12月1日、ストレスチェックの義務化がスタートしました。このストレスチェックの義務化は、2014年6月に労働安全衛生法の一部が改正されたことによるもので、今後は従業員50人以上の事業所を対象に1年に1回「ストレスチェック」が実施されることになります。
従来は、年に1回の健康診断が会社義務という認識でしたが、今後企業にはより細やかな社員の健康管理が求められる時代が到来しそうです。
実際、独立行政法人経済産業研究所の調査*(企業における従業員のメンタルヘルスの状況と企業業績)によれば、(調査期間がちょうど2008年のリーマンショック後ということもあり、いずれの企業も売上高利益率が大きく減少しているものの)度合いとしては、メンタルヘルス休職者比率が上昇した企業が大きくなっています。つまり社員の健康が企業業績を左右する可能性があるということです。
2004 年から 2007 年にかけてメンタルヘルス休職者比率が上昇した企業とそれ以外の企業に分けて、その後の変化(2007年から2010年)を比較した図。
売上高利益率(「当期利益÷売上高×100」として算出)。
※こちらの図と説明は、独立行政法人経済研究所から引用したものです。
先に述べたとおり、社員の健康は、企業業績にも影響を与える可能性がある重要事項です。また電車やバス、飛行機などの運輸業はもとより、工場などの製造業、建設業など、社員の健康管理が強く求められる業種もあります。しかしながら企業にとって社員の健康管理は欠かせない要素である一方、「目に見えない」体調をどのように管理していくかは非常に難しい課題です。
この課題にITシステムで取り組んだ企業があります。昭和44年に創業された中日臨海バスです。同社は、レンタカー事業を端緒に、送迎バス、貸切・観光バス、コミュニティバス、観光のトータルサポートなど、地域に深く根をおろしながら事業を展開しています。業務の性質上、安全な運行は何よりも優先事項になりますが、400人近い乗務員を紙ベースで管理を行うのは非常に困難を極めていました。そこで乗務員の業務での負担を和らげ、同時に労務管理をしっかり行うためにSalesforceを導入し、煩雑だった労務管理・健康管理を可視化し、驚くほど迅速に各乗務員の管理ができるようになったそうです。
最近話題になっているIoTで、今後はさらに一歩進んだ社員の健康管理も出来ることになりそうです。例えば、腕時計型、メガネ型など多様な機器が発売されてきているウェアラブル端末。この端末を利用することで、心拍数、血圧、血糖値、歩行数などの健康データをリアルタイムで計測することが可能です。
これを法人利用することで、例えば、勤務時間、血圧、睡眠時間、脈拍、血中濃度酸素などを把握し、先に述べた運輸業において、安全な運行管理に活用することもできるのです。
※上記はSalesforceとウェアラブル端末を繋いだ場合のデモ画面イメージ画像です。
一定のしきい値を超えた社員にはアラートをあげて本人に自覚させるとともに、社員を管理する側も同時に社員の健康状態を把握できます。
ストレスチェックのような定期的な設問でのチェックや、医師との面談なども大切ですが、目に見えない健康状態を企業が把握するのは至難のワザです。ITによって定量的に管理することで、生産性に寄与する方法もあるかもしれません。
参考文献:独立行政法人経済研究所 「企業における従業員のメンタルヘルスの状況と企業業績-企業パネルデータを用いた検証-」 黒田祥子(早稲田大学)、山本勲(慶應義塾大学)2014年4月