「Salesforce Trailhead Live Tokyo」の基調講演、今回はその後半をお届けします(基調講演前半についてはこちら)。ここからはマーク・ベニオフが司会者となり、複数の登壇者によって話が進められていきます。
まずマークは「ここで素晴らしい、新しいものをご紹介します」と述べ、セールスフォース・ドットコム プロダクト マーケティング マネージャーの秋津 望歩にバトンタッチ。秋津は「EinsteinとWatsonの新しい組み合わせでどのような体験が提供できるのか、デモンストレーションでご紹介しましょう」と話を始めます。
ここでディスプレイに映し出されたのは、グラフと地図が表示されたPCの画面。最新のユーザーインターフェースである「Salesforce Lightning Experience」に、保険代理店の担当者としてログインしているところだと秋津は説明します。
「ひょうが降ると、屋外に停めてある自動車等に被害が発生し、保険金の支払いが必要になります」と秋津。このデモはWatsonの気象系サービスであるWatson Weather Alerts ServiceをSalesforce Marketing Cloudと組み合わせ、ひょうがふりそうな時にはPredictive Journeyで、顧客に自動通知を送るものだと語ります。Watsonの気象予測からトリガーを受け取った後、どのタイミングで何を行うかは、ジャーニー計画の画面でシンプルに設計可能。どの顧客にどのような形でお知らせを伝えるのかは、Einsteinがこれまでのやり取りから学習し、顧客毎に最適化されています。
「これまで企業はどのチャネルでお客様に通知を送付すべきかを決めるのに、数多くの試行錯誤を行ってきました。ここでAIを活用すれば、自動的に最適なチャネルが選択され通知が送信されます。通知の内容も、自動車保険の契約者であれば『車をガレージに入れてください』、バイク保険の契約者であれば『バイクにカバーをかけてください』といったように、お客様一人ひとりにパーソナライズされたメッセージが作成されます。これによってお客様と信頼関係を構築でき、保険請求の数も減らせるのです」
Salesforceの「Summer '17」では300種類以上もの機能がリリースされていますが、「そのうちなんと30種類以上がEinsteinに関する新機能」だと秋津。そしてその情報はTrailheadでも学ぶことができるので、ぜひアクセスして欲しいと言います(Trailheadはこちら)。
さらに秋津は「エンタープライズソフトウェアには非常に大きな5つの変革が起きています」と話を続けます。その変化とは、AIによる「インテリジェンス」「スピード」「生産性」「モバイル化」そして「つながり」であり、顧客とより深い関係を構築する上での鍵となると言います。
それではこれらに対し、セールスフォース・ドットコムはどのような取り組みを進めているのでしょうか。
「スピード」に関してはSalesforce Lightning Experienceでビジネスを加速。直感的なユーザーインターフェースでユーザー体験を変革し、ビジネスアプリケーションをスピーディに構築できるフレームワークを提供しています。またSalesforce Commerce Cloudも重要な役割を果たしています。すでに月間3億5000万人以上がこの上でオンラインショッピングを行っており、日本企業固有の要望にも対応。Einsteinも組み込まれており、オンラインでも店舗でもパーソナライズされた体験を提供できます。
「生産性」に関しては、これまでバラバラだった情報を1つにまとめられるSalesforce Quipを提供。これはモバイルファーストで設計されており、テキストやスプレッドシートはもちろんのこと、Salesforceのデータともリアルタイムに連携し、グループ作業に大きな変革をもたらします。
「モバイル化」はSalesforce1で対応。これは最も導入率が高い企業向けアプリケーションであり、月間アクティブユーザー数が100万人を超える、世界No.1のエンタープライズモバイルアプリケーションであると評価されています。ユーザー企業独自のアイコンやカラーを設定できるMy Salesforce1も利用可能になりました。
そして「つながり」では、IoT革命をThunder for Cloudで支えています。これによってIoTと顧客とをつなぎ、顧客をより深く理解し、顧客に合わせたサービスを提供できるようになります。
「これらの5つの変革は、すべてSalesforceのインテリジェントなカスタマーサクセスプラットフォームに組み込まれています。IoT時代に対応したThunder、データからインテリジェンスを引き出すEinstein、ビジネスにスピードをもたらすLightning、これらがイノベーティブなアプリケーションを支えているのです。これからもセールスフォース・ドットコムは、皆様が皆様のお客様と新しい形でつながることを支援します」
次に紹介されたのはRIZAPの事例です。同社は「人は変われる。」を証明することを企業理念に、顧客が本当に求めている「結果」にコミットし続けている企業。そのためには顧客を理解し、顧客と共にゴールを目指す「寄り添い」がサービスの根本として必要であり、それを支えているのが究極のCRMなのだと言います。そのCRMがSalesforceであり、これによって顧客の目標達成をチームで支援しているのです。
ここで、セールスフォース・ドットコム プロダクト マーケティング ディレクターの田崎 純一郎が登壇し、RIZAPでの活用事例を紹介。「RIZAP経済圏は数多くのM&Aで急拡大しています。そこで必要になったのが顧客管理の基盤であり、Service Cloud、Marketing Cloud、App Cloud、Einstein Analyticsが採用されました」と語ります。田崎はこれらの製品について簡単に説明した後、RIZAPがこれらで何を行おうとしているのか、ビジョンデモで紹介していきます。
「最初にご紹介するのはSalesforce Marketing Cloudの製品群に新たに加わった、Salesforce DMP(Data Management Platform)です」と田崎。画面には「中年、子育て世代で外食好き」というポテンシャルカスタマーのセグメントと、このセグメントに含まれるスマートフォンなどのデバイス数、それらデバイスを使っている人の数が表示されています。人の数はIDを基に紐づけたものと、オンライン上の行動などをもとに推測された数字があり、これによってターゲットを絞った最適な広告を配信できると言います。
