第三回:マーケティングオートメーションを拡大したキャンペーンマネージメントへ

デジタルマーケティングの必須アイテム「マーケティングオートメーション」

マーケティングオートメーション、欧米では当たり前のように利用されているこのマーケティングの自動化ツールも、残念ながら、日本では、まだ、先進 的企業のいくつかが採用しているにすぎません。マーケティングオートメーションとは、マスマーケティングと違って、興味・関心や行動が異なる個別な顧客と の個別なコミュニケーションを行うデジタルマーケティングにおいて、その煩雑な業務を自動化するために開発されたツールや仕組みを指しています。100人 いれば100の異なる興味や行動があるわけですから、本来は、100の施策を打たなければいけません。担当が一人ついたとしても、個別対応していたら、日 が暮れてしまいます。デジタルマーケティングにおいて、マーケティングオートメーションは必須のツールであるわけです。

ですから、遅れていた日本も、デジタルマーケティングへの取り組みが盛んになる今年こそ、この自動化ツールの採用が一挙に進むだろうと、私は考えています。

そこで今回は、まずマーケティングオートメーションって何?ということ、そして、今年このツールの採用を考えている賢明な企業のために、何故この ツールが必要なのか、どう使えばよいのか、どこを自動化してどこを人がやるのか、だから人の役割はどう変わっていくのか、など、マーケティングオートメー ションで最大効果を上げるための方法をお話ししたいと思います。そして、最後に、マーケティングオートメーションの進化について触れたいと思います。

Salesforceのマーケティングオートメーションツールはこちら

そもそもマーケティングオートメーションは何を自動化するのか?

これからのデジタルマーケティングで成果を上げていくためには、顧客一人一人に対して、「最適なコンテンツ」を「最適なタイミング」で「最適なチャ ネル」で提供することが必須です。しかし、膨大な業務負荷を考慮すると、顧客一人一人に対し、最適なコミュニケーションをすばやいサイクルで実行するの は、人の力では、不可能です。だから、業務を「シナリオ化」してマーケティングオートメーションで自動化する必要がでてきます。
ここで自動化されるべくは、シナリオ策定や意思決定の部分ではなく、反復作業の部分です。ここを自動化することは、ヒューマンエラーを減らすという効果もあります。業務の目標と施策を明確にし、ルーティンワークを自動化し、施策の向上を図るのです。

簡単な例で解説してみましょう。ある企業がECサイトを持っています。ここを訪れた複数の潜在顧客は商品Aをカートに入れたが購入しませんでした。 この人は購買意欲がある人ですね。しかし、迷っています。時間がなかっただけかもしれません。他の商品と比べたいと思ったかもしれません。だから、カート を離脱した翌日にリマインドメールを送付してみます。その結果、何人かは、このリマインドメールを見て購買に至りました。中には、メールを開封したが、購 買に至らなかった人もいます。なんらかの理由があるのでしょう。私たちはその理由を特定できませんが、メールを開封したという事実は、カートに入れたが購 買にいたらなかった理由と同様であると考えることができます。そこで、メールを開封したが購買しなかった人だけに、一日後に、それらの人のクッキーIDを 追いかけ、ディスプレイ広告を出稿、いわゆる、リマーケティングをします。この繰り返しで、それをクリックしたが、購買しなかった人には、その2日後に特 別オファーをメールで送付します。その結果、反応がなければ、プログラムは終了とします。ただし、もちろん、プログラムの途中で購買が発生した場合は、プ ログラムをその時点で終了します。

これをフローチャートにすると以下のような形でどんどん展開していくのですが、実際、マーケティングオートメーションの管理画面は、ほとんど、この フローチャートがドラッグアンドドロップで操作できるようになっています。実際には、シナリオ次第でもっと複雑なチャートになっていきます。

