本連載では、企業のデジタルトランスフォーメーションを支え、革新に挑戦する「Trailblazer(トレイルブレイザー:先駆者)」をご紹介しています。第5回目となる今回は、株式会社ユー・エス・イーのクラウドサービス戦略本部で営業を担当される、新美 啓子氏にお話しを伺いました。1970年以来、SIerとして長年の実績を持つ同社は、Salesforceが日本に参入した2年後には自社へ導入し、2005年に販売代理店契約を締結。2016年には地方創生の一環として、福岡県久留米市に「USE・salesforce開発センター」を開設し、九州の地域企業を巻き込んだパートナーエコシステムを構築。Salesforce主催の「Partner Award 2016」でもその新たなビジネスモデルが高く評価され、特別賞を受賞しています。
入社から6年目でプログラマーから企画営業に転身したという新美氏は、Salesforceが提供する無料オンライン学習ツールTrailhead を活用した新人教育の実践をはじめ、Salesforceユーザー向けの分科会の一つである『W power group』の運営や、プロボノ支援などTrailblazerとして活躍。この秋からは、これまで予想もしなかったキャリアステージで新たな挑戦に踏み切ります。その転身のきっかけはSalesforceの「Trailhead」と「ユーザー会」にありました。
株式会社ユー・エス・イー クラウドサービス戦略本部 営業担当 新美 啓子氏
大学時代は機械工学を専攻し、同社にはプログラマーとして入社した新美氏でしたが、5年間経験を積んだ後、より上流工程からユーザーの課題解決を目指したいと飛び込んだのが企画営業のポジションでした。そこで同社の営業支援システムとして利用されていたSalesforceに出会います。当時の感想を新美氏は次のように振り返ります。
「もともとプログラムを組む立場でしたので、プログラムなしにこれだけのことができることに素直に驚いたことを覚えています。お客様にSalesforceソリューションをご提案していく中で、一般的なSFA程度の仕組みであれば2か月程度で導入できる、そのスピード感にも驚きました」
さらにTrailheadが登場すると、新美氏は自身の業務にも積極的に取り入れていくことに。新機能のリリース試験の前には必ずTrailheadをチェックし、無駄な手戻りを回避。そのほか、技術者向けの新人研修でもTrailheadを活用していると言います。
「今年、新人研修の講師を担当したのですが、私自身も実業務をしながらですので、時間に限りがあります。そこで、例えば午前中には私の方で講習を行い、午後はその理解度チェックとして関連するTrailheadモジュールを実践してもらいました。講習では操作手順をうっすらと覚えられるのが限界ですが、Trailheadでは実環境を試すこともできます。それぞれのコース終了後にバッジを獲得できるため、新入社員たちの自信にもつながったようです」
中には研修2週間のうちにバッジを50個獲得した兵(つわもの)も。当時のバッジ獲得数は70個だった新美氏もこれに触発され、今年6月にはバッジ100個を達成しました。
「通勤時間もフル活用し、電車ではモバイルで選択式のモジュールを行っていました。一方、実環境を利用してのハンズオン形式のモジュールは、比較的時間がかかるため、PCで行うようにしていました。選択式かハンズオン形式なのかは、実際にモジュールを開いてみる必要があるため、まずはPCで確認し、選択式のモジュールには「お気に入り」マークを付けておきました。こうすればモバイルで開くと上部に表示されるので後は実践するだけ。この工夫のおかげで、より効率的に進めることができました。
新人のバッジ獲得数に負けられないという思いもありましたが、それ以上にTrailheadはさまざまな観点から学ぶことのできる非常に優れたツールだと思います。実は私もまだ英語版しかない頃は、それを言い訳になかなか手を付けられずにいました。しかし、1つでもモジュールを実践してみるとそれほどハードルが高くないと感じました。どこから手をつければよいか迷うよりも、まずはチャレンジしてみることです」
新美氏がTrailblazerと呼ばれるのは、Trailheadの活用だけが理由ではありません。例えば、2015年にはプロボノ支援にも積極的に参加をしています。
