本連載では、企業のデジタルトランスフォーメーションを支え、革新に挑戦する「Trailblazer(トレイルブレイザー:先駆者)」をご紹介しています。第4回目となる今回は、株式会社ビズリーチの事業戦略部で業務改革を推進する滝田光氏をご紹介します。HR-Tech(Human Resource×Technology)分野を牽引する同社では、即戦力人材と企業をつなぐ転職サイト「ビズリーチ」を皮切りに、20代のためのレコメンド型転職サイト「careertrek(キャリアトレック)」やAIを活用した戦略人事クラウド「HRMOS(ハーモス)」など先駆的なサービスを展開しています。
同社に入社する前はセールスマネジメントで手腕を発揮していた滝田氏ですが、Trailheadをきっかけに開発を手掛け、ご自身のキャリアも大きくシフトさせたと言います。
株式会社ビズリーチ 事業戦略部 BPRグループ 滝田 光氏
滝田氏とSalesforceの出会いは、同社の営業部門で活用していたSales Cloudにユーザーとして触れたのが始まりだったと言います。
「前職でもセールスマネジメントに所属していました。そこで使っていた自社開発のCRMと比較したところ、Sales Cloudはレポーティング、データ解析の基盤も整っていながら、かつワークフローも簡単に描ける。組織を急拡大させている当社でも拡張性に不安はなく“強力なツール”だと直感しました」と滝田氏。
ほどなく営業部門からマーケティング部門に異動になったという滝田氏ですが、ここでは営業での経験を活かし、Sales Cloudの新たな活用法を提案します。実は同社の営業部門ではSales CloudをCRM(顧客管理)というよりはSFA(営業支援システム)的に活用していました。滝田氏はこのSales Cloudをマーケティングツールと連携させることで、顧客接点を長期的に管理できる仕組みづくりを目指しました。ただし、この時点で滝田氏はSales Cloudの知識もなければ、開発の経験もありません。そこで、挑戦したのがSalesforceの無料学習サービスTrailheadです。
「これまでは、あくまでもユーザー側からの要件定義のキャッチアップや設計までで、開発には携わっておりませんでした。実は、何度も開発には挑戦していましたが、いつも開発環境を構築する段階で挫折していたのです。それが、Trailheadでは開発環境を準備する必要もなく、Sandboxにつながっていて自由にカスタマイズができる。初心者でも恐れずに開発にチャレンジできるありがたい環境が整っていました」と当時を振り返ります。
滝田氏が、同社のSalesforce活用で実現したかったのは、前出したようにマーケティングツールなど外部クラウドシステムとの連携。さらに、項目過多による「入力の不徹底」や「複雑なオブジェクト構造によりデータの抽出が適切に行えない」といった営業部門で感じた課題の改善でした。滝田氏は、これらの業務改革をシステムで後押しするために、半年間ほど、1日2時間ずつTrailheadでの学習を続けたと言います。
「開発者向けのコースは初心者であっても、たとえば、Apexはオブジェクト志向……といったように少し踏み込んだ学習になるので、まずは管理者向けの初級コースから挑戦しました。基礎を学んだ後で、外部システムとの連携といったモジュールも学習していきました。Trailheadを学ぶにしたがい感じたのは、Salesforceのベストプラクティスを理解できるメリットがあることです。“裏側はこういう仕組みになっていて、こう利用してもらいたいからこの仕様になっている”といった構造が見えてきます。こうしたシステムのロジックを学ぶことでシステム設計の幅が広がります」と滝田氏は説明します。
また、滝田氏がTrailheadの学習を楽しみながら続けられた理由の1つには、並行してJavaを学び始めたことも功を奏したと言います。
「ApexとJavaがリンクするような形で、Apexで学んだ部分がJavaで使えたり、逆もまたしかりでした。勉強すればするほど、今まではフワっとしか理解できなかった部分が明確になっていく感覚によって、非常にモチベーションが高まりました。しかもTrailheadは“トレイル”というように山登りをイメージされていますよね。一歩一歩、単元をクリアして山登りを達成していくようなゲーミフィケーションに優れた仕掛けと相まって、学習に楽しく取り組めました」と滝田氏。さらにTrailheadの魅力を次のように語ります。
「セミナーなどに参加した際ももちろん得るものはあります。ですがなかなか情報として自分の中にストックされていかないイメージもありました。参加直後には何かしら感じることはあるのですが、実際の業務で同じような課題にぶつかった時に活かせるかというとなかなか難しい。Trailheadは常にそこに情報があって、しかも自分の手を動かせる。利便性は抜群ですね」
こうして滝田氏がTrailheadで学びながら実施したSales Cloud活用の大手術は、大幅な業務改善を実現しました。たとえば、入力率の向上やリードの取り込み率は劇的に改善され、滝田氏の予想を超え、すばやく新たなSales Cloudの活用が定着。また「商談機会の獲得」「訪問」「契約」といった営業行程のファネルの突破率も向上し、業績アップにも結びついたそうです。そして、もう1つ、滝田氏が大きな成果として感じているのが「Trailheadをきっかけに、“現場の勘所”と“テクノロジー”の両輪を兼ね備えられたこと」だと言います。
「データの持ち方だったり、実装可能な業務とそうでないことの線引きが明確になり、実際の業務に合わせてどういった施策が打てるのか“選定の精度”は格段に上がりました。業務とシステムの実装が合致していなければ、誰にも使われないシステムになってしまいます。“業務”と“実装”その両輪を手に入れられたことは私の中でとても大きな転換点になりました」
実際、滝田氏は「Trailheadにより、大きなキャリアチェンジを実現した」そうです。
「元々はセールスやディレクション業務を行っていたのが、今ではマーケティング部門を経て事業戦略部門にいます。会社の方向性に合わせて業務改善のみならず、事業数字の改善をするスキルが身に付きました。Trailheadに出会わなければ、このキャリアチェンジには至らなかったと思います」
現在、滝田氏は社外とのつながりを広く持とうと「業務改革を進める」コミュニティを運営。ここで業務要件にもシステムもどちらにも知見を持つご自身の強みを発揮し、独自の経験やノウハウなどを発表しているそうです。
「Salesforceは、当社の基幹システムとなっているため、まだまだ活用を広げていきたい」という滝田氏。
「法人のお客様や個人の求職者様に対しても、コミュニティづくりを目指していきたいと思っているので、次はCommunity Cloudの活用が考えられるかもしれません。また、幸い過去の膨大なデータはSalesforceに蓄積されていますので、このデータと新しいテクノロジーを使って、もっと事業成長をサポートしていきたいとも考えています。たとえばSalesforce Einstein(AI)を利用して、契約率を即時に算出するとか、Wave Analytics(データアナリシス)を利用してデータ分析を行うとかです」と滝田氏。
さらに、こうしたソリューションやテクノロジーの活用には、Trailheadが不可欠であると言います。
「Trailheadの魅力の1つに、更新性の高さがあると思います。Salesforce Einstein(AI)やWave Analyticsの新しいテクノロジーの学習も次々と追加されています。実環境が自社になくても、先取りできるのは大きい。1つの課題を解決するための施策やツール選択の際に具体性や正確さが全く異なります」という滝田氏の、先駆者としての挑戦はまだまだ続きます。
Trailheadを始める前にどんなサービスか知りたい!という方向けに、Trailhead スタートガイドもご用意しています。ぜひご覧ください。