そして、当然、素材となるメールや広告も、あらかじめ用意しておきます。メールの内容やタイトルも複数用意をしておいて、顧客の興味や行動に合った 素材が配信されるようにセットしておきます。こうして、オペレーション部分をシステム化・自動化することで、マーケターはマーケティング戦略の策定や分析 といった本来時間を費やすべき部分に集中することができます。また、オペレーション部分の自動化を行うことで素早くPDCAを回し、常に効果の高いキャン ペーンを実行することが可能となります。

「マーケティングオートメーション」を導入した先進企業2社の取り組みを追う

周回遅れの日本を最先端のマーケティング国にするために

マーケティングオートメーションの概要を理解してもらったうえで、これを使いこなす人や組織が必要になります。そのためは、過去にマーケティング オートメーションが普及しなかったわけを考えると、その反対のことを行えばいいことがわかります。以下の3つの悪習を改善していきましょう。

1) どのデジタルメディア(自社メディアである企業サイトやメルマガやソーシャルメディアや広告媒体など)にどんなデータが集まっているかの認識不足。ゆえに、デジタルメディアでデジタルマーケティングではなくマスマーケティングを行なってしまっていた

=>メールマーケティングでターゲットマーケティングを行ないましょう!

世界で発明された主要なマーケティングオートメーションツールは、初期には、メールマーケティングの自動化から始まりました。徐々に機能が追加さ れ、広告のリマーケティング(広告主サイトを訪問したユーザーがウェブを閲覧したり検索を行うタイミングに広告を表示する機能)やメッセージングサービス が利用できるようになり、今や欧米ではキャンペーンマネージメントツールとして利用されています。日本でのマーケティングオートメーションも、まずメール マーケティングからです!

メールマーケティングはターゲットマーケティングです。メルマガの主要データはメールアドレスです。サイトのログインをメールアドレスでしてもらえ ば、どんなメールアドレスの人が何を購買したかがわかります。購買以前にログイン機能をつけておけば、カートに入れた後、購買せずに離脱したこともわかり ます。メルマガを出して、どの項目をクリックしたのか、その後、サイト訪問をして何を見てくれたかがわかります。それぞれのユーザーに異なる興味があり、 それぞれのユーザーは過去に異なる行動をしています。だから、ターゲットマーケティングをしなければいけないのに、日本では、ほとんどの企業では、メルマ ガで「なるべくたくさんの人に1つのメッセージを知らしめる」というマスマーケティングになっているのが実態なのです。そして、メルマガはクリック率が悪 い、と文句を言っているのです。メールマーケティングは、企業が顧客のメールアドレスを取得しているケースに限られるので、元来、自社に関心のある人たち のグループだといえます。にもかかわらず、興味のないメールを送り続ける行為を繰り返していると、効果がないどころかブランドが失墜してしまいます。も う、こんなことは、やめませんか?

飲料メーカーを例に考えてみましましょう。最初に、ビール、ワイン、ソフトドリンク、お茶という4つの飲料に関する告知を1つのメールでしたとしま す。この反応によって、少なくともどれに関心を持ってくれるかで顧客は大きく4つに分けることができます。ビールをクリックした人への次回のメールには、 ビールをタイトルに使いましょう……メルマガ内での告知の順番も変えましょう。そんなに難しいことではないのです。

2) PDCAを回す際に、マーケッターの頑張りどころを間違えている

=>もっと、最適化に時間を割こう

マーケティングプロセスは、PDCAの連続です。
P=シナリオの設計
D=施策の配信・実践管理
C=反応の分析=>データの見える化
A=施策の改善・最適化
このうち、Pのシナリオはもちろん人がつくるもので、Dの部分をオートメーションツールが実行してくれることにより、私たちは、シナリオ設計はもちろん、より施策の改善や最適化に時間をさけるようになりました。

しかし、日本におけるマーケティングプロセスというのは往々にして以下のように進められてきました。

日本のマーケッターは、このうち、企画や制作に多くの時間や労力を費やし、制作が完了したら、自分の役割は終わったと思う人もしばしばです。そし て、リリース後は力尽きてしまうことさえ。マーケティングが自動化するということは、リリース後の反応を見て、よりよい施策を考えることができるようにな るということです。マーケッターのコミットは、よりリリース後の改善に振り向けられるべきなのです。マーケティングの施策のパフォーマンスを上げることに コミットし、マーケティング施策の最適化を目指しましょう!

