Salesforce1 World Tour Tokyo

基調講演では、顧客とつながる企業となるためのSalesforceの活用例や、昨年新たに登場した Salesforce1によるモバイルでの顧客との新しい関係をどう作っていくのかを紹介した。そしてデジタルマーケティングのためのプラットフォームで ある「Salesforce ExactTarget_Marketing_Cloud」が日本で初めて紹介された。これは、オフラインからEメール、Web、SNSなど様々な顧客と の接点を繋ぐ、顧客の行動を把握するカスタマージャーニーを支援するためのプラットフォームとなっている。
株式会社セールスフォース・ドットコム 代表取締役会長兼CEOである小出 伸一、取締役社長兼COOである川原均、Salesforce ExactTarget Marketing Cloud SVP & ジェネラルマネージャーであるリー・ホークスレイと多くのゲストによって行われた基調講演を紹介する。

明治安田生命など新規事例が示す、顧客がつながることで生まれる
企業の成功

基調講演のスピーカーとして最初に登場したのは、代表取締役会長兼CEOである小出 伸一だ。
「ICT業界において創業以来、着実に業績を伸ばしているのは当社をおいて他にない。ただし、当社のミッションは売上を伸ばして行くことだけではない。常に革命を起こしていくことが重要なミッションとなっている。」
イノベーションと共に創業以来続けているのが社会貢献活動だ。 Salesforce.comが創業以来取り組んできた社会貢献活動「1/1/1モデル」は、就業時間、株式、製品のそれぞれ1%を社会貢献活動に充てるというもの。
スペシャルゲストとして、日本で支援を行った認定NPO法人カタリバの代表理事である今村久美氏が登場。高校生が将来を考える教育を行っている、カタリバの取り組みが紹介された。
現在、セールスフォース・ドットコム日本法人は、新しい目標をスタートさせた。
「売上1000億円、社員数2000人を目標としていく。当社はIDC Japanの調査ではPaaS市場でナンバー1シェア、ガートナーの調査では世界 のCRMソフトウェア市場でナンバー1、国内の外資系コーポレートベンチャーキャピタルとしても16社を超える企業に投資し、ナンバー1という評価を得て いる。日本のマーケットにコミットし、日本のお客様と共に成長していくことをコミットしたい」と小出氏は強調した。

新規顧客として、明治安田生命保険相互会社、丸紅株式会社、富士通株式会社の3社の事例を紹介し、会場には明治安田生命保険相互会社の専務執行役  徳岡浩氏が登場した。 「2011年3月11日の東日本大震災に直面し、61万人のお客様の安否確認をどのように行うのか?という課題に直面した。現場が 混乱している中で、安否確認記録をどう残していくのか、素早い対応が可能となる手法を求めていたところ、Salesforceに出会った。お客様データを どう管理していくべきなのか話し合っていた時に、ベテラン社員が自分でプロトタイプとなる仕組みを作りあげた。我々が求めていたスピードとイノベーション を具現化したのが、Salesforceだった」
現在、明治安田生命保険は3か年計画として、「明治安田NEXTチャレンジプログラム」を進めている。このプログラムは、中期経営計画と「感動実現プロ ジェクト」をミックスし、新たなブランド戦略、成長戦略として、モバイルと社内SNSの連動から始まり、今後様々な業務アプリケーションを Salesforce上で構築することを計画している。
「強く感じているのは、対面でお客様と接していることの強さ。アフターフォローこそ、我々の価値だと考える。営業スタッフにタブレット端末を配布し、お客 様と対面する際、Salesforce上にあるお客様の情報を見ながら面談するスタイルをとっている。ご家族を含めて30年、40年間、お客様を支援して いく体制を作り上げていきたい」と徳岡氏は締めくくった。

Salesforce1でさらに高いレベルの顧客サービスへ進化させる

続けて、取締役社長兼COO(最高執行責任者)の川原均が登場し、Salesforce1を活用した新しい事例や取り組みの紹介を行った。
「全てがお客様につながる、Internet of Customersの時代が訪れようとしている。その結果、お客様に対するサービスやマーケティング活動は大幅に変わる」
従来型のマーケティング活動は、性別や年齢という大まかな顧客セグメントと購買情報に合わせ、新しい商品の購買を促すものだった。しかし、今はその顧客の 趣味・嗜好など、ソーシャルや顧客にひもづくあらゆるデータから、一人一人にあわせたマーケティングができるようになる。
「購入しているものを見て、こういう買い物をする人は奥さんをないがしろにしている!奥さんのために、花束を買いませんか?というような新しい提案が生まれる、One to Oneマーケティングが必要になるのではないか」
また、例えば自動車事故を起こしてしまった場合でも、「車を販売したディーラー、自動車保険会社、修理を行う事業者が一体になって私をサポートしてくれる ようなサービスを私は望んでいる。今後、企業の垣根を越え、一体になって顧客のことを考えたサポートができる会社か否かで、大きな差が生まれるのではない か」と本当の意味で顧客を考えたサポートが求められていると指摘した。
そして、「それを実現するためにはどういうプラットフォームが必要となるのか?それを考えて登場したのがSalesforce1だ」と強調した。
Salesforce1はiOS、Androidなど複数OSに対応したモバイルアプリケーションと、それと連携するプラットフォームであり、短期間で業務アプリケーションをモバイル化することが可能である。
Salesforce1の対応アプリケーションはすでに多数存在し、勤怠管理の「TeamSpirit」、非構造データ活用につなげることができる「Evernote」などがある。
導入事例としても、軽井沢の有料道路「白糸ハイランドウェイ」で使われている、有料道路の徴収アプリ、コニカミノルタが導入した医師、患者、看護師を連携 するアプリケーションなどが存在する。いずれもモバイルアプリケーションとして現場で使え、組織内でリアルタイムで知として共有される。生産性を高め、か つお客様へ高いレベルのサービスを提供している。
会場にはアプリケーション開発会社である、株式会社オークニーの代表取締役社長である森亮氏が登場。「1年間でお客様の数は15倍に増加した。 Salesforce1のアプリケーション連携機能が、我々が課題としていた顧客にとってメリットを生む地図情報システムを実現する」と説明した。
また、Salesforce1 Sales Cloud、Salesforce1 Service Cloud、Salesforce1 Platformは、調査会社からも高い評価を得ている。Salesforce1を利用することで、売上は28%増、顧客満足度は37%増、ビジネス展開 スピードは58%あがったという結果も出ている。
Salesforce1の導入先の一つである、株式会社リクルート 住まいカンパニーの執行役員 統括部長の川本広二氏もゲストとして登場した。リクルー ト 住まいカンパニーでは顧客支援の質をあげるために4年前にコールセンターを起ち上げ、その進捗管理のための情報基盤としてSalesforceを導 入。「一番大きな変化は訪問営業を行う担当者とコールセンターがリアルタイムに情報を共有出来る。顧客のところに営業担当者が訪れ、その結果をスマート フォンから書き込むと、コールセンターが情報を共有し、的確なフォローができる体制が整った」

