「Trailblazersのみなさん、お客様、そしてパートナーのみなさん。すべてのみなさんと一緒に、ここにいられることがとてもうれしい。この場は、みなさんが日頃行っているすべてを讃えるための場所。Dreamforceのいちばん大事な目的のひとつです」。
Salesforceが2003年から毎年開催している世界最大のソフトウェアカンファレンス「Dreamforce」。 今年の基調講演に登壇した会長兼共同CEOのマーク・ベニオフは、こう切り出しました。2018会計年度の売上が100億ドルを突破し、2019年度は130億ドル以上を見込むSalesforce。そんななかマークは、Salesforceを活用して革新に挑戦する人々・Trailblazersたちに、またSalesforce のOhana(社員やパートナー、関係者)すべてに、最初に感謝の意を示したのです。そして今回のDreamforceは、「これまでで最も大きな、そして最もエキサイティングなものになりました」(マーク)。世界90カ国以上から、実に17万1000人以上が事前登録を済ませ、1000万人以上がオンラインで参加する今年のDreamforceには、まさにふさわしい表現でしょう。
そのうえでマークは、信頼、カスタマーサクセス、イノベーション、平等というSalesforceの4つのコアバリューを紹介。さらに、“We are living no one behind.(誰も置き去りにしない)"という力強い言葉とともに、デジタルの恩恵があらゆる人に届く”Inclusive Capitalism(誰もが参加できる資本主義)”というビジョンを示しました。紹介されたのは、米国のPepUp Techの取り組み。貧困など不利な立場に置かれた若者に、デジタルの知識とスキル、経験を提供し、就労を支援する非営利団体で、TrailheadやSalesforceのプロダクトを活用しています。会場にはPepUp Techの多くのメンバーが招かれ、マーク自らが全ての参加者に向けて彼らを紹介しました。
こうした社会変革を実現するうえで、ビジネス活動は最も優れたプラットフォームである。そう信じるSalesforceは、「1-1-1モデル」の取り組みを続けています。製品の1%、株式の1%、就業時間の1%を活用してコミュニティに貢献するというシンプルなルールで、これまでに社員が取り組んだボランティア時間は、300万時間を超え、2億2000万ドル以上の寄付と、3万6000以上のSalesforceプロダクトが非営利組織に提供されています。
マークはさらに、Dreamforce、そしてSalesforceとしての脱炭素・脱プラスチックのための取り組みも強調しました。今回のDreamforceは、2003年の第1回目からこれまでで最もグリーンでサステイナブル。参加者には繰り返し利用できるウォーターボトルを配布しているほか、離れた会場間の交通手段として自転車タクシーを提供。リサイクルのためのボランティア「Green Angel」の力も借りてゴミの分別を徹底しています。もちろん、会場で提供されるランチなどの包材はすべて燃やせる、土に還る素材で作られています。
ここ数年、Salesforceの、そして全世界のビジネスパーソンの大きなテーマとなっている「第4次産業革命」。あらゆるモノが、あらゆる企業がネットを介してインテリジェントに人々とつながるそのインパクトは、さらなる勢いで人々の生活を変えつつあります。一方で、「その向こう側には常に顧客がいるということを忘れてはなりません。だからこそ、我々はおよそ20年にわたってカスタマーサクセスのためのプラットフォームに磨きをかけてきました」(マーク)。セールス、サービス、マーケティング、コマースから分析まで、Salesforceはプロダクトの拡充とTrailblazersたちのコミュニティの力によって、カスタマーサクセスをあらゆる角度からサポートできるようになったのです。 Salesforceのプロダクトをより深く連携させ、まさに360度すべての角度から一歩先のカスタマーサクセスを提供するための新たなプラットフォームとして、Customer 360が紹介されました。Customer 360 によって、部門やチャネル、デバイスによるやり取りをシームレスに管理できるようになり、ブランドとして統一したサービスを提供できるようになります。 さらにMuleSoftを通じて、Salesforceプラットフォームの外で管理されている顧客データも、一括で管理・確認できるようになります。これら複数のアプリケーションを簡単に導入できる開発済みパッケージ(Pre-built cross-channel packages)や、アプリケーションを横断して利用できる共通のログインID「360 ID」の提供も予定されています。こうした機能はすでに一部のお客様が先行して利用しており、2019年にはさらに多くのお客様に向けて提供が開始される予定です。
Salesforce共同創業者であり、CTOを務めるパーカー・ハリスが、Customer 360の優れた取り組みの一つとして紹介したのが、小売も手がけるアパレルブランド、イタリアのBrunello Cucinelliです。同社のECサイトを支えるのは、SalesforceのECプラットフォーム・Commerce Cloud。例えばお客様がECサイトでブルーのブレザーを注文した直後、思い直して「やっぱり他の色がいい」とチャット画面に入力したとします。すると、Service Cloudを通じて対応するオペレーターはダッシュボード上で、Commerce Cloudに記録されているオンラインでの購買履歴だけでなく、MuleSoftを通じて統合された実店舗での購買記録も同時に確認できます。オペレーターはすぐに、直近でこのお客様がグレーのセーターを購入していることを知り、「グレーも気に入るはず、グレーをおすすめするべき」と判断できます。
このように、Commerce、Serviceといった各Salesforce製品に加え、MuleSoftを通じて実店舗のデータベースとも連携することで、より多くの情報をもとに最適な判断が下せるようになるのです。また、オンラインと実店舗の顧客データの重複を「名寄せ」する機能も追加されています。基調講演では他にも先進的なTrailblazerたちの取り組みとして、この夏に共同CEOに就任したキース・ブロックがユニリーバの事例を、チーフ・イクオリティ(平等)・オフィサーのトニー・プロフェットがマリオット・インターナショナルの事例を紹介しました。
Customer 360に加え、Salesforceの見つめる未来の一端を示すプロダクトとして発表されたのが「Einstein Voice」です。SalesforceのAI・Einstein(アインシュタイン)が、ついに音声入力に対応。製品デモでは、Salesforceのモバイルアプリ上で簡単なミーティングメモを読み上げ、「Analyze」ボタンをタップするだけで、面談記録やToDo項目、Sales Cloud上の新しい案件を自動で作成できる様子が披露されました。
(Einstein Voiceはこの冬にパイロット版の提供が開始されますが、日本語への対応や日本での提供開始時期は現時点では未定です。)
Dreamforce は、現地時間の9/25から9/28の期間で開催中。期間中は2,700を超える多様なセッションが設定され、エキサイティングな機会が次々に生み出されます。この盛り上がりは、まだまだ続きます!