「Lightning Experienceへの道~NTTデータにおけるLightning適用の180日の軌跡」では、ClassicからLightning Experienceへの移行を検討中のユーザーに向けて、セールスフォース・ドットコムの河村達也と田中文秋が、Lightning Experienceの現状と特徴などを紹介。さらに移行事例としてNTTデータの高橋英之氏にご登壇いただき、Lightning Experienceの導入背景や効果などをご紹介いただきました。

(写真左より、当社河村、NTTデータ高橋氏、当社田中)

Lightning Experience移行への期は熟した

Salesforceでは、ユーザーの生産性向上を目的に、最新のユーザー体験と機能を提供するための新しいインターフェースとして「Lightning Experience」が提供されています。このLightning Experienceは、ユーザーが希望する場合に、旧インターフェースであるClassicから切り替えて利用するようになっており、まだすべてのユーザーが利用しているわけではありません。しかし、発表から2年が経過して、ユーザーの割合は着実に増えています。

Lightning Experienceは、Salesforceに追加される多くの新機能が利用できるというメリットがありますが、移行すると新たに使い方を学ぶ必要もあるため、Classicのままでいるユーザーも少なくありません。

生産性向上のための新インターフェース

そもそも、なぜLightning Experienceが誕生したのか。その経緯について、セールスフォース・ドットコム カスタマーサクセス本部 エンタープライズサクセス部 リージョナルサクセスアーキテクトの河村達也が紹介しました。

結論からいえば、「世の中の変化に合わせてSalesforceも進化しており、その価値をユーザーに届けるため」ということになります。

Salesforceを最初に提供してからこれまで、スマートフォンの普及やソーシャルメディアの広がり、IoTやAIといった新技術の登場など、ユーザーを取り巻く環境は大きく変化しています。個人で利用するサービスやアプリの発展には目覚ましいものがあり、その便利さや使用感の良さは多くのユーザーが実感しているはずです。一方、業務システムは仕事だからという理由で旧態依然とした、味気なく、使い勝手が決して良いとはいえないユーザーインターフェースのものも少なくありません。

「Salesforceでは、業務システムも世の中の流れに合わせた進化が必要であり、それによってユーザーと組織の生産性や競争力も向上すると考えています。そのような背景から生まれたLightning Experienceでは、『1つの画面であらゆる作業が可能』『直観的な操作性』『パーソナライズ』『操作に基づいたデータの自動認識』など、ユーザーの生産性を高める、使い勝手の良い環境を提供しています」(河村)

実際、Lightning Experienceに移行したユーザーからは、生産性が41%向上したというフィードバックがあったといいます。

Salesforce社内での活用事例

Lightning Experience導入による効果は、Salesforce社内でも見られます。セールスフォース・ドットコム カスタマーサクセス本部 エンタープライズサクセス部 リージョナルサクセスアーキテクトの田中文秋は、Lightning Experience導入によってステータス管理とレポートのグラフ作成機能で、多くの恩恵を受けていると紹介しました。

「技術的な支援の依頼を受けて、それに対応するのが私の仕事です。毎日多くの依頼があり、それをSalesforceで管理しています。各案件をKanban機能で管理していますが、タスクをひと目で把握できる画面があったり、各タスクをドラッグ&ドロップで並び替えたりできるようになって、毎日30分かかっていた作業が1分に短縮しました。また、グラフ分析の機能では、サマリーレポートとともにグラフも作成され、1クリックでグラフの切り口を変更できるようになり、大幅に作業時間を短縮できました」(田中)

移行を思いとどまらせる理由や課題も存在

Lightning Experienceを有効にしているユーザーは順調に増加していますが、ClassicとLightning Experienceを併用しているユーザーもまだ多く存在します。移行しない理由を調査したところ、Classicに対して「機能不足」「性能不足」などの印象を持つユーザーがいることが分かりました。

河村は「たしかにLightningがローンチした直後や2016年までは、処理速度や機能実装面でユーザーに期待に応えられないところもありました」と認めます。しかし、Lightning Experienceは適宜アップデートを行い、改善し続けるというクラウドサービスならではの特徴をもっています。