Salesforce ExactTarget Marketing Cloud

最後のコーナーでは、One to One デジタルマーケティングプラットフォームである「Salesforce ExactTarget Marketing Cloud」について、Salesforce ExactTarget Marketing Cloud SVP & ジェネラルマネージャーであるリー・ホークスレイが説明を行った。
「11か月前、ExactTarget社がSalesforce.comの一員となった。このサービスを見たマーク・ベニオフは、『この製品を絶対に日本に持っていかなければならない!!』と叫んだ」というエピソードを紹介した。
続けて、「顧客のインターネットは現在の状況を変える。対面からオンラインまで、シームレスにつながっていくことで、顧客と企業の1対1体験を支援する マーケティング活動が行えるようになる。Salesforce ExactTarget Marketing Cloudは、メール、モバイル、Web、ソーシャルと全ての世界の連携を可能としていく」とマーケティングの世界を劇的に変えるのが Salesforce ExactTarget Marketing Cloudだとアピールした。
現在、ホークスレイはSalesforce1 World Tourで全世界を回っている。
「おかげで、世界中の優秀なマーケターと話す機会に恵まれている。世界のどのマーケターも、データの重要さをよく理解している。しかし、マーケティング部 門が取得することができる大量のデータをどのように扱うのか悩んでいる。大量のデータは、顧客がとる様々な行動、ジャーニーがもたらした結果である。ブラ ンドと顧客との関係性もカスタマーがとるジャーニーの中で起こる。カスタマージャーニーをどう管理するのか、売上にどうつなげていくのかが重要なポイント となる。カスタマージャーニーを理解することで、企業が望んでいるOne to Oneの情報発信を顧客に対して行えるようになる」
それを実現するためには、パソコン、スマートフォンなど、デバイスから発信される情報をパーフェクトに伝達することが必要となる。データ量の大幅な増加に対応する強固なシステムであることも必要となる。
「Salesforce ExactTarget Marketing Cloudこそマーケターの悩みを全て解決し、信頼性の高い、マーケティング活動を行うためのプラットフォームとなる。日本での提供開始に合わせ、日本語 ユーザーインターフェイス、日本国内に専任チームを設け、皆様の成功をサポートする」
日本でのSalesforce ExactTarget Marketing Cloudの提供開始と共に、日本ではLINE株式会社との連携が発表された。Salesforce ExactTarget Marketing CloudとLINEビジネスコネクトとの連携、LINEユーザーのセグメント化とターゲティングの実現、LINEユーザーに1対1の個別メッセージの配 信を行うことが決定している。
日本でのSalesforce ExactTarget Marketing Cloudの第一号ユーザーである、バーニーズ ニューヨークの将来像を現す、ビジョンデモンストレーションが紹介された。マーケティング担当者は、 Chatterを使い、顧客の行動を支援し、SNSでの顧客の反応を見て、顧客の声を社内にフィードバックする。Journey Builderを使って、カスタマージャーニーに必要な施策を決定していく。
顧客の行動全てをカスタマージャーニーとして登録し、きちんと管理していくことで、オンライン、オフライン融合したメッセージを届けることが可能となり、企業は新しい時代のOne to Oneマーケティングを実現する。
スペシャルゲストとして、バーニーズ・ジャパンの代表取締役社長である上田谷真一氏が登場した。バーニーズ・ジャパンは、店舗「バーニーズ ニューヨーク」を運営し、洋服から小物までを販売している。上田氏は特徴的な自社のスタイルを次のように説明する。
「バーニーズ ニューヨークの場合、一人の担当者が抱えるお客様の数は50人から100人だが、最もお付き合いの密なお客様の場合は、お宅のクローゼット に何があるのか、全てを把握するといった関係性を作っている。これまで顧客情報は手書きメモで残してきたが、スタッフ引き継ぎの際にトラブルが起こってし まうことも多かった。Salesforce ExactTarget Marketing Cloudで、まさにこの問題を解決することができると期待している」
講演の最後に川原は、「現在起こっている、コンピュータが起こす第3の波の中で最も重要なのは、インターネット・オブ・カスタマー。皆様がカスタマーカンパニーとなるためのお手伝いをしていくのが我々の仕事となる。そのためのお手伝いを行いたい」と講演を締めくくった。