3) 完璧を目指しすぎ。

=>Done is better than perfect!

マーケティングオートメーションを使い始めると、リアルタイムで反応を分析できるようになります。この施策があたったかどうかが数字で見えるように なります。ABテストをすることもできるし、その結果もすぐにわかります。日本人の特性として、何事も完璧を目指すということがありますが、インターネッ ト時代には、この特性はネガティブに働きます。批評者は、ユーザー。ユーザーにまず聞いてみる=施策をまずやってみる、ことがよい結果を生み出すことにな ります。

FacebookのZuckerberg氏の言葉です。Done is better than perfect. この意味を私たちは日々の業務に生かすようにしなければなりません。

さあ、キャンペーンマネージメントへ!

最後に、マーケティングオートメーションが近い将来、「クロスチャネル」を含んだ「キャンペーンマネージメント」に利用されることを覚えておいてく ださい。なぜなら、この進化は、ドッグイヤーのごとく、非常に近い将来、実施されるに違いないからです。理由は、ユーザーがそれを求めているからです。

マーケティングオートメーションの開発の歴史は、B2Bから始まりました。製品に興味がある顧客がサイトを閲覧する場合、複数の製品があるので、製 品の種類によってコンテンツを出しわけるという単純な自動化がなされました。商品の詳細はPDFをダウンロードしてください。ダウンロードのためには、社 名や部署名、メールアドレス等、を登録してください、というサイトを利用された方は多いと思います。この場合、PDFから「問い合わせ」に至らないと、 メールを配信します。このメールも自動的にそれぞれ異なるコンテンツで訴求されています。しかし、B2Bの場合は、コンテンツにそれほどバリエーションは ない。

その後、この考え方をB2Cに応用しようとする動きが出てきました。これが、今回のテーマの主要部分です。そして、これがクロスチャネルという概念が加わったキャンペーンマネージメントになっていきます。

今のマーケティングオートメーションは、デジタル上でのキャンペーンマネージメントを自動化するものです。しかし、近い将来は、ウェブもあり、アプ リもあり、メールもあり、広告もあり、店舗もあり、イベントもあり、コールセンターもあり、の統合的なキャンペーンマネージメントになっていきます。店舗 とは、例えば、今までの購入時のカード決済のデータ以外に、購入前後の顧客行動もわかるようなもの、チェックイン機能であるとか、来店して商品をスキャン して、いいね!をするとか、ですね。

いわば、企業とのコミュニケーションの可視化と言っていいでしょう。

企業は、色々な属性の人の色々な行動のタイミングと対峙していかなくてはなりません。年に何回かしか買わない人、週に何度も訪れる人、ネットだけで 購買している人、店舗だけで購買している人、両方で購買する人、これらの人たちに、究極のパーソナリゼーションとリコメンデーションを行っていくのです。

例えば、平日に、新宿店で、ある商品に、いいね!をした人がいらっしゃるとします。しかし、この土日のチェックインの状況からすると吉祥寺に住んで いらっしゃるようです。金曜か木曜のタイミングで、吉祥寺で扱っていますという告知をスマホ経由のメールで行ってみたらどうでしょうか?こうなると、人事 評価は、店舗ごとの評価ではダメですね。リアルをネットに勧めた人、多店舗への来店を促した人、デジタル時代の評価は、全体評価でなくてはなりません。

未来だけれど、近未来のお話でした。

「マーケティングオートメーション」を導入した先進企業2社の取り組みを追う