「Salesforce Trailhead Live Tokyo」の講演をレポートでお届けしている本連載。(基調講演の前半はこちら。後半はこちら)今回お届けする講演レポートでは、「営業活動」に焦点を当て、Salesforceソリューションがどのように営業のカタチを変えていくのか、リード獲得から収益までさまざまなシーンで役立つSalesforce注目のソリューションや新機能を紹介。また、講演中盤には、Sales Cloudをはじめ、PardotやSalesforce CPQなどを導入する株式会社エルテス 代表取締役の菅原貴弘氏が登壇し、同社の営業活動に不可欠となったSalesforceの活用事例を紹介しました。
登壇したセールスフォース・ドットコムの田崎純一郎は、現在Salesforceが世界で15万社以上の導入実績を強調。その背景には常にSalesforceがユーザー企業の声を製品に反映してきたことを挙げ「まさにお客様とともに成長してきた企業」であると、感謝の言葉を述べました。
なぜ、Salesforceが選択されるかについて、田崎は “3つの強み”があると紹介しています。まずはスピーディなイノベーションを可能にする「マルチテナントクラウド」。すばやいカスタマイズを実現する「拡張性に優れたメタデータプラットフォーム」。そしてセキュリティ、可用性、パフォーマンスを兼ね備えた「信頼性の高いエンタープライズクラウド」。「特にマルチテナントクラウド、メタデータプラットフォームである点は、大切な顧客情報をそのままに、年間3回もバージョンアップを行うことを可能にする革新的なイノベーションであり、当社の強み」としています。
その上で、「SFAを中心に出発したSalesforceソリューションですが、現在はマーケティング分野などにも進出。人工知能も備えながら、営業活動をドラスティックに変革しうるソリューションが揃っている」とアピールしたのです。
トータルに営業活動を支援するSalesforceソリューションですが、講演では、特に2つの新ソリューションについて焦点が当てられました。1つはパートナー企業とのコラボレーションを強化する「Sales Cloud PRM とSalesforce CPQ」の組み合わせ。もう1つが、人工知能の「EinsteinとABM(アカウントベースドマーケティング)」です。
まず「Sales Cloud PRM とSalesforce CPQ」の組み合わせでの新機能として紹介されたのがパートナーエクスペリエンスを実現する「Partner Central」。これは、パートナー向けにチャネルセールスを強化するもので、Marketing CloudやEinsteinの機能を一部パートナーに提供することが可能になりました。
「さらに、ここにSalesforce CPQの新機能を活用することで、正確な見積提供をスピーディに行い、機械損失を低減し、見積ミスによる本来不必要な値引きなどをなくすことが可能になる」と田崎は解説します。
実際に会場では、セールスフォース・ドットコムの秋津望歩がこの新機能のデモンストレーションを実施。サブスクリプションビジネスを行う企業を想定し、Partner Centralを介した代理店とパートナーとのコラボレーションを実演しました。
見込み客のフォローアップの場面では、Pardotの情報が一部パートナーサイドにも開放され見込み客をスコア順に提示。「また、案件のフォローアップでは、メーカーチャネル担当者から代理店に対して、提案や見積の注意事項が一目で分かるガイダンス機能なども盛り込まれています」と秋津は、メーカー、代理店ともに行動の明確化と効率化が実現できることを実演しました。
次に、営業活動にSalesforceを導入する株式会社エルテス 代表取締役の菅原貴弘氏が登場しました。同社では、ネット炎上などのソーシャルリスクによる機会損失を防ぐソリューションを提供しています。
実は同社では、2011年に営業支援としてSales Cloudを導入したものの、2014年に一度他社への乗り換えを実施。その際の出来事を「データの移行がうまくいかず結局1か月もの間営業活動が停止する危機に陥りました」と菅原氏は説明します。
そして同社では、営業活動の停止を教訓に2015年にはSales Cloudを再導入。2016年にはPardotを導入しマーケティング活動を強化。さらに今年2017年にはSalesforce CPQを60ライセンス導入し、売上予測や見積請求管理も強化しています。
Salesforce CPQ導入の理由を菅原氏は次のように語ります。「大きな理由は3つあり、1つは、当社は昨年マザーズに上場を果たしましたが、上場するには予実管理が重要だった点です。2つ目には、当社のようなサブスクリプションモデルのビジネスでは契約更新時のアラートが重要になること。さらに3つ目には、弊社の見積作成状況ではお客様のリスクにあわせ項目を変更したり、金額に合わせて調整が必要になります。これをいったんオフィスに戻って作成するとなると数週間後の返答になってしまいスピードが遅くなります。その場でつくりなおし、その場で受注できる体制をSalesforce CPQで実現しました」
現在ではSalesforceは同社の成長には欠かせないツールだと菅原氏は檀上からも強調しました。
講演最後に紹介されたのが、注目のEinsteinです。ここでは営業活動でどのようにEinsteinが活用されるかが紹介されました。田崎はまず「Office 365やGmailのメールシステムを利用している場合、Salesforce Inboxを活用して、Einsteinの技術でメールにインテリジェンスを取り入れることができる」と説明しました。
Salesforce Inboxでは、自動的にメールシステムでやりとりしたメールをすべてSalesforce側に取り込むことが可能となります。そのデータを活用してインテリジェントなスコアリングでリードに優先順位をつけられる「Einsteinリードスコアリング」やインサイドセールス支援として購買の予兆を捉え適切なアクションを提案する「Einstein 商談インサイト」を活用できます。
さらに、田崎は新登場のEinsteinを活用した次世代の営業ツール「Einstein High Velocity Sales Cloud」にも言及。先述の「Einstein リードスコアリング」といったEinstein技術と「Lightningセールスコンソール」を統合することで、よりいっそう生産性が向上できる点を強調しました。
「マーケティングにおいては、近頃、特定企業に対しての戦略的なマーケティングのニーズが増大しています」とした田崎は、「Einstein Account-Based Marketing」がAIを活用した特定企業へのマーケティングソリューションとして「セールスとマーケティングの関係をさらに適切に変えていく」と締めくくりました。
会場では、Einstein ABMのデモも行われ、どういったマーケティング活動が効果を出しているか一目で確認できるほか、優良顧客と似ている見込み客の自動選定や個別企業に特化したエンゲージメント把握なども実演されました。