まず、代表取締役会長兼CEOの小出伸一が登場。「セールスフォース・ドットコムは、15年間に渡り、新たな価値を通じてイノベーションを提供し、 お客様の成長と成功を実現するための企業努力をしてきた」と前置きし、今後の日本市場に対する3つのコミットメントを宣言。「イノベーションの継続」、 「信頼」、「IT企業への投資」である。
「イノベーション」では、新サービスのAnalytics Cloud、すばやくモバイルアプリを開発することができるSalesforce 1 Lightningといった新たな製品群に触れながら、「私たちは新たな市場を開拓していく役割を持っており、それに向けて新たな製品の提供や機能拡張を 行ってきた。今後も、こうしたイノベーションを継続していく」と述べた。
「信頼」という点では、日本国内だけで、データをバックアップできる2カ所目のデータセンターを国内に設置することを発表、また「IT企業への投資」とし ては、Salesforce Venturesとしての投資案件が国内で20社となり、日本のベンチャー企業に対しての積極投資を印象づけた。
続けて登壇したのが、米セールスフォース・ドットコムの会長兼CEOのマーク・ベニオフだ。まずベニオフが触れたことは、前社長であり、現相談役の 宇陀栄次に対する感謝の意だった。「10年前に、宇陀と初めて会った。当時は、日本にデータセンターを持つことは考えもしなかったし、政府や日本の大企業 が我々のお客様になることも考えられないことだった。しかし、この10年間で、日本の社会に対して大きな貢献ができた。数10億ドルの企業にもなった。東 日本大震災の際には、トモダチ作戦にも取り組んだ。そして新たな経営陣も探してくれた。宇陀には本当に感謝している。社長として、素晴らしい会社を作り、 お客様との素晴らしい関係を築いてもらった」と語った。日本語で「ありがとう」と深く頭を下げて感謝を示した。
「いまほどデータが存在した時代はない。10年先には、いまこそがデータ革命の元年といわれるようになるだろう。現在あるデータの90%が直近2年 に作られているのだ。」と指摘するとともに、「クラウド、モバイル、ソーシャル、データという4つの革命が同時に起こっている。この4つのメガトレンドに よって、自分の会社がどう変わっていくのか、ビジネスの仕方はどう変わるのかということを考えてほしい。」と問いかけた。
「ある調査では、顧客とのエンゲージメントを通じて、顧客あたりの売り上げが23%増加したという実績がでている。エンゲージメントが効果的なのは実証さ れている。それを実現するのは簡単である。新たな技術を受け入れ、接続するためのビジョンを作り、顧客中心の会社になり、顧客中心の経営者になることだ。 カスタマーカンパニーとして顧客に目を向けなくてはならない。最も重要なステイクホルダーは、株主でも、パートナーでもなく、顧客である」と述べ、「顧客 とつながった体験を実現するために、セールスフォース・ドットコムは、Customer Success Platformを構築している。これによって、セールス、マーケティング、コミュニティ、アナリティクス、アプリを統合した形で提供している。これらを 活用して、みなさんは、クラウドの会社になり、ソフトウェアの会社になり、データベースの会社、データサイエンスの会社にならなくてはならない。そして、 そのためのスキルを持たなくてはならない」などと語った。
「トヨタもクラウドのクルマを作っている。コカ・コーラもクラウドの会社である。いまやすべての企業がクラウドの会社を目指している。これこそが未来であ り、最も重要な変化である。業種は関係なく、例外はない。CEOから第一線の社員まで、企業のすべての人にこの変化を理解してもらい、全員が変わっていか なくてはならない」と位置づけてみせた。
続けて登壇したセールスフォース・ドットコムの社長兼COOである川原均は、日本で初めてAnalytics Cloudを公開。「多くの分析ツールは、デザインが20年前に作られたものであり、ネットワーク、ソーシャル、モバイルに対応したものではない。そし て、限定された人たちが使うものとなっている。現在の革命が、顧客の目の前で変化が起こっていることを考えれば、営業やマーケティング、サポート担当者な どのすべての人が活用できるものでなくてはならない。そこに向けてセールスフォース・ドットコムが発表したのがAnalytics Cloudである」と切り出し、Analytics Cloudを先行ユーザーとして導入したGEキャピタルの事例をもとにしたデモンストレーションを行った。
GEキャピタルでは、Analytics Cloudによって、顧客の状況を分析し、モバイル端末を駆使しながら、金融サービスの提案を行っているという。
