「Apple Watch」をはじめとした、ウェアラブル端末が話題になり始めてから約1年。従来の腕時計型に加え、最近ではFacebook傘下の「Oculus Rift」等のヘッドマウントディスプレイ型など、多様なデバイスが発売されるようになってきました。とはいえ、スマートフォンのように誰もが持つようになるには、未だしばらく時間がかかりそうです。一方で、ウェアラブル端末の活用が期待されるのは、個人よりむしろ、業務での活用ではないでしょうか。業務でウェアラブル端末を導入することによるメリットは、どのようなことがあるのでしょうか。

ウェアラブル端末の活用は個人より業務利用

一般のユーザーにとってウェアラブル端末といえば、Apple Watchのような腕時計型の端末が代表格といえるでしょう。ウェアラブル端末は今後、スマートフォンやタブレットに代わるデバイスとして活用される大きな可能性を秘めています。

特に業務利用におけるウェアラブル端末の活用は今大きな注目を集めています。業務においてウェアラブル端末を活用することは、作業に両手を使う現場作業で特に大きな効果を発揮するのです。身につけた端末から情報が得られることで、その都度手元のマニュアルやパソコン画面を確認する必要がなくなり、スムーズで確実な作業が可能になります。

例えば、AR(拡張現実 ※ARについて解説した関連記事はこちら)による作業サポートもそのひとつです。作業者がヘッドマウントディスプレイとよばれる頭部に装着するディスプレイを利用することで、目の前のディスプレイに映し出される情報と実際の現場の状況の両方を同時に確認できるようになります。作業手順や必要な指示をディスプレイに表示することによってミスを防ぎ、経験の浅い作業者でもスムーズに業務を進めることが可能になるのです。

今後はIoTの活用が不可欠な時代になる

ウェアラブル端末は、コンピューターからの情報を受け取ることによって、高度な情報の取得が可能になります。このような、さまざまな機器がインターネットに接続されるIoT(Internet of Things)技術は、今後幅広い業種で活用されることが期待されています。

IoTを活用する大きなメリットのひとつが、機器に搭載されたセンサーによって情報を取得できる点にあります。先に紹介したAR技術による現場サポートでも、ヘッドマウントディスプレイに搭載されたセンサーによって作業者の動きを検知することが可能です。

機器に搭載されたセンサーから収集された情報はビッグデータとしてクラウド上に蓄積されていきます。これらのデータには、業務に関するさまざまなヒントが詰まっていますが、活用するためには整理や分析が不可欠です。IoT機器から得られたデータを分析し、そこから業務上の問題点を見つけることによって、業務プロセスの改善や効率化に役立てることが可能になるのです。

IoTから顧客につながるIoCを実現する

IoTは業務を効率化するために大いに役立ちますが、その効果をより有効活用するためには、IoTによって得られた恩恵を顧客にとってのメリットに変換していくしくみが必要です。

単に業務に使用する機器をインターネットに接続して効率化をはかるだけでは、既存のビジネスモデルに付加価値を与えただけにすぎません。そこから得られたものを顧客に還元していくことによってはじめて、新たなビジネスモデルを作りあげることが可能になるのです。

そこで求められているのが、IoTの先にある「IoC(Internet of Customers)」の実現です。IoTによって得られたさまざまなデータを活用し、新たな顧客価値を創造していくことによって、IoTの活用はより大きな意味を持つものとなるはずです。

例えば、先述のビッグデータをどのように利用するかについても、IoCの視点で考えることで可能性が広がるはずです。業務の効率化や無駄をなくすこと、作業者のミスを減らすといったことに役立てることはもちろん大切ですが、それだけでは顧客への還元という点では十分ではないかもしれません。企業が収集・分析したデータと、顧客が求めていることの接点を見つけ出し、サービスの向上といったかたちで顧客に還元することではじめて、IoTの技術を顧客のメリットにつなげられている状態であるといえます。

どのようにしてデータと顧客とをつなぐのか?

では、IoCの実現には、具体的にどのようなケースが考えられるのでしょうか? ここでいくつかの例を見てみましょう。

・車両情報をもとにバスの走行状況を提供

バス会社やタクシー会社が、顧客により正確な情報を提供して、利便性を高めるために採用しているしくみです。車両に設置したIoTデバイスから得られたスピードやアクセル・ブレーキの使用状況、GPSによる位置情報などによって、各車両の走行状況を把握し、それをもとにバスの走行状況やタクシーの配車状況を顧客に提供します。

・センサーから得られた情報で、ゴミ収集のスケジュールを決定

IoTは、街の衛生環境を保つためにも役立ちます。街角や施設内のゴミ箱にセンサーを設置して、ゴミ箱にたまったゴミの量や利用される頻度といった情報を収集すれば、すぐに回収を行うべき場所が検出できます。

定期的に巡回して収集するだけの場合は、急な利用者の増加でゴミ箱があふれてしまうといったことも起こるでしょう。IoTセンサーの情報を活用すれば、このような柔軟な対応が可能になり、施設などの利用者がつねに快適にゴミ箱を使えるようになるのです。

・生産設備の稼働状況を社外から監視

IoTの導入が大きなメリットとなる製造業でも、IoCの考え方で業務を進めることが重要となります。IoTから得られるきめ細やかなデータを活用することで、生産ラインを監視するだけでなく、機器のトラブルを事前に予測して、トラブル発生前にメンテナンスを行うといった対応も可能になります。トラブルを回避して、生産ラインの停止を防ぐことによって安定した商品の共有という顧客価値を高めることが可能になるのです。

顧客価値を生み出すことが大切

ヘッドマウント型のウェアラブル端末といえば、これまではゲームや映像など、エンターテイメント業界での活用が予想されていました。しかし、ふたを開けてみれば、ヘッドマウントを装着することで両手があくというメリットは個人利用よりも業務利用で脚光を浴びてきています。

可視化されたデータや情報を、両手があいた状態で有効活用するというシチュエーションは、スマートフォンやタブレットを中心としたモバイル市場からのシフトを意味しているのかもしれません。

このように、ウェアラブル端末やIoTを業務に活用することは、これからの企業活動において重要度が増してくることとなるでしょう。このような時代において、IoTなどのソリューションの導入を業務の効率化だけで終わらせるのではなく、そこから得られたものをいかに顧客に還元していくかを考えることは非常に重要となります。

せっかく収集したデータも、活用しなければ意味がありません。それぞれの企業が、自社の業務を通じて得られたデータをどのように活用し、顧客のメリットにつなげていくかを考えることが求められているのです。

Salesforceを活用することで、企業活動におけるさまざまな情報を収集し、それを活用できるように可視化することが可能になります。顧客のニーズを満たすために、まずは社内のデータを可視化することでそれぞれの顧客に最適なアプローチを実現します。

参照:

Facebook、HMDメーカーのOculusを20億ドルで買収(ITmedia 2014年3月26日)

富士通や日立がウエアラブル端末やAR技術を現場作業で実用化、浄水場などでビッグデータの収集も(IoT Next 2015年4月3日)