Vol.1では日本の企業における人材の育成や営業の生産性アップにおける課題と、それらを解決する有望な打ち手としてインサイドセールスをご紹介しました。
Vol.2では、日本でインサイドセールスがどのくらい利用されているのか、また導入している企業ではどのような効果が表れているのかについて詳しく解説していきます。
まずは日本国内のインサイドセールスの認知度を見ていきましょう。
アンケートの結果、日本におけるインサイドセールスの認知度はかなり低いということがわかりました。企業規模に関わらず約70%の人が「インサイドセールスという言葉を聞いたことがない」と回答しています。
導入率となるとさらに低く、インサイドセールスを実際に利用している企業の割合はほとんどの規模の企業で10%を切る結果に。一番高い割合でも、従業員数1000名以上の企業の14.2%にとどまりました。
では、実際にインサイドセールスを導入した企業では、どのような効果が実感されているのでしょう。
企業規模によってばらつきはあるものの、多くの企業から上がったのが、「案件数が増加した」、「新規顧客数が増加した」という声でした。
他にも「アポの質が上がった」、「営業分析に基づく打ち手を出すことが可能になった」、「顧客情報の適切な利用ができるようになった」など、データを活用できるようになったことによる業務改善の効果も感じられています。
このように、インサイドセールスならデータを一元管理して、これまでの商談や取引の内容を細かにチーム内で共有し、どのタイミングで商談を持ち掛ければ成約率が上がるかといった戦略も分析することができます。さらに、「営業マンの長年の勘」のような主観的で属人化されたスキルではない、客観的なデータを利用するため、実績の少ない若手社員やセールス経験のない社員でも比較的容易に案件を扱うことができ、平準化した営業スキルを短期間でマスターできるという効果も期待できるのです。
次に、インサイドセールスを導入している企業としていない企業を比較し、どんな点で差が現れているかを見ていきましょう。
Vol.1でも述べた通り、一般的に営業マンが独り立ちできるようになるには3年ほどかかると認識されています。しかし、導入企業では「半年から1年未満」と回答した人が32.0%と最も多い結果に。導入していない企業の14.6%と比べると2倍以上となり、インサイドセールスを導入することで営業マンを一人前に育てるための時間が大きく短縮されることがわかります。
新規見込み客の獲得に関してはどうでしょうか。インサイドセールス導入企業では、およそ40%が新規見込み客の情報に対して効率的にアプローチできていると回答しています。これは導入していない企業のおよそ3倍の数値となります。
さらに、導入企業の中では、創業期からインサイドセールスを導入すべきと考えている人の割合が最も多く、それだけ企業の成長のために導入の必要性や効果を実感していると言うことができそうです。反対に導入していない企業では成長期(3年から10年未満)以降に導入すべきという回答がおよそ70%を占めていますが、ここでご紹介したメリットを考えると、早い段階でインサイドセールスを導入することがライバル企業との差を広げるチャンスにもつながるかもしれません。
インサイドセールスは、見込み客の発掘から商談の成約にかけて、どの段階までを担当するかよっていくつかのタイプに分けることができます。
アンケートの結果、日本では、見込み客の発掘から商談を開始するまでのコミュニケーションをインサイドセールスが行い、具体的な提案や成約は外勤営業が行うという外勤連携型を導入している(もしくは導入したいと考えている)企業が多いことがわかりました。
一方、欧米では一歩進んで、見込み客の発掘から商談の成約まで全てのステップをインサイドセールスで行う内勤営業完結型が主流となっています。日本でこのタイプを採用している企業の割合はまだまだ低いのが現状ですが、今後働き方改革が進み、リモートワークをはじめとした新しい働き方が加速してゆけば、こうしたタイプのインサイドセールスが増え、従来の営業スタイルが根底から変わるかもしれません。
日本におけるインサイドセールスの現状と、インサイドセールスが企業にもたらすメリットについてご紹介してきました。社会的な課題といえる人材育成や生産性の課題を解決し、商談の成立や業務の改善に大きく貢献してくれるインサイドセールス。導入を検討する価値は大いにあるといえそうです。
参考文献
・『2018年版ものづくり白書』(経済産業省 2018年)