この事例を捉えてベニオフは、「Analytics Cloudは、最初からモバイル、ソーシャル、クラウドを意識して作られたものであり、データサイエンスとしての利用をもとに開発したものである」と、Analytics Cloudの特徴を強調した。
さらに、川原は、Sales Cloudが、セールスインテリジェンスを高め、融合性を高めた新時代のCRMであることや、Marketing Cloudが、カスタマージャーニーを可視化し、マーケティング手法を再構築することに最適であること、Service Cloudが、スピーディーなサポート、スマートなサービスを実現し、コンタクトセンターを変革できること、Community Cloudが、顧客、パートナー、社員と連携し、ビジネスを拡大するツールであることをそれぞれ紹介。また、Sales Cloud、Marketing Cloud、Service Cloud、Community Cloudが相互に連携することに触れながら、「今後は、セールス、サービス、マーケティングの境界がなくなることになる」と、これからの企業に求められ る姿を提示してみせた。
ここでは、損保ジャパンの事例を通じて、50万人の営業担当者や代理店が、顧客の情報を確認しながら最適な保険の提案を行ったり、保険加入者が怪我をした 際に、モバイル端末を活用することで、迅速に現場に駆けつけることができるサービスなどをデモンストレーション。マイクロソフトとの提携によって実現した Excelを活用した見積書作成の様子も実演してみせた。
ここで、損保ジャパン日本興亜ホールディングスの櫻田謙悟グループCEO 取締役社長が登場。「保険契約を獲得し、保険金を支払うだけでは、保険ビジネスは縮小していくのは明らかだ。そこで、差別化が必要である。保険契約者は、 事故があったときに保険金が支払われるというだけでなく、安心、安全、健康でありたいと考えている。そこに対して、サービスができないかといったことを考 えている」としたほか、「差別化の最大の鍵は人間である。だが、最もコストがかかるのは人である。その経営資源を最も効果的なところに使うことが必要だ。 人の強みは、正確であり、速いことであり、記憶していることである。顔を見ただけで、瞬時にその顧客のすべての情報がよみがえってくる。人で差別化するた めにはITが必要。そこにセールスフォースを活用している」と述べた。
ベニオフは、「損保ジャパンは、会社として将来のビジョンを持ち変わるということにCEO自らが取り組んでいる。みなさんは、そうした準備はできているのか」と、再び会場の参加者に呼びかけた。
講演では三度、川原が登壇し、モバイルアプリを開発するためのSalesforce 1 Lightningを紹介。「医療分野では、クラウド利用、新たなデバイスや技術との連携、モバイル活用という、3つの取り組みが行われている。これを支 えるプラットフォームを提供しているのがセールスフォース・ドットコムである。そのためのUI、アプリ、API、ツールを取り揃えている」とし、 Salesforce 1 Lightningが、コンポーネント、フレームワーク、ビルダーを提供していることが特徴であること、モバイルとの連携を強化していること、ひとつのイ ンタフェースであらゆるデバイスに対応できること、Salesforce 1 Lightningを通じてあらゆるデータを活用できることなどに触れ、「Salesforce 1 Lightningは、その名の通り、稲妻のように速くアプリを開発できる。セールスフォースは、他のプラットフォームに比べて、521%も生産性が高い といわれるが、Salesforce 1 Lightningを活用することで、さらに速く開発ができる。スピーディーに、思ったように、すぐに使えるアプリを開発できることをコンセプトに提供す るものである」とした。
具体的な事例として、コニカミノルタでの活用例をあげ、高齢化に伴い、在宅医療や遠隔治療が増加する医療分野において、モバイルアプリを活用する様子をデモンストレーションしてみせた。
講演の最後にベニオフは、「セールスフォース・ドットコムは、企業と顧客との橋渡しを支援しなくてはならないと考えている。Salesforce Customer Success Platformによって提供される、セールス、サービス、マーケティング、アナリティクス、コミュニティのクラウドサービスを活用することでこれが実現 できる。そして、いまやモバイルやソーシャル、クラウド、データサイエンスにより、社会が変化している。我々は、企業の変革を手伝う役割を果たしていきた い。これからもみなさんと一緒に仕事をし、すばらしい未来の世界を実現したい」と締めくくった。