セリグマン氏は、参加した開発者を前に、「いまは、Salesforceにとっても、開発者にとっても、大変エキサイティングな時期に来ている」と 切り出した。Salesforceの開発者が過去3年で2倍になり、150万人に達したこと、毎週1万2000人ずつ開発者が増加していることを示しなが ら、「これは大変異例なことである。開発者がクラウドへと移行していることを示すものともいえる。私は、これをさらに加速したい。そして、開発者の方々 は、ローカルのデベロッパーグループに積極的に参加し、コミュニティを通じた情報交換を行ってほしい」と呼びかけた。
米国での調査によると、開発者の人材市場で最も評価が高い技術スキルは、Salesforceアーキテクトであり、このスキルを持った人材の年収は 20万ドル(約2000万円)にも達するという。「同じようなことが日本でも起こるはずだ。企業がソフトウェアの技術を活用して、イノベーションを起こそ うとしている。そこにSalesforce 1が活用される。これから、みなさんのスキルに対する需要が高まるだろう」と、会場に参加しているSalesforceの開発者が、多くの企業から求めら れることを予測した。
米国セールスフォース・ドットコム プラットフォーム デベロッパー
マーケティング バイスプレジデント アダム・セリグマン氏
また、セリグマン氏は、企業においては、「顧客とのつながり強化」、「ビジネスプロセスの合理化」、「モバイルファーストの実現」という3つの要素 が求められていることを示しながら、「これらに対応するために、Salesforce 1がある。社員向けのアプリを開発でき、ビジネスプロセスを効率化するForce.com、顧客向けの洗練されたアプリを開発するためのHeroku、顧 客とマルチチャネルでつながり、しかも顧客と企業が1対1でつながるためのExactTarget Fuelという3つの技術で、Salesforce 1のプラットフォームは構成されている。この1年間で、こうした技術を揃えてきた」などと語った。
さらに、Salesforce 1では、容易にモバイルレディの環境を実現できることを改めて強調。「これまでのSalesforceで開発されたものが、そのままモバイル環境でも利用 できるようになる。セキュアな環境を維持し、アイデンティティもそのまま利用しながら、数多くのAPIによってあらゆるものとつながることができる。これ まで行っているビジネスのすべてがモバイルレディになる」とした。
開発者はVisualforceやHTML5、CSS、JavaScriptを使ってモバイルアプリを開発でき、ISVもビジネスプロセスを強化す るアプリを組み込むことができるという。さらに、システム管理者はこれまでのSalesforceの管理環境を維持しながらモバイルデバイスを管理できる こと、ユーザーはFacebookやLINEなどの使いやすいものから最新情報を入手できるようになり、顧客に最も適したサービスを提供できるなどとし た。
また、Salesforceでは年に3回機能強化していることを説明し、「マルチテナント方式であり、すべてのユーザーが最新のシステムを利用することが できる。別の企業が異なるバージョンを利用しているということはない。これは重要なことである。開発者にとっても、これはすばらしいことである」と述べ た。
正式リリースを今年7月に控えている「Summer'14」は、すでにプレリリース環境を提供しており、現時点でも試用できることを説明。 「Summer'14では、Visual WorkflowのCloud Flow Designerを提供する。Javaなどを使う必要がなく、プログラマーではない人もフローにアクセスできるものであり、洗練された高度なフローデザイ ンを実現できる。クロスオブジェクト項目の自動更新や、フローのなかでのパブリッシャーアクションの活用も実現した。これによって、多くの人々が短時間 に、迅速にアプリを開発できるようになる。さらに、Force.com Canvasでは、モバイルカードにアプリを追加させることができ、古いアプリも、Salesforce 1のモバイルアプリとして利用できる。つまり、モバイルで使えないアプリといったものから、解放されることになる。そして、Heroku Connectでは、Heroku PostgresとSalesforceの双方向同期を実現することができることから、顧客情報はシングルビューのままで、使い慣れたプラットフォームか らアプリを利用することができる」と、今回のアップデートの特徴を示した。
ここで、米国セールスフォース・ドットコム コーポレートマーケティングディレクターのクイントン・ウォール氏がデモストレーションを行い、Heroku Connectにおける双方向同期などの機能を活用することで、チョコレート製品のマーケティングキャンペーンにおけるターゲットマーケティングのメリッ トを示し、「Salesforce 1のプラットフォームとしての強みを、さらに生かすことができるようになる」と語った。
続けて、セリグマン氏は、デベロッパーコンソールと呼ぶウェブベースの開発者コンソール、Force.comによるコマンドラインインターフェースに加え て、EclipseベースのForce.com IDEを新たにオープンソースとして公開することを明らかにし、「開発者が好みのコーディングスタイルを選択できるようにした」と説明。加えて、 Salesforce 1のモバイルアプリの開発に、あらゆるJavaScriptライブラリを使うことができるMobile Packを提供することも公表した。
一方で、今後の展開として、Java Scriptベースのオープンソースフレームワークである「Aura」に言及。「これは将来のSalesforceのUIライブラリになる。 Visualforceが無くなるわけではないが、Auraを活用することで、より優れた次世代アプリを開発することができる」と位置づけた。
デモストレーションを行う 米国セールスフォース・ドットコム
コーポレートマーケティングディレクター クイントン・ウォール氏
また、デバイスとの接続性についても触れ、「PCやスマートフォンだけでなく、眼鏡型や時計型などのウェアラブルデバイスとの接続も、プラット フォーム上のAPIによって強化されることになる」とコメント。ここで再びウォール氏が登壇し、腕に取り付けるウェアラブルデバイスのMyoを利用して、 筋肉の動きなどを関知。手術室においても、Salesforce 1上の様々な情報をハンズフリーで入手し、医師を支援するといった様子をデモストレーションしてみせた。
最後にセリグマン氏は、「今後は、ウェアラブルデバイスを利用した多くのシナリオが出てくるだろう。また、みなさんからもユニークなシナリオが出て くることを期待している。我々はこうしたものに対して情熱を持っており、そのためにプラットフォームを提供している。仮想マシンを提供したり、クラウド上 でJavaコードを実装することがSalesforceではない。提供したいのは、モバイルやウェアラブル技術を活用し、顧客とのつながりを強化するこ と、そしてビジネスプロセスを合理化することにある」と語り、基調講演を締めくくった。