7 月 24 日、東京・虎ノ門ヒルズフォーラムにおいて、「Salesforce Summer 東京」が開催された。基調講演は、セールスフォース・ドットコムの代表取締役会長 兼 CEO である小出伸一が、「Welcome To The Customer Success Platform ~新しい成功のカタチ~」というタイトルで行った。お客様に登壇頂きながら、どのように成功を実現したのかをご紹介するとともに、現在起こっている市場の 変化に対応するための最新クラウドサービスを紹介した。
弊社 代表取締役会長 兼 CEO 小出伸一
「今回のイベントでは、新しい形で成功につながる、成功体験を皆様と共有したい」--セールスフォース・ドットコムの代表取締役会長 兼 CEO 小出伸一のこんな言葉から、Salesforce Summer 東京は開幕した。お客様の成功を実現するためのプラットフォームとして、以下の最新クラウドサービスに焦点をあてて講演が進められた。
これまでデータ分析業務は、専門部門が担当してきた。データ分析には専門の知識が必要だとされてきたからだ。
Analytics Cloud はこの状況を変える。データデバイドを解消し、現場の担当者がPC、タブレット、モバイルなどの多様なデバイスを使ってデータにアクセスし、分析を行い、 その答えを即業務に活かすことができる。日本でもいよいよ秋から、サービスが本稼働する。その前に 8 月からパイロットサービスがスタートする。
世界で展開するエコシステムには、80 社以上の企業が参加しているが、国内でも 11 社がパートナープログラムに参加している。
このサービスを利用し、大きく成功した企業の例をご紹介しよう。イギリスに本社を置く国際金融グループ、バークレイズのブローカー向け部門では業績 の伸び悩みに大きな悩みを抱えてきた。顧客の声を調査したところ、取引相手であるブローカーのニーズにマッチしていないことが明らかになった。
バークレイズでは Salesforce を導入し、顧客であるブローカーとの関係見直しに着手した。ブローカーがスマートフォンを見れば現在状況を把握することができる仕組みを作り上げた。ブ ローカーは移動中にスマートフォンを見るだけで、最新の状況を把握し、新しい発注に対応するといった業務を短時間に行うことができる。
バークレイズのブローカー担当部門は、この顧客との関係見直しによって、再び業績を上昇させることに成功した。
Pardot は対法人向け営業活動、マーケティング活動を支援し、顧客との関係をより密なものにする。
ひと昔前と比べて、B2B マーケティングの主役が変化した。主役は企業から買い手(顧客)に移っており、2020 年までには営業マンが顧客に会う前に、85% の購入プロセスが終了しているとも予測されている。現在、顧客はソーシャル経由で口コミを入手することも可能だし、ホームページに掲載されているホワイト ペーパーを独自に入手することもできる。こうした過去の営業、マーケティング活動とは全く異なる、現在の状況に合わせた顧客との関係構築を助けるのが Pardot だ。
実際に Pardot を利用するユーザーとして、サイバーエリアリサーチ株式会社の代表取締役社長である山本敬介氏が登場した。サイバーエリアリサーチは静岡県三島市に本社を 置く、IP アドレスを利用した Web マーケティング支援サービスの提供をビジネスの主軸とする IT 企業。「本社は三島だが、顧客の 9 割は東京の会社で、移動にかかるコスト、時間が大きな問題となっていました。国土が広い米国では、中小企業はどのように営業活動をしているのだろう?とい う興味から、昨年の Dreamforce に参加しました。現地で聞いたマーケティングオートメーションに関するセッションは目から鱗で、すぐに Pardot を使ってみたいと思わせるものでした」と山本社長は導入の経緯を説明した。
現在はリードジェネレーション、リードナーチャリングを活用。資料のダウンロードページ 40 フォームを Pardot で作成したところ、ダウンロード数が 2 倍に増加した。メールマガジンも運用を大きく変更し、セグメントごとにメールを発行する体制とした。その結果、リンククリック率が 1% から 20% 台へと大幅に上昇した。
最近開始したリードのスコアリングでは、ページごとにポイントを設け、あるポイント数を越えた閲覧者にはオンラインセミナーを勧めるといった活用で成果をおさめている。
サイバーエリアリサーチ 代表取締役社長 山本敬介氏
Salesforce1 Lightning は、アイデアを即アプリとすることができる開発ツールだ。従来のプラットォームを利用した場合、モバイルアプリを開発するのに相当な時間がかかっていた。 しかし Lightning を使えば、Salesforce のエコシステム AppExchange 上にある、多様なコンポーネントを組み合わせることで、迅速にアプリを開発することが可能になり、コスト、手間が大幅に減少することになる。
