Salesforce1

日本技芸も、Salesforce1プラットフォームにいち早く対応したISVの1社だ。同社が開発したソーシャルグループウェア「rakumo ソーシャルスケジューラー」は、 Ajaxを駆使したページ移動のないUI、分かりやすさを重視したレイアウトとデザインに定評がある。そして2013年12月12日に、 Salesforce1対応の「rakumo ソーシャルスケジューラー for Salesforce1」としてバージョンアップ。営業担当者が屋外でスケジュール入力や確認を行う際など、モバイル環境での高い操作性を実現するととも に、行動予定管理、設備予約機能といった独自の機能をそのまま利用できるようにしているのが特徴だ。日本技芸の御手洗大祐社長に、「rakumo ソーシャルスケジューラー for Salesforce1」について聞いた。

株式会社 日本技芸 代表取締役社長 御手洗 大祐氏
株式会社 日本技芸 代表取締役社長 御手洗 大祐氏

現場が簡単に使えるスケジューラー

日本技芸は、クラウド環境で動作するオフィスツール製品「rakumoシリーズ」を、2011年2月に製品化。2012年8月には、 Salesforce.comと連携した「rakumo ソーシャルスケジューラー」を投入し、企業や組織を、ソーシャルコミュニケーションで活性化させる「ソーシャルグループウェア」としての利用提案を行って きた。
rakumoシリーズ全体では、累計では510社以上で、延べ16万人のユーザーが利用。2013年にはネットイヤーグループの一員となり、事業拡大に弾みをつけようという段階にある。

「rakumoシリーズは、クラウドを活用した新たなソリューション提案が求められる一方で、自らが推進する開発プロジェクトなどにおいて、コミュ ニケーションロスの課題を解決したいというきっかけから生まれたもの。さらに、使いやすい操作環境を実現するために、コンシューマ向けサービスで培った、 操作性やユーザーインターフェースのノウハウを活用。現場の人たちが、入力しやすく、確認しやすいスケジューラーを目指した」とする。

よく利用する内容を迅速に表示できるようキャッシュを活用したり、グループスケジュールを表示する際にも、まずは自分のスケジュールを確認する傾向 が強いという利用シーンの特性を活用し、利用者のスケジュールを優先表示している間にグループのスケジュールをバックグランドで検索するといった動作を 行っているのも、同社が培ってきた利用ノウハウを活用したものだ。

rakumoの名称は、ユーザーがオフィスツールをより楽に利用するための「楽(らく)」と、「雲(=クラウド)」をかけたもの。その命名通りに、簡単に使えることを製品の特徴としていることがわかる。
なかでも、「rakumo ソーシャルスケジューラー」は、Salesforce CRMデータやChatterと連携。CRMを活用しながら、個人のスケジュール管理、グループスケジュール管理などが可能になる。

「CRMとスケジューラー、あるいはグループウェアとスケジューラーを分けて利用しているユーザーでは、データをそれぞれに入力しなければならない といった問題や、データが共有しにくく、合理性を失うという問題が発生していた。rakumo ソーシャルスケジューラーでは、こうした課題が解決できる」

グループカレンダーや設備予約、施設予約、空き時間検索といった企業活動に不可欠なグループウェア機能を、SalesforceのChatterと 連携させることで、スケジュール管理アプリケーションとして全社で活用できるほか、企業内および組織内のソーシャルコミュニケーションを活性化させること ができるという。
さらに、rakumo ソーシャルスケジューラーでは、Sales Cloudの利用者と、利用していない部門との間で実現が難しかった社員の予定の共有や、会議設定、設備予約や会議室予約などのスケジュール管理を一元的 に実現。全員が毎日利用するスケジューラーを通じて、自然な形で企業内SNSを活用した従業員ソーシャルネットワークが構築できるという。
そのほか、rakumo ソーシャルスケジューラーは、チームスピリットが開発したERPのフロントウェア「TeamSpirit」との連携により、rakumoの行動予定に TeamSpiritのジョブコードをひもづけたり、TeamSpiritからrakumoの行動予定を取り込んで、工数管理に利用したりといったよう に、スケジューラーのデータや機能をもとに、さらに合理的なデータ活用、業務活用の提案を図っている。