「ユーザー会に参加している時に、Salesforceの担当者からプロボノ支援者を探していることを伺ってすぐに志願しました。途上国支援を行うNPO団体さんのサポートで、私はNPOと実際の構築ベンダーの間に入り、効率的なSalesforceとの連携の仕組みを一緒に考えました。このプロボノ支援について、ユーザーグループでも紹介する機会があり、SNS等でも紹介頂いたことで、海外のSalesforceコミュニティからコメントをもらうことも。私自身の視野を広げてくれるきっかけともなりました」
Salesforceを熟知する新美氏がNPOの担当者の希望に寄り添い、要件を的確にベンダーに伝えたことは大きな支援となりました。このほかにも新美氏は、salesforceユーザーによる分科会の一つである「W power group」のリーダーとしても活躍しています。
「『W power group』は、2013年にSalesforceユーザー会の女性メンバーが中心となり、“女性も働きやすい社会”にしていくための情報提供、情報交換の場として立ち上げたグループです。ユー・エス・イーではそもそも女性が9%しかいないため、キャリアを積みながら子育ても両立できるロールモデルが形成されていませんでしたが、誘われて参加した発足会では、ワーキングマザーの方々が、生き生きとご自身の経験談を話されていたのです。
グループを運営する上でのリーダー選出の話しになった時、周りは『母』に『ワーカー』に忙しい方ばかり。当時まだ20代で最年少だった私が手を挙げてしまいました。この会をこの場だけで終わらせたくない、という思いが強かったからです」
(取材日当日、素敵な着物姿で来社して下さった新美氏)
発足当時は女性の活躍に焦点を充てた『W power group』でしたが、現在では広く「働き方改革」をテーマに、名前の「W」にも3つの意味を込めていると言います。1つは“Woman”で女性の力を活かす。2つ目が“Win-Win”の関係で女性が働きやすくなることでの男性のメリット。3つ目が“WorkStyle”で働き方改革。Salesforceを活用してどのように働き方改革を実現させるか、また先駆的取り組みを行うキーマンの講演会を実施し、それぞれ自社に持参し取り組みを広めています。
実はこうしたうユーザー会の活動においても「Trailheadで学んだことが多かった」と新美氏は語ります。
「私が好きなバッジの中には『平等であることのビジネス価値』や『組織内の意思統一 (V2MOM)』があります。これらのモジュールを通して、Salesforceの社内平等を促進するための戦略や、意思統一の図り方といった思想の部分を学ぶことができました。なぜ女性の活躍や働き方改革が進まないのかを考えたとき、明らかな原因の一つに、トップと社員のゴールが共有できていないことが挙げられます。V2MOMの指針はシンプルでとても分かりやすい考え方でした。技術ばかりでなく、マネージメント視点の思考を学べる点もTrailheadの優れた側面だと感じています」
精力的に活動をする新美氏ですが、この秋から更にこれまでとは全く異なるキャリアステージでの挑戦がはじまります。自ら人事採用部門への異動を希望したそうです。
「現在当社でも女性活躍推進のワーキンググループがあるのですが、発足した際に『W power group』をやっているならと白羽の矢が立ちメンバーとなりました。当社では採用管理にもSalesforceを利用していますので、新たにダッシュボードをつくって採用時点での男女比の状況を把握できるように。そもそも女性の応募が少ないことが分かったため、女子大で相談会を行うなど具体的な取り組みを行いました。Salesforceを使ってもっと色々なことができるはず。アイデアが沸いてきて、結局異動を希望したのです」
女性の活躍促進や労働人口減少の課題に直結する人事採用は、企業の成長戦略としてこれからますます重要になっていきます。せっかくSalesforceがあるのだから、データドリブンな人事採用を実現してゆきたいという新美氏は、「次に目指すのは、採用としてのTrailblazer」と言い切ります。
「Trailblazerは、単に技術的な先駆者ではないと思うのです。先ほどの“平等であることのビジネス価値”などの単元がTrailheadにあるように、技術と共に思想があり、幅広い人間性を持つ、そんなTrailblazerが求められているのではないでしょうか。次のステージでも目指していきたいと思います」すでに多くの活躍をされている新美氏ですが、さらなる挑戦がはじまります。
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