現代の顧客はテクノロジーの進歩の恩恵を受ける一方で、それを提供する企業への不信感の高まりという課題も抱えています。 優れた顧客体験を生み出すものへの期待は高く、それを提供できない企業に対してそれほど我慢強くはありません。
第2回『State of the Connected Customer(コネクテッドカスタマーの最新事情)』レポートでは、世界各国の6,700人を超す消費者や企業の買い付け担当者を対象とし、現代の消費者の意識を掘り下げました。 ビジネスと信頼をかけてしのぎを削る企業にとって、今回明らかになった新たな常識はどのような意味を持つのでしょうか?
こうしたトレンドは、販売相手が消費者であるか(B2C)、企業の代表として買い付けを行う担当者であるか(B2B)に関わらず、あらゆる企業に影響を及ぼします。 今回の調査では、消費者と企業の買い付け担当者両方の回答をまとめて「顧客」としました。
レポートでは、一筋縄ではいかない顧客の微妙な心理や状況を掘り下げています。 その結果、大きく分けて以下の5点が明らかになりました。
「顧客体験」は昨今、避けては通れないテーマですが、その理由はこうです。 顧客の80%が「企業が提供する体験は、その商品やサービスと同じくらい重要である」と答えています。 大半の回答者はさらに一歩踏み込んで、この考えを「財布」で表明しています。実に57%が「競合企業の顧客体験の方が優れていたので、それまでの企業から購入するのを止めた」と回答しているのです。
こうした体験の根底にあるのは、信頼です。 95%の顧客が「もしその企業を信頼できるなら、固定客になる可能性が高い」と答えています。 注目すべきは 「もし」という言葉ですが、詳細は後で説明します。
「B2Me」という概念は新しくはありませんが、近頃脚光を浴びてきています。 企業の買い付け担当者の82%が「個人的に買い物をするときと同じ体験がしたい」と考えています。 ところが、「B2B体験全般における企業の対応はおおむね満足できる」と回答した人はわずか27%にとどまり、改善の余地が大いにあることがうかがえます。
今の文化を形作るのは「常時つながっている」状態と「即座に満足が得られる」ことであり、 「自分」と「今すぐ」という言葉が、購入プロセスのあらゆる段階におけるマジックワードとなっています。 84%の顧客が「(数字としてではなく)人間として扱われることがビジネスの成功には重要だ」と考え、 70%が「(部署・チャネル間でのシームレスな引き継ぎや、以前のやり取りを踏まえた顧客対応など)プロセスのつながりがビジネスの成功に重要だ」と回答しています。 ここから見えてくるのは、従来はカスタマージャーニーのある一部分にしか関わってこなかったマーケティング、eコマース、営業、サービスの各部門が、これからは顧客とのあらゆるタッチポイントを見渡さなければならないということです。
購入前からすでに、顧客一人ひとりに合わせて接することが非常に重要です。実際、59%の顧客が「以前のやり取りを踏まえて一人ひとりの顧客に合わせた対応をすることが成功するうえで非常に重要だ」と回答しています。 例えば、買い物かごから削除した商品に関して独自の提案をする、または以前購入した商品と関連するような商品を勧めるなど、顧客一人ひとりに特化したメッセージを送ると、大きな効果があるかもしれません。
購入に際しては、企業の買い付け担当者の78%が、自社のニーズや業界に通じた信頼できるアドバイザーの役割を営業担当者に望んでいます。 買い付け担当者は一般消費者よりさらに、商品のおすすめやモバイルアプリを重視する傾向が強く、これはB2CとB2Bの顧客行動の違いが曖昧になっていることの表れだと考えられます。
そして購入後は、両者ともに自分の好きなチャネルでリアルタイムのサービスが受けられることを高く評価しています。 「待つ」という発想が珍しくなりつつある中で、顧客は自力ですばやく答えを見つけられるようなセルフサービスのツールを強く支持しており、チャットボットでさえ、順番待ちをしなくても良いという理由で肯定的に受け止められています。
口先だけではない真のイノベーションを持っているかどうかは、多くの顧客にとって決め手となります。 顧客の56%(企業の買い付け担当者では66%)は、最も革新的な企業からの購入に積極的です。
そうしたイノベーションにおいて、当然ながらテクノロジーは非常に大きな役割を担っています。 59%の顧客は「企業がビジネスを継続して行くには先進のデジタル体験を提供することが必要」と答えています。 59% は顧客体験向上のために企業が人工知能(AI)を利用することに好意的です。
ようやく普及が始まった段階の新興技術に対しても、大半の顧客は自らの体験を大きく変えた(あるいは実際に変えつつある)と見ています(IoT(60%)、音声認識機能搭載のパーソナルアシスタント(59%)、AI(51%))。
顧客が期待する体験を提供し、顧客一人ひとりをあらゆる角度から理解していることを示すには、新しい種類のテクノロジーとデータの蓄積が必要です。 ところが最近の事件で明らかになったように、顧客の信頼を得ているすべての企業がこうしたテクノロジーやデータを適切に扱っているとは限りません。 顧客の62%が「自分のデータが不正に使用されているかもしれないという不安感は2年前よりも強くなっている」と回答。さらに、約半数(45%)は企業による個人データの取り扱い方に戸惑いを感じています。
一見、企業はパラドックスに直面しているように見えます。パーソナライズした体験の構築に必要なデータの提供で顧客が企業を信頼しないとなると、企業はどうやってその体験を提供すればよいのでしょうか? しかし、データを使うことのメリットをはっきりと示せば、大半の顧客は同意してくれるはずです。 調査では、以下のような注目すべき結果が得られました。
82%の顧客が「デジタル体験と現実の体験をつなげるためなら自分の関連情報を提供する」と回答
81%の顧客が「営業担当者からもっとアドバイスがもらえるなら自分の関連情報を提供する」と回答
85%の顧客が「より積極的なカスタマーサービスが受けられるなら自分の関連情報を提供する」と回答
92%の顧客が、「どの個人情報が収集されるかを自分で管理できることが、情報の取り扱いに関して企業を信頼する決め手になる」と回答しています。 企業にとって、信頼を構築し、パーソナライズとプライバシーを両立することが、第4次産業革命において顧客の期待に応えるための鍵となります。
レポートの全文をダウンロードしてご覧ください。顧客体験の進化やそれを促進するテクノロジー、顧客・企業間の信頼関係のバランスなどについての調査結果を詳しく紹介しています。