「現在のリリースであるSummer '17は、前のSpring '17から処理速度が倍になっています。10月にリリースされるWinter '18では、さらに10%改善します。また、不足していた機能も実装が進んでいます。2016年のLightning Experienceとは別物と呼べるくらい進歩しています」(河村)

Lightning Experienceの活用や移行に関する情報も、ガイドブックやTrailheadが用意されるなど、充実しつつあります。さらに、「アクセラレータ」という導入支援サービスや移行アシスタントチェックという診断レポートも提供しており、導入のハードルはかなり下がっています。

河村は、「Classicで困っていないし、変更したら学習コストがかかるという声も聞きます。しかし、そもそもLightning Experienceを提供するのは、お客様の競争力向上のためです。いち早く導入することで、その目的を実現できます」として、移行を促しました。

業務改革プロジェクトを後押ししたLightning Experience

Lightning Experienceの導入とその効果をユーザーの立場で紹介したのが、NTTデータ ビジネスソリューション事業本部 デジタルビジネスソリューション事業部 デジタルビジネス推進担当の高橋英之氏です。

(写真中央:NTTデータ高橋氏)

同社は、パートナーとしてSalesforceのライセンス販売や導入・開発のコンサルティングを行うほか、自身もユーザーとしてLightning Experienceを活用しています。高橋氏は、所属する事業部に導入したときの話を紹介しました。

高橋氏が所属する事業部では、以前からSalesforceを導入していたものの、典型的なSFAの利用を超える活用はできていませんでした。その原因は、しっかりとPDCAを回せていないことだと反省し、業務改革プロジェクトの一環としてLightning Experienceを導入することにしました。

目標として掲げたのは、同じリソースで倍の売り上げを達成するという非常に高いもの。簡単に達成できる数字ではありませんが、お客様と社内の両方に対して価値を創出するために、次の3つを改革の具体的なゴールとして定めました。

  1. さまざまなプロジェクトで得られた知見や成功体験をソリューション化して拡大
  2. 社内の営業プロセスを合理化してリアルタイムのタスク管理を実現
  3. その成功体験を自分だけにとどめずに組織としてナレッジ化して顧客に還元

改革によって、週次だったマネジメントがリアルタイムに変わり、情報の精度も向上。数字をリアルタイムに把握できるようになったことで、営業会議ではマーケティング戦略や商談対応のリソース調整など、より重要で本質的な議論ができるようになったといいます。

「改革が成功した要因の1つは、Lightning Experienceを使うことで目標を達成できるはずだと社員が思えたことでした。Lightning Experienceを使うと自分の生産性を高めることができると実感できたことで、改革に対するマインドセットも変わり、働き方や実績にも変化が現れました」(高橋氏)

アクセラレータが社員の意識を変えた

この変革で重要だったものとして、高橋氏はLightning Experienceの移行支援サービスであるアクセラレータを利用したことを挙げました。

「Lightning Experience導入をきっかけに、アクセラレータTrailheadでの学習をとおして、社員一人ひとりに、Salesforceとは数字を管理するだけではなく、生産性を高めるツールなのだという意識が根付きました。この意識変化によって、イノベーティブな組織としても変わることができました」(高橋氏)

高橋氏は、Lightning Experienceのメリットを説く一方で、「未完成で発展途上」であることも認めます。しかし、だからこそビジネスチャンスになると発想すべきだと語ります。

「自分たちが、新しいテクノロジーを体験・評価し、そのノウハウを蓄積することで、新しいビジネスとしてお客様に還元していけます。NTTデータが、デジタルトランスフォーメーションの実験台として、実効性を評価しているわけです」という高橋氏の言葉は、パートナーでありユーザーでもあるNTTデータならではの視点だといえます。

今後は、Lightning Experienceをさらなる社内活用と顧客への価値創出に活用していきたいとしつつ、会場来場者に向けて「私たちはパートナーとしてお手伝いすることもできますが、ユーザーの1人として体験を共有することもできます。ビジネスゴールを目指すユーザー同士として、成功体験を共有することが何よりも大切です」というメッセージを送りました。