企業マーケティングツールとして不可欠な存在となったソーシャルメディア。適切に使えば確かなビジネス成果を生み出すことが明らかになってきていま すが、新しいプラットフォームや新機能が次々と登場し、その「効果的な使い方」の主流も絶えず変化しています。これまでの流れと最新動向を踏まえ、 2016年のソーシャルメディアの傾向をご紹介します。キーワードは、「ユーザー体験の変化」です。
そもそもソーシャルメディアとは「すぐに発信」できることを特徴とするものですが、最近はとりわけその「即時性」を前面に押し出したアプリが人気で す。そのひとつであるPeriscope(ペリスコープ)は、スマートフォンで撮影中の動画をストリーミングできるアプリで、動画を一旦保存した後にアッ プするこれまでのアプリに比べると即時性が大幅にアップしています。Twitter(ツイッター)がビジネス成長の可能性を見込んでアプリ公開前に買収に 動いたほどです。予想通り、アプリ公開からたったの4か月で登録アカウント数は1,000万に達し、全ユーザーの1日あたりの動画視聴時間を合計すると約 40年分に相当するほどの人気を誇っています。
写真共有サービスInstagram(インスタグラム)も、2015年9月2日にダイレクトメッセージ機能強化を発表し、従来よりも使いやすい、ス レッド型ダイレクトメッセージでの写真や動画コンテンツの共有が可能になりました。2011年公開のSnapchat(スナップチャット)も写真や動画を 特定ユーザーと共有できるアプリですが、その大きな特徴は、送信したコンテンツが最大10秒で強制的に削除されること。「瞬間」を切り取り、履歴が残らな い気軽さが人気を呼び、デイリーアクティブユーザーは1億人に達し(2015年5月時点)、特に米国では34才以下の若年層に人気のアプリとなっていま す。
これら「即時性」を強みとするアプリが主流になれば、企業マーケティングにおいても、その場で即座に投稿するスタイルも普及していくでしょう。
モバイル機器からのソーシャルネットワーク利用が増え、ソーシャルメディアのビジュアル重視の傾向が強まるなか、2015年に注目を集めたのは Facebook(フェイスブック)とPinterest(ピンタレスト)による「購入」ボタン機能の導入です。これにより両サービスのモバイルユーザー は、スポンサー投稿で気に入った商品があれば、アプリを離脱することなくワンクリックで商品購入ステップに進めるようになりました。
Instagramも2015年9月に広告サービス強化として「商品購入ボタン」を設置できる仕組みを導入しました。2016年も引き続き、その他 の主要プラットフォームがこの流れを追って、同様の機能追加を行うとみられるので、ソーシャルメディア上での直接購入がさらに普及していくのは間違いない でしょう。
各プラットフォームともにアプリ内機能の充実を進めていますが、新機能のリリースで常に先行しているのはFacebookです。2015年公開の 「インスタント・アーティクルズ」は大手欧米メディアと連携したニュース配信サービスで、これは、外部サイトへ飛ぶことなく、フィード上にてニュース記事 全文の閲覧を可能にするものです。
2016年1月14日には、ついに日本においても「インスタント・アーティクルズ」の提供が開始され、朝日新聞、産経デジタルほか6社がパートナー メディアとして参画しています。また同日、従来の「いいね!」以外の感情(「超いいね!」「悲しいね」等)が投稿でできる、リアクション機能も導入してい ます。Facebookはさらに、全公開投稿を対象とした検索機能や動画の自動再生機能もリリースし、現在はデジタルアシスタントサービス「M」を開発中 です。
2015年10月にTwitterが発表した人力キュレーション機能「Moments」しかり、機能強化によってユーザーをアプリから離脱させない ようにする動きは2016年もさらに強まっていくでしょう。まだ噂の域を出ていませんが、Re/Codeの記事によれば、2016年Q1の終わり頃に Twitterが140文字から1万文字に文字数制限を変更するのではないかという報道もされています。アプリ機能が充実すればするほど、ひとつのプラッ トフォーム上で行えるユーザーコミュニケーションに広がりが出てくるので、マーケティング担当者は、こうした点を生かした戦略を打ち出していくとよいで しょう。
2016年のソーシャルメディアトレンドを「ユーザー体験の変化」という観点からみると、「情報共有の即時性が向上」「プラットフォーム上で商品を 購入する機会が増加」「機能の強化によりアプリ内でできることが増加」という3つの特徴を挙げることができます。これにより、ソーシャルメディアから拾え る「顧客の声」にも変化が生まれます。各ソーシャルメディアから適切に顧客の声を拾うことで、ユーザーのニーズにより合致したサービスの展開が可能になっ ていくでしょう。
参考