Salesforce主催でEXECUTIVE FORUM「保険業界における働き方改革〜顧客接点強化と働き方改革を同時に実現〜」を2017年5月に開催いたしました。
ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス 取締役人事総務本部長の島田由香氏が登壇した特別講演の様子はこちら。
今回は、チューリッヒ生命からCOO(チーフ・オペレーションズ・オフィサー)の十文字勝広氏、情報システム本部 開発部長の金子稔功氏、契約サービス部長の森田圭氏にご登壇いただいた、パネルディスカッションの模様をお届けします。
(写真:写真右から2番目より、十文字氏、金子氏、森田氏)
チューリッヒ生命は、ここ数年、「ガン保険、医療保険など新商品のマーケットへの投入」「お客様が保険加入にあたり選択権を生かせるよう代理店チャネル、銀行窓販、インターネットなど複数の販売チャネル展開」などが功を奏し、新契約件数の拡大に繋がりました。またコールセンターへの入電件数の増加に加え、住所・名義変更等の保全業務も増加しました。
その状況を踏まえ、チューリッヒ生命COOの十文字氏は「2015年末を境に特に新契約業務領域での業務量が劇的に増加したため、当社は社員の働き方を新たにどうデザインしていくべきという課題に直面しました。この改革は、社員のエンゲージメントを高めつつ行わなければなりません。そのためには、業務の基盤となるシステムや内部プロセスの見直しがカギでした。」と当時の状況を振り返りました。
(写真:チューリッヒ生命 COO 十文字勝広氏)
この課題に取り組むべく、同社は、
以上3点を挙げ、『内部プロセスの紙からイメージへの変更』に関しては、新規領域では2015年9月に、保全領域では2016年末から今年3月にかけて、Salesforceをベースにした『イメージ・ワークフロー』を導入したことをご説明いただきました。
新規領域については、Salesforceを導入してから、重要なKPIである『契約成立までの日数』が、導入前に比べておよそ70%短縮したそうです。また導入により生産性も高まり、社員の総労働時間も劇的に減少したと言います。
また「社員自身による業務改善活動」と「社員表彰制度の導入」については、業務の無駄・ムラの排除、無意味なプロセスの見直し、社員を積極的に評価・リスペクトする企業文化などが、働き方改革にとって重要であることを強調。「テクノロジーを活用する一方で、同時に社員の存在感、自己肯定感を高めることも重要。今後もハード、ソフト両面の施策を織り交ぜながら、実りある働き方改革を進めていきたい」と十文字氏は語りました。
次に同社開発部長の金子稔功氏から、テクノロジー活用面の施策である「処理の自動化を目指した『イメージ・ワークフロー』の導入」と「カスタマーセントリックな新CRMシステムの構築」についてご説明いただきました。
(写真:情報システム本部 開発部長 金子稔功氏)
「『イメージ・ワークフロー』の導入」については、
などを紹介。
金子氏は「『イメージ・ワークフロー』の機能により、大幅な生産性向上と事務事故の軽減につながりました。新CRMシステムによって、申込検討から支払請求までといった保険の入口から出口までの顧客情報を一元管理し、ユーザー部門の社員が同一プラットフォーム上で参照できるようになりました。また、今までなら捨てていた様々な情報・データをSalesforce上に蓄積することで後分析することが可能となりました」と述べています。
また同社契約サービス部長の森田圭氏からは、同部における3つの目標「ローコスト化」「正確性の向上」「処理時間の短縮化」に対する、Salesforceを使ったリーン手法による業務改善効果についてお話しいただきました。
(写真:契約サービス部長 森田圭氏)
森田氏は「ローコスト化に関しては、労働時間の2割削減を達成。正確性の向上では誤処理の発生率が8割低下に。処理時間の短縮化については、時間当たりの処理件数が1.7倍に向上しました」と、その成果に言及しました。
同社契約サービス部では、顧客が提出した申込書類をチェックして引き受けの可否の判断を行います。最初に提出された申込書類の約5割には不備などがあり、問い合わせなどの顧客対応が必要になります。しかしそのうち約7割は簡単な対応で済み、専門的な知識が必要なケースは全体の1割弱だと言います。
「紙ベースの処理では、実際にやってみないと簡単なケースなのか専門的な知識が必要なケースなのかが分からず、ハイスキル査定者が簡単なケースを担当したり、経験の浅い査定者が難しいケースを担当したりといった、非効率が発生していました。イメージ・ワークフローの導入によって、BRMS(Business Rule Management System=ビジネスルール管理システム)による、難易度ごとの自動振り分けが可能となり、査定者がスキルに応じた案件を選択することが出来るようになったことで、業務効率が向上しました。また、ハイスキル査定者が簡単なケースを担当する事案を1割弱にまで減少させたことで、空いた時間をクオリティチェックや同僚の育成にあてることができ、業務品質も向上しました。また業務の“直列処理”から解放され、『Aさんが書類を処理し終わるまで、Bさんはその書類への対応ができない』というタイムラグも解消しました」と森田氏は述べています。
加えて金子氏がITシステムの開発現場での取り組みを紹介しました。「ムダをなくすためには、課題管理やインシデント管理、チェンジリクエストなど『管理の仕方』が重要。そのためにSalesforceの案件管理機能を活用して、Chatterをうまく使いコミュニケーションの改善を図りました。Excelは、ステータスをアップしていく度に列が長くなっていき、古い情報が見辛いという欠点が。Chatterを使えば、履歴を追いながら管理ができます。必要な課題解決をやっていない人にはメールを飛ばすなど、メンション機能もうまく活用しました」と語っています。
金子氏はさらに、Salesforceの進化が早いため、それについてこられる協力会社が限られる現状にも言及。「首都圏だけでなく、ニアショアの活用も積極的に行っています。遠くない将来に、オフショアでの開発も検討することになるかもしれないが、そういったロケーション・フリーの開発ができることも、Salesforceのクラウド・プラットフォームの利点」と述べています。
最後にSalesforceへの要望が述べられました。十文字氏は「チューリッヒ生命にとってSalesforceはなくてはならない存在なので、システムのさらなる安定稼働、堅牢性を期待している」と発言。森田氏は「新契約の申し込みを査定するとき、告知書や健康診断書などの資料で成否を決定しますが、その資料情報と査定結果の関連性を人工知能『Einstein』で分析できるようにしてほしい」とコメントし、セッションを締めくくりました。
Vol.3につづく。「働き方改革最前線」、本連載の最後は、Salesforce流働き方改革をご紹介いたします。