IoT 市場が大きく成長を見せる中で、現在小売業界を中心に特に注目を集めている技術があります。それが Beacon(ビーコン)技術と呼ばれる、低消費電力の近距離無線技術「Bluetooth Low Energy」(BLE)を利用した位置特定技術です。GPS とは異なり、電波が届かない商業施設などのなかでも、人やモノの位置を把握することが可能です。従来からあった技術ですが、Beacon が近年注目されるきっかけとなったのが、Apple 社の「iBeacon」です。iOS7 から正式サポートしたことで注目されている同社の Beacon 技術は、下記の特徴を持っています。
・Bluetooth Low Energy(BLE)という技術を利用
・ユーザーの位置を数メートル単位で把握
・顧客の持つデバイスに対してこちら側から能動的に情報を提供する「プッシュ通知」
なお 2015 年に登場する次期主力 OS である Windows 10 では、IoT をサポートする新エディション Windows 10 IoT(従来の Windows Embedded の後継)が登場する予定です。
Beacon を使えば、顧客の持つスマートフォンなどのデバイスを通じて、それぞれの顧客に直接・自動でコンタクトがとれるようになります。その上に、「顧客が外から売り場を覗いた際」「顧客が売り場に足を踏み入れた際」「顧客が特定の商品に近づいた際」など、顧客の位置情報に応じて顧客のデバイスへのプッシュ通知の内容を変えたりすることが簡単にできるようになるため、店舗を訪れた顧客ごとに適切なサービスを提供することができます。また後述でも例をあげたとおり、地域や病院などでもこの技術の利用が検討されているようです。
イギリスの小売店では、マネキンの中に通信デバイスを導入し、顧客がマネキンに近づくとプッシュ通知により顧客に商品情報を送る、という試みを行っています。これにより、たとえ顧客が他店に行こうとしている最中でも、自店の近くを通ってくれれば顧客にリーチできるようになります。加えて、プッシュ通知によって顧客に表示される情報は、店内の商品の配置のみではなく EC サイトの情報も含んでいるため、自社の EC サイトへの誘導も行うことができます。つまり、閉店後でも店舗のウィンドウにいるマネキンたちは、顧客に対して EC サイト上でのショッピングを促すことができます。
アパレルと最新の IT 技術は一見するとお互いに関連性が無いように見えますが、うまく活用することで集客の可能性を広げたり、閉店後にも顧客が買い物できる仕組みを用意したりすることができるのです。
2014 年 5 月、淡路島の兵庫県洲本市では、Beacon 技術を利用した地域活性化プロジェクトをスタートさせました。旅行者の現在地の情報を、Beacon 技術を用いて取得し、それに基づいたルート案内機能や、特定のお店に近づいた際に自動でクーポンを配布するなど、淡路島での観光をより快適に楽しくするためのサービスを提供しています。また洲本市内での「お宝さがし」イベントを開催するなど、これまでにないイベントを提供することができるようになりました。これまでは観光情報の案内は、チラシや Web サイトなどで情報を列挙することしかできませんでしたが、プッシュ通知によって観光客は「思いもよらぬ発見」を楽しめるようになります。またお宝さがしイベントのような町全体をフィールドとしたイベントも簡単に実施することができるようになります。
以上のように、Beacon はメールやクーポンなどのプッシュ通知に応用する例が多かったものの、最近では、顧客情報と連携させ、リアル店舗のサービスの向上に取り組む方法も模索されています。
当該顧客が、最後にいつ来店し、過去にどんな目的を持って来店してきたかをデータとして蓄積しておけば、サービスの提案をすることができます。顧客が入店すると、店員が装着したウェアラブル端末に顧客情報と提案とが瞬時に表示され、店員は上質なサービスを提供することができるのです。また顧客が例え同系列の違う店舗を訪れた時にも、店舗間でデータを共有していれば同様のサービスをどこでも受けることができます。
Salesforce では、強力な顧客情報管理機能はもちろんのこと、店頭の店員がスマートに情報をチェックできる Apple Watch 上のソリューションも提供しています。
http://www.salesforce.com/jp/applewatch/
これまで蓄積してきた顧客情報と組み合わせて利用することで、顧客体験をより上質なものへと改良し、顧客エンゲーゲメントをさらに高めることができるのです。
参照文献: