本ブログは、米国で発表したブログ New AI Breakthrough from Salesforce Research Boosts Productivity with Text Summarization の翻訳版です。

2017年には、一般の人がメディアから情報を収集するために費やす時間は一人当たり一日平均して12時間7分となっており、今後その消費時間はさらに増加すると予想されています。コネクテッドデバイスが、Alexaやサーモスタットから自動車や携帯電話まであらゆるものと遍在していることから、新しい情報が実に目まぐるしいペースで生み出されています。情報にアクセスできないことで悩む時代は終わり、今やニュースやソーシャルメディア、Eメール、テキストなどからなだれ込んでくる情報に追いついていくことが争点となっています。しかし、もし受信するすべてのEメールやスクロールして出てくるニュース記事のキーポイントを正確で簡潔なサマリー(要約)で受け取ることができればどうでしょうか。

Salesforce Research はこの課題に真っ向から取り組みました。そしてこの度、自然言語処理のテクノロジーを活用して、自動的に長文を要約し、限られた時間の中で分かりやすく、理解しやすいハイライトを提供することを目的に研究を行った結果生み出した2つのブレイクスルーをご紹介します。テキスト要約は、特にニュース記事などの長文テキストが含まれるケースでは非常に困難なチャレンジで、Salesforce Researchではまさにそうした最先端のテクノロジーを生み出していくことに取り組んでいます。今回取り組んだのは、強化学習(reinforcement learning)を活用した、これまでより優れた文脈語生成モデルと新しいトレーニングサマライゼーションモデルです。このAIの進歩によって、アルゴリズムが簡単に読むことができる、高精度な複数の文章から成るサマリー生成を実現し、これまでの検証結果よりも大きく改善しました。

 

生産性を新しいレベルへ

技術がさらに向上した自然言語処理によるテキスト要約は、人やあらゆる業界のビジネスの生産性を高める大きな可能性を備えています。営業の例を挙げてみましょう。一般的なB2Bの販売サイクルは数週間から数か月かかり、その期間に結構な長さの、複雑な内容のEメールスレッドが発生します。今回Salesforce Researchが開発したテキスト要約を利用すれば、担当者はすべてのEメールを端から端まで時間をかけて読むのではなく、案件がオープンになっている間にすべてのEメールのやり取りを急いでキャッチアップし、重要な個所を理解し、次にとるべき最適なアクションが何であるかを把握できるのです。これが可能となれば、新しい営業担当者であっても業務がスピーディに立ち上がり、時間に余裕ができることで、その時間を顧客との関係構築に充てることができるようになるというわけです。あるいは、営業担当者が顧客とのミーティングにこれから参加するという状況であるとしましょう。その営業担当者は、The New York Times紙のプッシュ通知によって、その顧客がある企業の買収を発表したことが報じられていることを知ります。急いで長文の記事を頑張って読むのではなく、Salesforceのテキスト要約のために強化学習済みのモデルが重要なポイントを抑えて、簡単に読み込むことができるサマリー文にまとめてくれるので、担当者は情報がインプットされた状態でミーティングに参加することができます。また、マーケターは、何ページにもおよぶ顧客製品のレビューを読まなくても重要なインサイトを取得することが可能になります。テキスト要約により、マーケターはどの顧客をナーチャリングキャンペーンにかけるのか、それに対してどの顧客にロイヤリティクーポンやディスカウントを提供するべきかを簡単に判断することができるようになり、一人ひとりの顧客へ最適なマーケティングメッセージを届けることができるようになります。

ビジネスのスピードが加速していることから、これまで以上に生産性と効率を高めることが求められています。Salesforce Researchでは最新のAIテクノロジーを支援し、セールスフォース・ドットコムのエンジニアと製品チームがこれらのテクノロジーを実際にビジネス課題とされているところに導入することをミッションとしています。今回の研究は要約という難題に取り組んだことで大きな前進になりました。このモデルが学術的に、そしてお客様のビジネスにどういうインパクトを与えるのかを見守っていきたいと思います。