2017年9月26~27日の2日間、ザ・プリンスタワー東京と東京プリンスホテルで開催された「Salesforce World Tour Tokyo 2017」。メイン会場には初日から2,000名を超える参加者が詰めかけ、大きな盛り上がりを見せました。100を超えるビジネスセッションと、パートナーによる80以上のブース展示が行われた今回のワールドツアー。まずは基調講演の概要をレポートします。
冒頭で約3分間のオープニングビデオが上映され、米国セールスフォース・ドットコム Vice Chairman, President and COOのキース・ブロックが会場中央に登場。会場を走り回りながら日本語で挨拶した後、セールスフォース・ドットコムのビジネス状況について語り始めます。
「私がこの会社に入ったのは4年半前ですが、当時は40億ドルの売上でした」とキース。それが2017年度には84億ドルに達しており、近い将来には最も速いスピードで100億ドルを達成する企業になる見込みだといいます。CRMはエンタープライズソフトウェア分野で最も大きな成長を見せている領域であり、セールスフォース・ドットコムはここで右肩上がりのシェアを継続的に実現。またサービスプラットフォームやマーケティングプラットフォームの領域でも、同様の成長を見せていることをグラフで示します。
なぜこのような成功を収めることができたのでしょうか。それは「お客様やパートナー様、そして従業員が、コアバリューを共有しているからです」とキースは語ります。そしてこのコアバリューには、信頼、成長、イノベーション、文化という、4つの要素があるのだと説明します。
「私たちは全員がOhana(オハナ、ハワイ語で家族を表す)、つまり家族であり、全員が平等です。私たちはいま平等の時代に生きており、すべての人々の平等こそが、繁栄につながるのだと考えています。真の平等を実現するため、セールスフォース・ドットコムは年間3500万ドルを教育に投資しており、全員がチャンスに恵まれるようにしています。また子どもたちが安全で幸せな環境で生きていけるよう、完全にカーボンニュートラルなクラウドを実現するなど、社会貢献活動にも積極的にコミットしています。これがセールスフォース・ドットコムの文化なのです」。
ここで、セールスフォース・ドットコム 代表取締役会長 兼 社長の小出 伸一が登場し、国内におけるセールスフォースの成長について説明。Salesforce認定資格保持者が9,300人以上、パートナーが370社以上、投資対象企業も32社以上に上っており、日本に根づいた企業になっていると語ります。さらに、社会の仕組みづくりにも貢献していることにも言及し、その一例として「マイナポータル」のお手伝いをしていることを紹介(関連プレスリリースはこちら)。内閣官房 内閣審議官の向井 治紀氏を会場中央にお迎えします。
「マイナポータルとは官と民の情報の交差点であり、このたび『ぴったりサービス』の提供を開始しました」と向井氏。これは地方自治体のサービスを横断的に検索し、電子申請等を手軽に行えるようにするものであり、モバイルデバイスで使える国民に寄り添ったサービスだと語ります。これを実現するためにSalesforceが活用されているのです。「これまで役所や国民から遠い存在でしたが、これからはできるだけ様々なデバイスから利用できる、身近な行政を実現したいと考えています。使い勝手のいいサービスを支えるプラットフォームの提供を、セールスフォース・ドットコムに期待しています」。
次にキースは第4次産業革命について言及。60億ものモバイルデバイスがつながり、さらにIoTやAIの活用が広がることで、破壊的な「パーフェクトストーム」が起きていると語ります。そしてその中で、Amazonは小売業を再定義し、Uberは新たなビジネスモデルで500億ドルの時価総額を達成したのだと述べます。
「いま様々な業界で破壊が進み、新たな企業が毎日のように生まれています。それは何故でしょうか。すべてがカスタマー中心になったからです。カスタマーの時代に素晴らしい技術を活用することで、革命が起きているのです」。
ではエンタープライズソフトウェアでは、具体的にどのような変化が見られるのでしょうか。セールスフォース・ドットコム セールスイネーブルメントシニアマネージャーの前川 友美は「5つの変革が起きています」と説明。それは、インテリジェンス、スピード、生産性、モバイル化、つながりだと言います。