rakumo ソーシャルスケジューラー

Salesforce1対応で標準機能のような形でアプリが利用可能に

2013年11月に米サンフランシスコで開催したDreamforce 2013で、Salesforce1が発表されたことを知った同社の開発チームは、御手洗社長の指示を待つまでもなく、すぐにSalesforce1の対応に踏み出したという。
「私自身もすぐに対応しなくてはならないプラットフォームであると直感したが、開発チームの動きはそれ以上に速かった」と、御手洗社長はその時を振り返って笑う。これが同社が持つスピード感だといえよう。

Salesforce1は、モバイル対応が強化されたことが特徴のひとつだが、rakumo ソーシャルスケジューラーでは、製品発売とともにすでにモバイル対応を図っていた経緯もあった。わずか1カ月でSalesforce1への対応を図れたの は、Salesforce1の移植性の高さとともに、rakumo ソーシャルスケジューラーのモバイル対応の実績が背景にある。

「これまでは、どこまでがアプリ側で対応する範囲で、どこまでがSalesforce側で対応するのかといった線引きができていないという混乱があった。Salesforce1によって、それが明確になったことは、今後のアプリ開発にとっては、大きなプラス要素になる」

さらに、Salesforce1の画面上から、標準機能のような形でrakumo ソーシャルスケジューラーが利用できること、Salesforce1アプリ上でCRMとシームレスに遷移できるといった使い方がより便利になった。
たとえば、商談中に、Salesforce1を起動するだけで、これまでの提案の流れや前回訪問時の宿題などを確認できると同時に、次回商談のための上司 を含む同僚のスケジュールの確認、会議室の確保などをワンストップで行うことができ、現場レベルでのタイムリーな顧客対応、つながりの強化を実現すること ができるとする。

Salesforce1の画面

コンシューマーテクノロジの良さをいち早く取り入れる

御手洗社長のSalesforce1への期待は高い。
「Salesforce1によって、他のアプリとの連携が高まり、アプリ同士を組みあわせた利用提案が行いやすくなるだろう。生産性を高めたり、合理性を高めるという点ではその効果を期待したい」とする。

これはrakumo ソーシャルスケジューラーが目指した道とも合致する。
そして、「スタンプへの対応など、より使いやすいインターフェースの採用は、企業で利用するアプリの操作環境を改善することにもつながる」とも期待する。
同社の調べによると、企業では約9割のユーザーが、いま利用しているアプリのデザインやインターフェースの改善を求めたいと回答しているという。それでも、企業向けアプリは、コスト増などを理由に、その改善に踏み込んでこなかった経緯がある。

インターフェースの改善に積極的に取り組んできた日本技芸にとって、Salesforce1の取り組みは、モバイルでも使える、使いやすい操作環境を見直すきっかけをつくるという点では追い風になりそうだ。
だがその一方で、「独自性を持ったインターフェースがどこまで活用できるのかといって点はこれから検証していかなくてはならない」とする。 企業の現場 ユーザーが利用するアプリの操作環境を改善するという点での方向性は同じだ。お互いの強みが生かされるような形でのインターフェースの進化に注目したい。

rakumo ソーシャルスケジューラーは、今後、スマートエンタープライズと呼ばれるスケジューラーのデータを元にした分析機能の提供、他のアプリとの連携強化や拡大 などにも取り組んでいく予定だ。さらに、「使った社員がモチベーションをあげられるようなアプリの提供にも踏み出したい」と、御手洗社長は語る。

Salesforce1プラットフォームによって、rakumo ソーシャルスケジューラーの進化は加速することになりそうだ。