次にFacebookの画面を表示し、DMPの情報を基にRIZAPの広告が掲載されていることを確認。その内容は「オンラインで無料カウンセリングを行っている」というものです。ここでメッセージの送信ボタンを押すと、FacebookのMessengerでRIZAPの無料カウンセリングがスタート。ダイエットに関する質問に答え、自分の位置情報を送信することで、最寄りのRIZAP店舗が紹介されます。これによって、より詳しいカンセリングを受ける「きっかけづくり」が可能になります。
無料カウンセリングで入力された情報は、RIZAPのコンタクトセンターへとリアルタイムで伝わっています。ここでService CloudのLightningコンソールを見ると、いま申し込んだばかりのお客様のデータが表示されます。画面構成はApp Builderでカスタマイズされており、顧客の情報を理解した上でコンサルティングが行いやすいようにできます。
すぐに契約に至らなかった顧客は、Salesforce Marketing Cloudでフォローされます。ジャーニービルダーでOne to Oneのカスタマージャーニーを設計し、新たなきっかけづくりにつながるコンテンツを配信。配信タイミングはEinsteinによって最適化されています。
契約に至った後は、トレーナーによる寄り添いがスタート。ここではApp Cloudで作成されたアプリケーションが、iPadアプリとして表示されています。トレーニングのたびに計測される体重や体脂肪率等のデータが、自動的にトレーナーの元に送られ、顧客に対するアドバイスを行う上での重要なツールになります。またRIZAPには8万人の蓄積データがあり、これを分析することで、今後の体重の推移が90%以上の確率で予測できます。
各店舗の売上分析や予測では、Einstein Analyticsを活用。他の事業とのシナジー状況もリアルタイムに把握でき、次の施策立案に役立てられます。「これら全てをサポートするのがSalesforceのプラットフォームです」と田崎。「今後もRIZAPの成功に、コミットしていきたいと考えています」。
この後、RIZAPグループ株式会社 代表取締役社長の瀬戸 健氏も登壇。RIZAPのビジョンについて語ります。
「結果にコミットするというのは、お客様が求めるものを必ず提供することに他なりません。マズローの5段階欲求説というものがありますが、昔は生存が重要な時代もありました。しかし現在では、人からどのように見られているか、自分の価値をどのように高めるかが重要になっています。RIZAPはトレーニングで対価をいただくのではなく、痩せたという結果で対価をいただく自己投資産業の会社です。他にもゴルフや料理教室の事業も展開しており、すべてにおいてお客様が本当に求めるものを提供しています。RIZAPはこのような自己投資産業において、グローバルでNo.1になることを目指しています。そのためにはお客様との距離を近づけることが重要であり、セールスフォース・ドットコムと共に頑張りたいと思っています」。
これに続いて紹介されたのが、Amazon Web Services(AWS)の事例です。セールスフォース・ドットコム デベロッパー マーケティング プログラム シニアマネージャーの舟越 美宝が登壇し、次のように話し始めます。「AWSはAmazon.comという巨大な多国籍企業の中で、小さな新規事業としてスタート。ビジネス成功のためには適切なツールでチームをまとめ、すべての過程でお客様を喜ばせる必要があることを知っていました。その中核として活用されているのが、Sales Cloud Einsteinです」
舟越も関連製品について簡単に説明した上で、AWSにおけるSalesforce活用のライブデモを披露。まずは「AWS Big Dataウェブセミナー」の画面を表示し、見込み客の獲得がどのように行われているのかを説明します。この画面はPardotと連携することで顧客の動きをトラッキングし、入力内容も含めてSales Cloudに反映されるようになっています。
次はインサイドセールス担当者の画面。見込み客の一覧や、コンタクトの優先順位等が表示されています。優先度はEinsteinが顧客の属性情報や行動履歴から分析して作成。優先度の低い顧客へのアプローチ方法も、Einsteinとプロセスビルダーで自動化されています。ホットな顧客に対してはSales Analyticsでポテンシャルを分析した上で、顧客との対話を実施。ポテンシャルの高さを確認できた顧客は商談となり、営業担当者に割り当てられます。
営業担当者はAmazonオレンジにカスタマイズされたSalesforce1で、見積りから商談成立までのすべての作業を進められます。また提案書作成等のチームでの活動は、Quipで支援されています。商談が成立した後はCommunity Cloudのポータル上でサポートが行われ、Einsteinによるインテリジェントボットや、必要に応じてサポート担当者による対応が行われます。「このような、これまでにない顧客体験が、AWS様のさらなるビジネス成長を支えているのです」。
最後にセールスフォース・ドットコム 代表取締役会長兼 社長の小出伸一が登壇し、この後のブレイクアウトセッションやTrailhead体験ゾーンを紹介。また9月26日、27日に予定されている「Salesforce World Tour Tokyo」や、世界最大規模のイベントである「Dreamforce」についても言及しました。
「私どもの製品やサービス、ソリューションに関して、皆様からたいへんなご支援をいただいていることを、あらためて御礼申し上げます」と小出。この基調講演でマークのパッション、エナジーを感じられたのではないでしょうか、と述べた上で「私どもはこれからも、お客様の成功と成長にコミットできるよう頑張っていきたいと考えています」と締めくくりました。
なお基調講演をはじめとするセッションの様子は、以下のURLにビデオとして公開されています。文字では伝えきれなかったパッションやエナジー、会場のホットな空気を、ぜひこれらのビデオで感じてください。
https://www.salesforce.com/jp/video/
▼Salesforce Trailhead Live Tokyo講演レポート 連載一覧
Vol.2 エンタープライズソフトウェアの5つの変革 (本ページ)