ベンチャーキャピタル投資に見る、成功するソーシャルメディアの要素とは?

雨後の筍のように、現れては消えていくソーシャルメディアプラットフォーム。今後のトレンドを見ていく上で、どのような点に気をつけておくと良いのでしょうか。前回は、ソーシャルメディアの機能面から動向を見ていましたが、今回は少し視点を変えて、アメリカ最古のベンチャーキャピタル「ベッセマー・ベンチャー・パートナーズ」の投資活動から、生き残るソーシャルメディアプラットフォームとは何かを考察していきたいと思います。

近年、ベッセマー・ベンチャー・パートナーズが行った投資で成功したものに、動画配信サービススタートアップ企業Twitch(ツイッチ)及びPeriscope(ペリスコープ)への投資があります。両アプリとも、その人気は現在では不動のものとなっていますが、サービス立ち上げから間もない段階で、ベッセマー・ベンチャー・パートナーズが投資を決定した理由はどこにあったのでしょうか? 当時の判断理由を振り返ることで、成功するプラットフォームに必要とされる要素を明らかにしたいと思います。

Twitchへの投資を決めた理由

まず、ゲーム映像のライブ配信プラットフォーム「Twitch」に対する投資を振り返ってみましょう。Twitchは2014年8月にアマゾンに買収され、現在はアマゾンの提供サービスとなっていますが、ベッセマー・ベンチャー・パートナーズが投資を決めたのはそれよりも前、2012年のことでした。当時の内部資料によると、投資を決めた理由として下記のポイントが挙げられています。

  • 強いチーム体制
    チャレンジ精神あふれるCEO と、情熱、実行力、明確なビジョンを有したチームメンバーの存在。
  • アイデアと市場規模
    ターゲットユーザーは非常に限られているが、成長見込みは明らか。観戦型スポーツとして十分な市場規模があると判断。
  • 収益化モデル
    メディア戦略は外部パートナーとの模索段階。(後に独自のセールスチームを編成して成功)
    マーケットプレイス型ビジネス。強いネットワークを有し、継続的な成長が見込める。

Periscope(ペリスコープ)への投資を決めた理由

当連載の前編でもその人気ぶりに触れた動画ストリーミングアプリ「Periscope(ペリスコープ)」に対しては、2014年に投資を決定しました。同じく当時の内部資料を見てみると、投資を決めた理由として下記のポイントが挙げられています。

  • コンセプト
    コンセプトの斬新さがすばらしい。技術面、市場性の両方においてリリースタイミングも適切。
  • チーム体制
    やる気、実行力にあふれ、明確なビジョンを持ったチームメンバーで構成。
  • 市場規模
    モバイル機器からのソーシャルメディアアクセスが増加していること、「瞬間」を共有したいという願望の普遍性を考慮し、十分な市場規模が見込めると判断。

その後、ベッセマー・ベンチャー・パートナーズの予想を超えるスピードでプロダクト開発を進め、アプリ公開前のβ版の段階でTwitter(ツイッター)に買収されました。

成功するソーシャルメディアに共通する要素とは

その後、Twitch、Periscope両プラットフォームはまさに飛ぶ鳥を落とす勢いで急成長を続けています。こうして、ビジネス立ち上げから間もない段階でベンチャーキャピタルが投資を決定した理由を改めて見返すと、成功するソーシャルメディアに共通する要素が浮かび上がってきます。明らかなのは、チーム体制が非常に重要であること。アプリ公開のタイミングが適切であること。ビジネスの運用資金を得るための収益モデルをきちんと構築しておくことです。

さらに、Twitch、Periscopeの両チームともに、「プラットフォームとして関係各位にどういったインセンティブや利点を与えられるのか」という視点で、ビジネス成長に伴う変化やオフラインでのユーザーの動きをしっかり研究していました。どうしたらオンラインメディアに取り込めるのかについて事前にしっかり検討できていたのも成功の秘訣と考えられます。人は本来「社会と関わり合いたい」という欲求を持っている生き物です。成功するソーシャルメディアというのは、そうした欲求をうまく利用することができるものとも言えます。

参考:

  • A Look At The Internal Memos Of Twitch And Periscope | TechCrunch(2015年10月18日)
  • ゲーム実況の「Twitch」、アマゾンが10億ドル弱で買収 « WIRED.jp(2014年8月26日)
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