keynote”をもとに作成されています。)

 

年3回のアップデートを経て、保険業界向けの機能を新たに実装

Financial Services Cloud は、金融サービス向けに構築されたCRMです。企業活動の中心に顧客を据え、顧客の信頼とロイヤルティを構築することで、金融機関の強みを最大限に引き出すことができます。セールスフォース・ドットコムの田村は、「Financial Services CloudはSalesforceの技術に加え、パートナー企業とのエコシステムの力も活用しています」と語りました。金融に特化した機能を実装したFinancial Services Cloud は、2016年のリリース以来、年3回のアップデートを行い、グローバルで金融機関向けに提供されています。

 

セールスフォース・ドットコム エンタープライズ金融営業本部長 田村 英則

 

2019年に行われたFinancial Services Cloudの最新のアップデートでは、保険業界に特化した機能を実装。契約者様の保険契約、請求状況、問合せ対応、補償内容といったすべての情報を管理することで、360度ビューで顧客との関係を強化することができます。セールスフォース・ドットコムの宮田は、顧客への金融商品のリスク説明用のテンプレートの自動作成機能を紹介し、「生産性の向上とコンプライアンスの遵守に役立てることができます」と説明しました。

 

お客様を360度ビューで捉え、ふさわしいタイミングで商品を提案

保険業務においては、扱う情報が多いことから顧客情報が分散してしまう問題が起きがちです。たとえば他の保険契約の状況や、世帯構成、ライフイベントなどの情報が複数のツールで管理されていると、業務が非効率になるだけでなく、契約更新や新規契約などの成果を上げにくくなってしまいます。宮田は、「Financial Services Cloudを使うことで、車の購入やお子様の誕生といったお客様のライフプランの管理ができ、お客様との関係を深めることができます」と利用シーンを挙げました。

 

セールスフォース・ドットコム リードソリューションエンジニア 宮田 武

Financial Services Cloudにより一元化された情報は、AI機能『Salesforce Einstein』と連携しています。たとえば、保険契約の継続率を予測し、ネガティブな要因とポジティブな要因をリストアップすることができるため、この情報を参照すれば、次に起こすべきアクションを把握できるでしょう。

このほか、Financial Services Cloudは保険料の集計機能や、契約更新率などのKPI表示機能などを備えているため、保険募集業務やオペレーター業務の生産性向上に直結。最後に宮田は「生産性が向上すれば、お客様ひとりひとりに対して適切なタイミングではたらきかけることができ、より幅広いニーズに応えることができます」と語りました。

 

「お届けする力の改革」における基盤としてFinancial Services Cloudを採用

東京海上日動は、「お届けする力」の強化を目指し、改革に着手しました。そこでスタートしたのが、Financial Services Cloud採用に向けたプロジェクト。同社のIT企画部長である関邦夫氏は、「お客様が抱えている不安やリスクは、ひとりひとり違います」と語ります。よりよいサービスを実現するには、お客様の顔が見える距離での顧客接点に加えて、デジタルによる多様な接点を作ることが大切です。

Financial Services Cloudについて関氏が最初に知ったのは、社内のメンバーから「米国の保険会社ではFinancial Services Cloud が使われているようだ」という話を耳にしたことだったといいます。ここから関氏は長年にわたり顧客接点の研究を続けてきたSalesforceについて知り、導入に向けた検討が始まりました。

関氏を含むプロジェクトメンバーは2018年にサンフランシスコで開催されたSalesforceの年次イベント『Dreamforce2018』に参加。そのときの感想について、関氏は、「規模の大きさに驚き、Salesforceがグローバルで多くのユーザーを持っていることを実感しました」と驚きを表現します。さらに、米国のSalesforceの本社に行き、Financial Services Cloudのプロダクトのチームとディスカッションをした関氏は、「システムに込められているコンセプトや、将来的な可能性が見え、これが最後のひと押しになりました」とFinancial Services Cloud採用の背景を話しました。

 

セールスフォース・ドットコム 田村(左) と 東京海上日動 IT企画部長 関 邦夫氏(右)

 

すべての人や社会の挑戦を応援するために

こうして2019年、東京海上日動は国内保険会社として初めてFinancial Services Cloud を採用、Financial Services Cloud を新たな代理店向けプラットフォームとして利用していくことを決定しました。

これにより、保険契約や事故の履歴といった情報だけでなく、様々な顧客情報の集約を図るとともに、保険募集人向けのタスク管理機能、代理店の規模にあわせて経営を支援するメニューなど、多様な機能を優れた操作性で提供していくことが可能になります。

またその他のSalesforceの製品とあわせて、法人および個人向け営業、保険代理店、コールセンター、マーケティングなど多様な顧客接点で得る情報をSalesforceのCRM上に集約していきます。これにより、東京海上日動のグループの1万7,000人以上の社員と、全国約50,000店の保険代理店、全国100万人以上に上る保険募集人がSalesforceを介してひとつとなって、顧客と直接つながることにより、顧客の期待値を超えて、安心して選ばれる企業となることを目指していきます。

 

東京海上日動 IT企画部長 関 邦夫氏

「私どもは、すべての人や社会の挑戦を応援したいと思っています。挑戦する気持ちを支える存在でありたい。そのためのFinancial Services Cloudの活用について今まさに議論の最中ですが、Financial Services CloudをはじめとしたSalesforceのプラットフォームをフル活用してすべての人や社会の挑戦を応援できるサービスを提供していきたいと考えています」(関氏)