SalesforceといえばCRMソリューションとして非常に高いパフォーマンスを提供していますが、実はプラットフォーム領域にも大きなアドバンテージを持っています。本講演では、アジャイルを実現するSalesforceのプラットフォームとしての優位性を取り上げ、「開発生産性」「セキュリティ」「エコシステム」の3つの視点からその強みを紹介しました。

Salesforceは実はアジャイルにも強い

「Salesforceのミッションは、“カスタマーサクセス”の言葉に集約される」と語るのは株式会社セールスフォース・ドットコム プロダクトマーケティング シニアマネージャー 伊藤哲志です。

続けて伊藤が語ったのは、テクノロジーに対するユーザー部門への期待の高まりについてでした。「たとえば、アクションにつながるアナリティクス、予測可能なマーケティングにユニファイドコマースなどなど。こうしたデジタルエクスペリエンスの構築がユーザー部門から常に求められているものの、実際にはIT部門はテクノロジーに対するこうした要望に対応しきれていない」と続けます。ある調査では、新しいアプリに対する需要の1/5しかIT部門が対応していないといった結果も出ているそうです。

ではIT部門が期待を上回るためにはどうしたらよいのでしょうか。伊藤は「実はSalesforceは優れたCRMとしてだけでなく、アジャイル実現にも優れたプラットフォーム」と主張をします。

App Cloud Einsteinが提供する、高い開発生産性

まず、伊藤が具体的なソリューションとして挙げたのは、SalesforceのPaaS「App Cloud」です。

「App Cloudはコードを書く作業を最小限にし、ノーコード、ローコードの開発を可能にします。そのため、開発スピードは5倍、コーディング量を1/2に削減し、開発生産性を高めることができます。最小限のコーディングで実用的なアプリケーションが作成可能で、IT部門では当然アジャイル対応が実現する」と伊藤は説明します。

ちなみに、「App Cloud」はブランド名であり、製品として提供されているのは「Force.com」と「Heroku」となります。Force.comは、Sales CloudなどのSalesforceソリューションのサービス機能部分を除いた純粋なプラットフォームとして提供されるもの。一方Herokuは「Amazon Web Service(以下AWS)」上で稼働し、Salesforceが管理をするプラットフォームです。IaaSであるAWSの開発環境構築の準備や日々のメンテナンス業務をSalesforceが対応することで、プラットフォーム上ですぐにプログラミングを始めることができます。

また伊藤は、Salesforceアプリの継続的デリバリーを実現する「Salesforce DX」が、サンフランシスコで開催されたイベント『TrailheaDX』で発表されたことにも触れました。 「コード、メタデータ、組織設定のバージョン管理などを可能にすることで、複数人での開発メリットが出せるなどコラボレーションを実現します」。

さらに伊藤は、開発者のスマートなアプリ開発を支援するAIプラットフォーム「Einstein Platform Services」として3つのソリューションが登場することを説明。Einstein Language、Einstein Vision、Einstein Analyticsの3つを紹介しました。

Einstein Languageは言葉や文字からポジティブ/ネガティブどちらのコメントなのかなどの分析をするAIです。Einstein Visionは画像認識のAIテクノロジーで、今回発表された新世代のObject Detectionでは、複数の画像を一度に認識して判断することができます。たとえば小売店で冷蔵庫のドリンク製品と空き数を認識して、バックヤードから出庫するといった判断ができるようになります。Einstein Analyticsではアナリティクス機能にも自動化やインサイト提案などAIテクノロジーを搭載します。

伊藤は「既にEinstein Visionなどは1000 APIまでは無料でお試し頂けます。分かりやすいドキュメントも公開(詳しくはこちら)されていますので、コードが書ける方であればぜひお試し下さい。

もちろんお客様からの膨大なデータを預かるSalesforceは、セキュリティを担保するのはもちろんのこと、たえず拡張性やパフォーマンスも進化させているとしました。

Force.comとHerokuを使用したHeroku Connectのデモ

ここで、Force.comとHerokuの活用したデモを株式会社セールスフォース・ドットコム プラットフォームスペシャリストの阿部崇が檀上で実施しました。

「不動産を扱うDreamhouseという会社が物件情報を管理するためにForce.com上で管理をしている」想定です。画面はLightning Experienceという最新のインターフェイスを活用して作られています。Heroku Connectという技術を使い、Force.com上にある社内データをHeroku上のwebサービスに連携。物件名や査定価格などの社内データをそのまま外部サイトに反映することができます。値段を変える場合でも、webサイトの担当者に更新を依頼する必要がありません。データを変更すれば同時に外部サイトも変更されます。物件情報はSalesforceのプロパティというオブジェクトで管理されていて、どの項目をHerokuと同期させるか、チェックボックスをつけておくだけで設定できます。

また、Salesforceでは標準コンポーネントとお客様自身が作るカスタムのコンポーネント、パートナーが提供するコンポーネントを組み合わせて画面を作ることができます。たとえば、画面でそのまま住宅ローンの計算が見られるようにしたいという要望があれば、Lightningアプリケーションビルダーという機能を活用し、その要望に即座に対応できます。

阿部は「Salesforceの開発環境では、ノンコーディング、ローコーディングだけというわけでもありません。開発者にとってはコードを書いた方が早いこともあります。ただし、書いたコードをコンポーネントにすることで、作業効率を格段に引き上げることが可能になります」と訴えました。

このほかデモでは、Facebookのbotサービスとの連携やEinstein Visionとの組み合わせにより顧客の好みの部屋の写真から適切な物件情報を提示する仕組みの構築などSalesforceプラットフォームの利便性を実演してみせました。

Trailheadはじめ、開発者やユーザーを支えるコミュニティとツール

最後に伊藤は、優れたエコシステムを誇るSalesforce Platformの強みにも言及。300万人以上の登録開発者を誇る「開発者コミュニティ」を紹介すると同時に、最新機能なども学ぶことができるTrailheadの活用をアナウンス。

「Salesforceはプラットフォームとして“開発生産性” “高いセキュリティ” “開発を支えるコミュニティ” を強みに、今後もユーザーサクセスのための開発環境支援を実現していく」としました。

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