スマートワークで優秀な「人財」を確保する方法

日経平均株価が2000年4月以来の高値になるな ど、順調な推移を続ける2015年の日本経済。新卒採用、転職市場ともに活況を呈しており、ここ数年で最も求人倍率が高くなっています。景気の良いニュー スが飛び込む一方で、経営者にとっては優秀な「人財」をどのように確保、雇用維持していくかというのが悩みの種です。このたび発表された「働きがいのある 会社」ランキングから、魅力的な会社の要素をひも解き、あわせて昨今注目されている「スマートワーク」という考え方をご紹介いたします。
2015年3月現在

2015年「働きがいのある会社」ランキング

20年以上にわたって世界40カ国以上で、「働きがいのある会社」を調査・表彰するGreat Place to Workの日本支部 であるGreat Place to Work Institute Japanが、2015年2月、「働きがいのある会社」ランキングを発表しました。

「働きがいのある会社」ランキング調査の特徴としては、外部の人やその会社の制度の充実度で判断するのではなく、会社への調査のほか、実際に働いている従 業員からのアンケート結果を反映するという手法が採られています。調査項目は働きがいに関する5項目(「信用」、「尊敬」、「誇り」、「連帯感」、「公 正」)に沿って行われ、特に核となるのが従業員と企業の「信頼」で、これが組織のパフォーマンスを高める上で不可欠であるとしています。

「働きがいのある会社」ランキング(2015年版、日本国内)の上位には、IT企業の名前が目立ちます。従業員1,000人以上の部門では1位 Googleジャパン、2位日本マイクロソフト、3位アメリカン・エキスプレス、といった結果です。また従業員1,000人未満の部門においても、セール スフォース・ドットコムをはじめIT関連企業がライクインしています( セールスフォース・ドットコム、2015年「日本における働きがいのある会社」ランキングに選出)。
これらの「働きがいのある会社」には、どのような共通点が考えられるでしょうか。

テクノロジーが働くモチベーションを向上させる

ここで「働きがいのある会社」ランキング1位のGoogleが以前実施した興味深いアンケート結果をご紹介しましょう。25歳から49歳の女性のみ を対象としたアンケート結果ですが、働く場所と時間をより柔軟にすることで、働きやすい環境が得られることをアンケート結果が示唆しています。この調査に よると、女性が働き続けることを最も阻害する要因が「場所に関する制限(通勤など)」と「時間に関する制限(子育てなど)」であり、キャリアや賃金、待遇 などの不満を上回っています。また同調査によって、会社制度(時短勤務やフレックス制度など)に加えて、テクノロジーを活用した柔軟なワークスタイル(社 外からのメール送受信、ファイル共有、テレビ会議など)を提供することが勤務意欲を高めることが判明しています。

このような経緯から、現在企業から注目を集めているのがスマートワークという考え方です。スマートワークとはICTを活用して、働く場所や時間にとらわれないワークスタイルのことで、「テレワーク」という言葉とも近い概念です。

労働の価値観を変える、スマートワークという試金石

リクルートスタッフィングでは、2013年1月に生産性向上を目的に「スマートワークプロジェクト」を発足させ、その結果、業務効率向上だけでな く、生産性向上に関する意識や、家庭との両立に関する不安も改善したとのことです。同社では、女性の管理職比率が39.5%に達しており(2014年4月 1日時点)、スマートワークが女性登用に大きく貢献していることも見て取れます。厚生労働省が発表した平成25年度雇用均等調査では、管理職(課長相当職 以上、役員を含む)の女性の割合は平均で6.6%であり、同社はこれをはるかに上回っています。

リクルートワークス研究所の大久保幸夫所長も、「無駄に長時間働くことを是とする価値観を改め、代わりにスマートワーク、つまり働いた時間ではなく生産性を追求する方向に変えていかなければなりません」(ダイヤモンド・オンライン)と述べています。

スマートワークを導入することで業績を可視化させる

スマートワークを導入するにあたり、主に次のような懸念点が挙げられます。
・ 業務管理方法、業績評価方法の問題
・ セキュリティへの不安
・ 社員間のコミュニケーション

セキュリティや社員間へのコミュニケーションについては、クラウドコンピューティングなど様々なテクノロジーツールが最近では手軽に導入できるよう になりました。また営業の進捗管理や、月間売り上げ目標などの数値管理も、SaaS型CRMなどを導入することで場所を選ばずリアルタイムで情報を管理す ることができます。

他社に先駆けてスマートワークを実践しているセールスフォース・ドットコムの人事部門Employee Success のバイスプレジデント石井早苗は、導入にあたっての留意点を次のように語っています。「スマートワークを導入するには、仕事の効率を支えるITの導入はも ちろんですが、社員互いの信頼醸成が必要です。信頼を確保するために弊社では透明性を非常に重視しています。たとえば、今年度の各自目標や、目標達成方 法、業績評価指標をお互い自由に閲覧できる仕組みになっています」

「働きがいのある会社」のランクインした企業は、自分たちがよく知るITを有効に活用し、スマートワークを実践しているからこそ、「働きがいのある会社」として選ばれているとも言えるのではないでしょうか。

参考:

  • 日本企業平均の約6倍!「スマートワーク」の挑戦 女性管理職40%企業の“秘策” (web R25/篠塚裕也)
  • リクルートグループの女性管理職比率を発表 ‐グループ全体は19.0%、グループ内最高比率のリクルートスタッフィングは39.5%‐(株式会社リクルートホールディングス、2014年6月16日発表)
  • 【2015年の働き方】「無駄な長時間勤務」から「スマートワーク」へ 変化のカギとなるのは個人の意識改革――大久保幸夫 リクルートワークス研究所長に聞く(ダイヤモンド・オンライン)
  • Great Place To Work(R)が定義する「働きがいのある会社」とは?
  • 2015年発表「働きがいのある会社」ランキング(参加240社)
  • 働く場所と時間を柔軟にする「職場の制度」と「テクノロジー」両方を活用して働く女性はより幸せになる(Google)