「実画面でご紹介!Trailblazer企業2社のSalesforce業務」の講演では、2名のTrailblazerをお招きし、Salesforceをどのように業務に役立て、成果に結びつけているかを、実際の画面でのデモンストレーションを交えながら紹介しました。

パラマウントベッド、鬼の3か条

まず登壇されたのが、パラマウントベッド株式会社 システム統括部 企画開発課の中森雅之氏です。同社はご存じの通り、医療、介護用ベッドの製造・販売のトップランナーとして医療機関や介護事業者向けの電動ベッドを中心に扱っています。同社では2014年9月からSalesforceを導入し、グループ3社の営業部門で823ライセンスを活用し、顧客情報、案件情報、活動管理と、グループ間の情報共有などに活用しています。Salesforceの活用状況を示す「活用スコア」は4点満点のうちの3.1点。日本の平均値1.8点を大幅に超える高得点です。

写真:パラマウントベッド株式会社 中森氏

「高い活用スコアの背景には”鬼の3か条”と呼ばれる運用ルールがあります」と説明する中森氏は、営業担当者へ課せられた鉄則として3つを挙げました。それは「顧客情報」「案件情報」「活動情報」の徹底入力でした。

続いて会場では実際に、同社の「案件入力」を例にしたデモが行われました。同社の営業担当者は商談活動を行った際に、必ずSalesforceで案件を登録します。この時、納入先と受注先の情報の他に、案件確度を入力しなければ製品の製造が進められないルールになっています。受注、売上計上フェーズではSalesforce上の案件データが基幹システムにそのまま転送される仕組みになっています。

「案件登録の際には納入先、受注先を登録し、案件がどのような商談区分に該当するかを設定します。案件については納入日、売上予定日、進捗項目を更新。案件は受注する3か月以上前から準備に入ることが大半なので、“毎月3営業日目に行う製造販売数量集計で確度が低以上の案件に登録されている製品を製造開始する”という社内ルールを儲けています」

確度「低」のものを製造すると製造したものが失注し、在庫になってしまうリスクがありそうに思えますが、Salesforceを活用して営業がマネージャーと密に情報を共有しレビューすることで確度を常に更新。さらに、失注した場合にもSalesforce上で同じ品目の商談がないか検索し、横の情報共有を活用して在庫リスクを回避していると言います。

また、ヒューマンエラーを防ぐための工夫もあります。「案件登録の際に品目コードを入力して検索しますが、品目マスターは毎日更新されており、在庫確認が必要な品目を登録しようとするとメッセージが表示され、営業担当者に注意喚起をするシステムになっています」ほかにも、入力規則機能を用いて違反誤りを防いでいると中森氏は同社ならではの工夫も紹介しました。

写真:当日の司会進行を務めた、カスタマーサクセス部の坂内

高度な分析ができるEinstein Analyticsを導入

続いて中森氏が紹介したのは、営業分析のダッシュボードです。同社のダッシュボードでは、「全社向け」「支店長向け」「課・グループ向け」「個人向け」という階層別ダッシュボードをユーザーに公開し、必要な情報にアクセスできるようにしています。このうち、全社向けダッシュボードの画面を表示しながら、予算の達成状況や活動件数、見込み案件の管理などについて説明しました。

さらに、同社ではEinstein Analyticsも導入しています。その理由を中森氏は「トップセールスマンの活動を分析したかったから」と説明します。3か月間の売上見込みを示すダッシュボードを制作し、見込みの総額と内訳、製品と仕入れ金額の集計や、顧客カテゴリ別の売上見込み金額などもグラフ化しています。このグラフ上では大型案件が突出して目立つため、全体へのインパクトが大きいものがきちんと注目できるようになっているのが特徴。また、ヒートマップを使用して「直近3か月でどのような品物がどのような区分のお客様に商談上でピックアップされているか表示する」「営業担当者の活動数を日本地図上で色分け表示して、訪問できてないエリアを可視化する」などEinsteinが営業活動に役立っている様子を紹介しました。

freeeではブラウザフォンと連携

続いて登壇したTrailblazerは、freee株式会社 エンジニア GYOMU ハック 廣野 美里氏です。スモールビジネスのためのバックオフィス最適化をサポートするfreeeでは、クラウド会計ソフトをはじめ、起業支援や社員の管理に関するプロダクトを提供しています。

同社は2014年9月よりSalesforceを導入し、176ライセンスを利用。こちらでも活用スコアは4点満点のうちの3.6点という高いスコアを誇っています。廣野氏はまず、インサイドセールスに関連したデモを中心に説明を行いました。

写真:freee株式会社 廣野氏

「当社のインサイドセールスはまずはアポを取るNurturing Sales Team(以下NST)と商談を進めて受注にまでつなげるClose Sales Team(以下CST)の2つに分かれています」という廣野氏。

同社のサービスにサインアップしたアカウントが見込み客となり、そのアカウント情報はSalesforceの「取引先」「取引先責任者」に登録されます。同社では、取引先責任者の電話番号をクリックするとTwilioというブラウザフォンが立ち上がるように設定されています。Twilioを通じて通話した内容は「商談」としてSalesforceに記録していきます。「お客様に電話した回数を『NSTフォローアップカウント』として集計し、同じお客様に何度も重複して電話することがないよう、カウントの少ないお客様に対して電話をかけることにしています」と廣野氏は同社の運用を紹介したのです。

また、通話の内容はTwilioに録音されており、Salesforce上の取引先責任者の画面からTwilioの画面に移動して録音を聞いたり、音声ファイルをダウンロードしたりすることができます。模範的な通話の録音を社内教育担当者が保存し、新人の訓練に活用するといったナレッジ共有としても活用していると言います。

「NST、CST共通のダッシュボードではさまざまな件数を表示させており、『めざせギネス』と題して、過去最高の数値を目標に設定しています。1日につながった件数、電話をして商談チームに引き継いだ数などが対象です。受注数をカウントするだけでなく、受注前の活動の段階から件数をカウントし、マネージャーや現場が活用できていること」を評価しました。

面倒な入力をなぜセールスチームは行うのか?

廣野氏は、面倒な情報入力をなぜセールスチームがきちんと実行できているか不思議に思い、セールスマネージャーに尋ねたことがあるといいます。その際、彼は「freeeのインサイドセールスは世界最先端のセールスである。データを活用するにはデータが必要、というマインドがきちんと根付いている」と答え、その言葉に廣野氏は感動したと明かしました。

また廣野氏は、システム管理者としてスキルを身につけるため、社内の詳しい人物に質問することはもちろん、Salesforceのブログを確認したり、オンライン学習ツールであるTrailheadを活用して学習を行ったといいます。「Trailheadは、非常に有効な学習方法ではないでしょうか。システム管理者業務、開発も行う立場としてシステム管理者初級、CRM基礎、開発者初級のモジュールなどを実践して役立ててきました。これからも活用していきたい」として講演を締めくくりました。

すでにSalesforceユーザー・開発者、つまり”Trailblazer”(先駆者)による多くのSalesforce Communityが存在しています。地域、業務、製品によって分けられたユーザー・開発者グループもあり、同じ立場で悩みを共有しています。最後に本セッションでは、いくつかSalesforce Communityの活動を紹介。Salesforce女子部メンバーが登壇し参加者を募りました。

▼Salesforce Trailhead Live Tokyo講演レポート 連載一覧

Vol.1 Blaze Your Trail

Vol.2 エンタープライズソフトウェアの5つの変革

Vol.3 リード獲得から収益まで。営業の新しいカタチ

Vol.4 ビジネスにおけるAI