「私たちSalesforceでは、第4次産業革命と呼ばれる大きな流れの中で最新のテクノロジーを駆使してデジタル革命に挑戦し、リードしているみなさまをTrailblazerと呼んでいます」
基調講演は、セールスフォース・ドットコム代表取締役会長兼社長である小出伸一のこの言葉から始まりました。「Trailblazer」とは先駆者や開拓者を意味し、それは会場に集まったすべての方々のことでもあります。「A Celebration of Trailblazers」という講演タイトルどおり、小出はまず祝福と感謝の意を示しました。
ファンを増やしながら事業成長を続けてきたSalesforceでは、今回のイベントはまさにそれを象徴するかのような盛り上がりを見せ、事前登録者数1万5,000以上、基調講演会場には3,600名、サテライトを含む会場には5,000名以上が参加。オンライン視聴数20万以上が参加する国内最大級のプライベートイベントになりました。
これまで人類は、その歴史において3つの大きな革命――蒸気機関、電気、コンピューターとデジタライゼーション――を経験してきました。そして今まさに4つ目の産業革命が訪れています。すべてがインテリジェンスを持ってつながり、可視化された世界。そこでは企業と対等かそれ以上の優位性を持つお客様が当たり前のように存在します。
企業にとっては、いかに最高の顧客体験を提供できるかどうかが、生き残りをかけた差別化要因になります。Salesforceは、Customer Success Platformの提供をとおして企業の成功を支えることが使命です。ただし、成功に導くためにはTrailblazerの力が欠かせません。Trailblazerは必要なスキルをオンライン学習体験プラットフォームであるTrailheadを通して身につけ、新たなキャリアを切り開いています。すでに世界では100万を超えるユーザーが1,000万以上の学習単元を完了させ、ビジネスの成長や新たな雇用の拡大を生み出しており、さらなるSalesforce Economyの拡大につながっているのです。
そんな会場に集まった数多くのTrailblazerの中からステージに登場したのがネオス株式会社の佐藤夕佳氏です。佐藤氏はコミュニティグループのリーダー的存在であり、AppExchangeのコンテストでも優勝されました。佐藤氏は、結婚を機に退職してから6年間専業主婦を経て、Salesforceとコミュニティに出会い自身のキャリアを再スタートさせ活躍しています。その経験から、コミュニティへの参加による知識の積み重ねの大切さや女性のキャリア形成にSalesforceが役立つことの価値をメッセージしました。(同氏のブログはこちら)
最初にリリースされたSalesforceには、SFA(営業支援)機能しか備わっていませんでした。しかし、お客様のニーズに応えながら、さまざまな機能が追加されてきました。そして今回新たに発表されたのが「Salesforce Customer 360」です。
Customer 360とは、Salesforceの各サービス同士や他のシステムをつなげ、一元管理を可能にします。米国セールスフォース・ドットコム共同創業者兼CTOのパーカー・ハリスは、「アプリケーションやデータをすべてつなげることによって、お客様をより一層深く理解できるようになります。営業やマーケティングだけでなく、すべてのユーザーが恩恵を受けられます」と新機能を紹介しました。
Customer 360によって扱うデータ量は一気に増えますが、それを理解して活用するのがAIです。パーカー・ハリスは、「第4次産業革命にはAIが不可欠です。私たちのAIであるSalesforce Einsteinはデータが大好きで、いくらあっても多すぎることはありません」と強調しました。
そしてもう一つの目玉機能として紹介されたのが「Einstein Voice」です。AIエンジンであるEinsteinを利用することで、Salesforceを音声で操作したり、ボットの構築を実現します。
Salesforceのディレクターでありデータサイエンティストでもあるサラ・アーニーは、Salesforceのモバイルアプリを使った音声によるやりとりのデモを紹介。単なる音声認識にとどまらず、メモの内容から適切な取引先情報を検索したり、意図を理解して適切なアクションの候補を提示したりする様子を見せました。
Salesforceの活用事例では、まずピンクの高速バスを運営するWILLER株式会社の取り組みが紹介されました。同社ではCustomer 360を使ってEinstein Analytics、Marketing Cloud、Service Cloud、自社基幹システムを連携。年間292万人以上いるお客様一人ひとりに対して、きめ細やかなカスタマーサポートや最適なキャンペーンを提供しています。
WILLERの取締役である横溝英明氏は、お客様のニーズをどのように把握して顧客体験の向上に結び付けているかという質問に対して、「お客様の求めているものを先回りしてご提案すること。お客様の声にしっかりと耳を傾け、その分析結果を社内で共有し、改善へとつなげること。それを絶え間なく繰り返すことが大切です」と答えました。そして来るべき第4次産業革命に対しては、「交通業界はもっともインパクトを受ける分野であり、100年に一度の大きな変化が訪れます。“待ってました”という気持ちで、すでに取り組みを始めています」と、チャレンジであるとともに大きなチャンスと捉えていることが語られました。
続いて紹介された事例は、世界中に25億人ものお客様を持つユニリーバの取り組みです。同社ではCustomer 360をベースにカスタマイズしたUnilever 360を構築。50以上のシステムを一つにまとめ、世界9万2000人の従業員にインサイトを提示しています。また、サスティナビリティを重視しており、それを促進するためのアイデアを社内公募しました。その結果、消費者が自分の好きな独自のアイスクリームを作りながらサスティナビリティについて学べるモバイルアプリが選ばれ、アプリの構築やプロモーションにSalesforceのHerokuやDatoramaが活用されていました。
基調講演では、次々と進化するSalesforceソリューションの新機能、そして次世代への先進的な取り組みをTrailblazerのみなさまと共に歩み続けることを改めて提示。
もう一度舞台に立った小出は、その具現化の1つとして「Japan Trailblazer Fund」の発表も付け加えました。
これは、Salesforceユーザーに対して新たな機能を提供する日本のスタートアップ企業を対象に、1億ドルのファンドを開設するもの。すでに米国セールスフォース・ドットコムの投資部門であるSalesforce Venturesでは、革新的な日本の企業40社に対し投資を行ってきた実績があります。今後はJapan Trailblazer Fundにより、Trailblazerの活躍の場を広げ、クラウドによるイノベーションをより加速させていくことが宣言されたのです。