続いて、セールスフォース・ドットコム マーケティング本部 ディレクターの田崎 純一郎がサッカーユニフォームを身にまとい登壇し、これらの変革を積極的に活用している企業の例として、スポーツ用品メーカーのミズノ株式会社のケースを紹介(関連プレスリリースはこちら)。デモを交えながら、Einsteinによる世界中の人々のコメントの分析や、顧客一人ひとりに合わせたレコメンデーション、事前に設計したカスタマージャーニーにもとづく顧客へのメッセージ送信、顧客とのやり取りの一元的な管理、コミュニティサイト「CLUB MIZUNO」等を披露していきます。
さらにミズノ株式会社 代表取締役社長の水野 明人氏が登場、この取り組みのビジョンについて語ります。
「当社は112年間スポーツ用品を作り続け、皆さまのパフォーマンスを上げる努力をしてきました。しかしパフォーマンスを上げるための機能は同じでも、文化的な価値観は国によって異なります。この情報を取り込んで開発を行う必要がありますが、これは非常に大変な作業です。ここでデジタルが有効であることに気づき、Salesforceを活用することにしました。Salesforceなら双方向での情報交換を容易に実現でき、集めた情報をAIで分析できます。そして私たちの商品の価値を、世界の隅々にまでお伝えすることが可能になるのです」。
Salesforceで変革を起こしているのはミズノだけではありません。今回の基調講演ではもう1つの事例として、株式会社アマダホールディングスのケースも紹介(関連リリースはこちら)。セールスフォース・ドットコム マーケティング本部 マネージャーの秋津 望歩が登壇し、ここでもデモを交えながら、その概要を説明します。
アマダホールディングスは70年の歴史を持つ板金加工機のメーカーであり、同社の機械は金属部品の加工に数多く利用されています。顧客企業は全世界で約11万社に上り、約30万台が毎日稼働。市場シェアは20%を超えており、売上はこの10年間で約10倍になっています。
ここではSales CloudやPardot、Service Cloudが活用されており、見込み客の獲得からナーチャリング、Einsteinによるスコアリング、商談化、導入後のフォローまでが行われています。そしてSalesforce Platformを活用した「V-factory」によって、IoTによる工場のスマート化も推進。リモートからの稼働状況監視によって、顧客の工場を止めないサービスを提供しています。さらに、Einsteinによるレーザー切断面の画像診断も実現しているのです。
ここで株式会社アマダホールディングス 代表取締役社長の磯辺 任氏が登場、「ものづくりはインダストリー4.0によって大きな変革を遂げつつあります」と語ります。IoT化やAI化が急速な勢いで進んでおり、そのような状況の中、アマダホールディングスはITを活用したサービスの効率化に積極的に取り組んでいるといいます。ここで重要な役割を果たしているのがSalesforceなのです。「これからは複数の機械をつないで生産性を高める取り組みや、お客様からいただいた情報をAIで分析して価値ある情報としてお戻しする、といった取り組みも推進していきます。ここでもSalesforceが大きな貢献を果すと期待しています」。
なお今回の基調講演に先立ち、Salesforceを先進的に活用いただいているTrailblazer(先駆者)の皆様(特定非営利活動法人 放課後NPO アフタースクール事務局長 島村友紀氏、エリアマネージャー 有坂絢子氏、スパークジャパン株式会社 ソリューション本部 副部長 一ノ瀬公四朗氏、東京海上日動火災保険株式会社 小林香織氏、株式会社フレクトクラウドインテグレーション事業部 テクニカルスペシャリスト中山 純子 氏)による、活用事例紹介もあわせて行われました。
このように今回の基調講演は数多くの人々が登壇し、Salesforceによって新たな道を切り拓いている複数の事例が、具体的な形で紹介されました。最後にキースは「これからも皆さまと一緒に、カスタマー中心時代のジャーニーを歩んでいきたいと考えています」と述べ、セッションを締めくくりました。