CIO と CMO の連携がカギ! 迅速な顧客対応を実現する方法

IT部門とマーケティング部門の間に立ちはだかる“壁”

モバイルデバイスを利用して時間や場所を問わずにインターネットを利用し、ソーシャルメディアをコミュニケーションツールとして活用することが当た り前になった現在、企業のマーケティング活動におけるITの重要性がこれまで以上に高まっています。そこで大きなポイントとなるのが、IT部門とマーケ ティング部門の密接な連携です。IT部門が必要なシステムを構築し、マーケティング部門がそれを利用してインターネット上でマーケティング施策を展開する ためには、両者がお互いを理解し、緊密に連携しながら取り組みを進める必要があるからです。ただ、アクセンチュアが2012年に調査した結果を見ると、両 部門の連携が十分ではない様子が見えてきます。

この調査では、ITを統括する立場であるCIO(Chief Information Office:最高情報責任者)と、マーケティングの責任者であるCMO(Chief Marketing Officer:最高マーケティング責任者)のそれぞれに対し、両部門の連携が必要かどうかを尋ねています。この問いに「連携が必要である」と回答した CIOは77%に達しましたが、CMOは56%に過ぎませんでした。つまり4割以上のマーケティング責任者が、IT部門との連携は不要だと考えているので す。

このような結果になった理由の1つとして、マーケティング部門の要求にIT部門が十分に応えられていないことが考えられます。IT部門にシステム開発を依頼しても、自分たちの要求を満たしたシステムにはならないと、マーケティング部門が感じているというわけです。

ただ、IT部門がこれまで主に開発してきたのは会計や生産管理、受発注処理などのための基幹系システム、また、グループウェアやデータウェアハウス といった情報系システムが主で、フロント系のマーケティングに利用するシステムの開発が求められるようになったのはここ最近です。このため、システム開発 において求められる業務知識や経験、ノウハウの蓄積が不十分で、マーケティング部門の要求に応え切れていないというのがIT部門の現状ではないでしょう か。

一方、外部ではデジタル環境が進み、デジタルを駆使したマーケティングに必要なソリューションが数多く提供されてきています。顧客の求めに応じてシ ステムを開発するインテグレーターも多数存在します。自分たちが求めるものを社内で開発することが難しければ、マーケティング部門が自ら外部のベンダーや インテグレーターに開発を依頼するというのは自然な流れでしょう。

実際、IBMの調査によればCIOが管理するIT予算が横ばいである一方、CMOのIT予算は拡大傾向にあるとしています。この結果は、マーケティングが科学的になっており、ITで解決するデジタルマーケティングの市場の拡大を示唆しています。

連携が生み出すスピード感

マーケティングの世界が驚異的なスピードで変化していることを考えると、このようなCIOとCMOの連携不足は大きな障壁となる可能性があります。

現在では、インターネット上にも顧客に関する膨大なデータが満ちあふれています。このようなビッグデータを適切に分析し、それぞれの顧客に合わせた パーソナライズされた情報を届けることが重要になってきているのです。またスマートフォンやタブレット端末といったモバイルデバイスが普及したことから、 モバイル向けのWebサイトやアプリをマーケティングプラットフォームとして利用することで、顧客との関係の強化に成功している企業も少なくありません。

このようにマーケティング活動が複雑化している状況の中、CIOとCMOの連携が不十分では必要な施策を適切なタイミングで展開することができず、顧客に接することができる多くの機会を逃すことにもつながりかねないでしょう。これはビジネスにおいて大きな損失です。

CIOとCMOが密接に連携していれば、新たに生まれたチャンスを積極的に活かすことが可能になります。その一例として挙げられるのが、ビッグデー タの活用です。顧客の購買履歴やサービス利用履歴、ソーシャルメディアに投稿したメッセージ、問い合わせ内容などといった膨大なデータを既存のITシステ ムとどのように連携できるか、また分析できるかを検討し、そこで得られた知見をマーケティング部門と共有して新たな施策を展開するといった流れです。この ような技術の導入を外部に依存している企業と、内部でIT部門とマーケティング部門が緊密に連携している企業では、成果を生み出すスピードに大きな違いが 出てくるのは当然だと言えるでしょう。

部門の壁を乗り越える秘策とは

このように、これからのマーケティング活動を考える上でマーケティング部門とIT部門の連携は必要不可欠ですが、CMOが求める業務知識や経験、ノ ウハウがIT部門になければ密な関係を築くことができません。そのときに助けとなるのが、企業のマーケティング活動を支える仕組みを備えたサービスの利用 です。

さてどのような仕組みが必要でしょうか。一つは顧客の視点で考える仕組みです。たとえばCRM(顧客管理)サービスを利用すれば、その課題を克服す ることが可能でしょう。また、その運用を通してCIOとCMOのコミュニケーションが活発になれば、IT部門がマーケティングについての理解を深めるきっ かけとなるのではないでしょうか。

メールマーケティングの結果がどうだったのか、ソーシャルメディア上で顧客は何をつぶやいているのか、自社Webサイトにはいつ訪問しているか、あ るいは展開しているECサイトで顧客はどのように利用しているのか。そのような、顧客に関する行動履歴をCRMに蓄積していくことによって、さまざまな データが新しい意味を持ち始めます。これらのデータをベースにして、IT部門とマーケティング部門がコミュニケーションを図れば、協調しながら次の一手を 検討することができるでしょう。

このようなサービスも、クラウドサービスならすぐに展開可能です。マーケティングを取り巻く環境は急速に変化しています。自社でシステムを構築・運 用するオンプレミス環境では、要件の移り変わりへの迅速な対応が困難ですが、自社でシステムを持つ必要がないクラウド環境であれば、トレンド変化に伴う要 件変更にも容易に対応することが可能です。

顧客の変化にタイムリーに対応できる体制を整える

インターネットの普及以降、顧客の購買活動は大きく様変わりしてきました。とくに最近は、モバイルデバイスを使ってECサイトでモノを買うことが当 たり前になり、その選定においては第三者がソーシャルメディアに投稿した意見やレビューが重要な位置を占めるようになっています。また、企業からの情報提 供に対する要求も変わっています。これまでのように、画一化されたマス向けのメッセージでは十分な効果が期待できず、それぞれの顧客の趣味嗜好に合わせ た、パーソナライズされたメッセージが求められるようになりました。

企業はこうした変化に対応しているでしょうか。大きな成果を生み出している企業と、そのような対応が十分に図れていない企業との差が拡大しているのが現状です。顧客の変化に順応できない企業では、賢い顧客は離れていってしまうでしょう。

現在のマーケティング活動に必要となるシステムは用意されていますか? それはIT部門のもつシステムと連携していますか? 多くの企業がバラバラ かも知れませんが、今すぐに用意しましょう。CIOとCMOの連携によってそれが実現できれば、ビジネスの拡大に向けて、大きく前進することができるで しょう。
モバイル・ソーシャル時代の顧客に“刺さる”マーケティングをタイムリーに行っていくことが何よりも重要なのです。

参考:

  • The CMO-CIO disconnect(Accenture)
  • The CMO+CIO Leadership Exchange(IBM)
  • MindStream exec: Mobile has profound impact on CMO, CIO relationship(Mobile Marketer)
  • The business value of CIO and CMO partnerships(TechTarget)
  • Strong CIO/CMO alliance paves way for data-driven marketing strategy(TechTarget)