Lightning を活用するユーザーとして、株式会社チームスピリット 代表取締役 CEO 荻島浩司氏が登場した。チームスピリットは勤怠管理、経費精算、工数登録といったアプリで定評があり、Salesforce プラットフォームでも高い人気を得ている。
荻島社長は Lightning には二つのポイントがあり、これがこれまでにはないビジネスチャンスをもたらすと話した。
「一つ目のポイントとなるのがスピードです。我々も他社と連携し、エコシステムを構築していくことを目指しています。この他社との連携を短期間に実 現できるスピードを実現することができる点は、大きな強みといえるでしょう。もう一つのポイントはモバイルです。端末の数が多いモバイルデバイスに対応す るためには、本当の意味でのマルチデバイス化が必須になります。これを実現するのが Lightning です」
チームスピリット 代表取締役 CEO 荻島浩司氏
新しい IT の方向性とされている IoT だが、Salesforce プラットフォームを活用することで、他社にはない強みがある IoT を構築することができる。株式会社セールスフォース・ドットコムの取締役社長 兼 COO である川原均が登壇し、Salesforce が目指す IoT の姿について説明した。
川原は、「当社では IoT=Internet of Things(モノのインターネット)ではなく、モノの先にいるお客様につながっていくことが重要との観点から、IoC=Internet of Customers(インターネット・オブ・カスタマー)と表現している」とモノだけではなく、顧客につながる重要性を強調した。
その代表として登壇したのは、ネスレ日本株式会社のチーフ・マーケティング・オフィサー 常務執行役員 本部長である石橋昌文氏。ネスレは近年、大きくビジネスモデル変更に舵を切った。コーヒーマシンを無料貸与し、アンバサダーとして企業に会員になってもら う。コーヒーマシンを持つアンバサダーにコーヒーを eCommerce 上で販売していくことで、従来の製品販売とは異なる新しいバリュー提供が実現した。現在、会員数は 18 万人まで拡大しているという。
その延長としてスタートしたのが、「One Nestlé」だ。18 万の会員を対象にビーコンを配布し、バリスタマシンに取り付けてもらっている。さらにアプリを提供し、会員とコミュニケーションを取る。ビーコンからの情 報でコーヒーが切れる時期が近いなどを把握し、アプリを通して買い換えを促していく。今後は家庭に配布した 500 万台のマシンや、2,000 店のサテライト店舗、店頭に置いたロボットペッパーくん、コンシューマデータベース、これらをクラウド上で連携し、多様なカスタマイズされたコミュニケー ションを実現していく。
「IoT を活用して、Nestlé へのエンゲージメントを、マスコミュニケーションではなく、個々のコミュニケーションを通じて高めていきたい」と石橋 CMO は話す。
左、取締役社長 兼 COO 川原均
右、ネスレ日本 チーフ・マーケティング・オフィサー 常務執行役員 本部長 石橋昌文氏
このように IoC 実現を目指す企業は、他にも登場している。産業用プリンタ、ラベル、RFID タグのトップメーカーであるサトーグループでは、産業用プリンタにオンラインサービスをセットして提供する「Sato Online Service」を提供している。
登壇した、サトーホールディングス株式会社 執行役員 最高マーケティング責任者(CMO)で、一般社団法人 CRM協議会 理事 グローバル部会長でもある小玉昌央氏は、「お客様の中には 24 時間体制でお仕事をされているところもあります。仕事をされている最中に、迷惑をかけることなく、どうサポートするのかを検討した結果、トラブルを未然に 防ぐためのサービスを展開させることにしました。初めての試みだけに、安定して稼働するプラットフォームが必要だとリサーチした結果、 Salesforce に行き着きました。またこのサービスは今後グローバルに展開していくことを考え、かつグローバルではあるものの(投資は)小さく始めたいという我々のニー ズには、まさにクラウドが合致していたのです」と小玉氏は話す。
今後は周辺機器などにもつなげ、現場そのものを見える化し、正確なスモールデータを収集できる体制づくりを進めていくのだという。
サトーホールディングス株式会社 執行役員 最高マーケティング責任者(CMO)
一般社団法人 CRM協議会 理事 グローバル部会長 小玉昌央氏
最後に川原はこう締めくくった。「皆様の IoC プロジェクトを実現するために、弊社の IoC のパートナーと企業とともに一丸となって支援していきたいと思います」