モバイルデバイスを利用して、5000本以上の国産映画のなかから気になる作品をストリーミング視聴。ひとしきり映画を楽しんだ後は、日用品をそろえるためにオンラインショッピングサイト巡り。そうだ、洗濯物がたまっているんだった。ランドリーサービスが受けられるアプリを落として、洗濯物を片づけてしまおう……。

このようにモバイルが日々の生活に溶け込んでいる風景は、もはや先進国だけの専売特許ではありません。これら3つのモバイル向けサービスは、アフリカですでに展開されている実在のものです。アフリカには、近年テクノロジースタートアップ企業がこぞって進出し、日夜新しいサービスの構築に励んでいます。アフリカは今や、世界で最もホットなモバイルマーケットのひとつなのです。

アフリカでのモバイルサービス台頭の背景とは

アフリカのモバイルサービス台頭の背景には、増え続けるモバイルユーザーと、アフリカ市場の特殊性という大きく2つの要素があります。

国連の予測によれば、アフリカの人口は2030年には15.6億人と、同時期の中国(13.9億人)、インド(15.2億人)を超し、2050年には21.9億人になると言われています。またアフリカ開発銀行の予測では、2020年の一人当たりGDPは2500ドルに達し、2010年の1.5倍の水準にまで上がると考えられています。人口が増え、一人ひとりが豊かになれば、モバイルユーザーは当然のように増加します。コンサルティング会社のマッキンゼーによると、2025年には3.6億人ものモバイルユーザーが出現すると見られています。巨大なモバイルユーザーを擁するアフリカは、テクノロジースタートアップ企業にとってまさにフロンティアと言えるでしょう。

またアフリカはまだまだ発展途上であり、道路や電気など基本的なインフラですら非常に貧弱です。通常であれば、脆弱なインフラは市場への参入障壁と見なされます。しかし、物理的なインフラが無いことで、先進国の後追いではない、ユニークなサービスが生まれる可能性を秘めていともいえます。例えば前出のストリーミングビデオサービスは、レンタルビデオ屋が先進国ほど発達していなかったからこそ、瞬く間にユーザー数を増やすことに成功しました。

このように、アフリカは今最も熱いモバイルマーケットとして注目を集めています。そこで展開されているサービスは、最初こそ先進国のサービスのレプリカが少なくありませんでしたが、近年ではアフリカ独自のニーズを捉えたサービスが数多くリリースされています。

アフリカならではの「眼科」アプリ

アフリカでは、膨大な人口に対して医療インフラが圧倒的に不足しています。そのため、農村に住む住民たちは、眼科に通うために片道4~5時間かかることも珍しくありません。病院へのアクセスが困難なために、目に多少の不調があっても診察を受けず、気づけば手遅れになって失明に至ってしまう患者も多くいるそうです。スマートフォンアプリの「VURA」は、都市部にいる専門医と患者とをバーチャルに結びつけることにより、農村部でも受けられる医療サービスを実現しました。このアプリでは、患者は目の状態を診断するテストの実施や、自分の目の写真のアップロードを行います。離れた場所にいる医師は、テスト結果や目の写真を元に診察を行い、手術を受けるべきかどうかの診断を下します。VURAのローンチ当初は目の診察のみでしたが、2016年7月現在では心臓内科、整形外科、皮膚科、火傷診断やHIV診断も行えるようになり、これから小児科など更なる診察サービスの展開も予定されています。

アフリカ市場でプレゼンスを発揮するために

アフリカは、日本から見ると心理的にも物理的にも遠いために、「将来性のある巨大市場」と言われてもいまひとつピンとこない方もいらっしゃるかも知れません。また、アフリカの産業といっても資源やエネルギー関係といった限られた範囲のみで、自社のビジネスとはまだまだ関係がないと捉えている経営者も少なくないでしょう。しかし実際には多くの企業にとってチャンスのある魅力的な市場なのです。

このアフリカ市場でプレゼンスを発揮するためには、リバース・イノベーションの記事でも見てきた通り「新興国の人たちが持つニーズは先進国の人たちのそれと全く異なるため、イノベーションが必要だ」という視点に立つことが重要です。現地に根を張り、顧客の情報とニーズを丁寧に掘り下げる。それら貴重な情報を、本社の関係部署とリアルタイムで共有し、社内コラボレーションへとつなげていく。当たり前のように思えることですが、自分たちの持つニーズと大きく異なるからこそ、ひとつひとつのステップを丁寧に行う必要があるのです。そのためには、Salesforceのような社内コラボレーションを促進する仕組みがあなたの組織を力強く後押しするでしょう。世界中どこにいても使えるSalesforceは、物理的に遠いアフリカ市場をぐっと近づけてくれるに違いありません。Salesforceとともに、世界で最もホットなマーケット探索へ出かけてみませんか。

参考文献:

・Smart Africa: Smartphones pave way for huge opportunities (Financial Times  2016年1月26日)

・Smart Africa: Nigerian groups target ‘100% mobile-first market’ (Financial Times  2016年1月28日)

・アフリカビジネスに関する基礎的調査(経済産業省・株式会社 野村総合研究所 2013年3月)

・VULA

・'My life is so much better now'(BBC News 2015年3月17日)

・参考資料:アフリカの現状と日本の対アフリカ政策(外務省 2007年7月)

株式会社 野村総合研究所
 
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