Salesforce1

中部地域でシステム開発を行ってきた株式会社レッティが開発した「Argus(アルゴス)」は、日本企業の声を聞いて開発されたグループウェアである。2013年12月に発表されたSalesforce1対 応アプリケーション10本に名を連ねている。Salesforceプラットフォームを選択したことで、ユーザーにとって導入しやすい敷居の低さと、セキュ アな環境、他社アプリケーションとの連携による拡張性を実現した。連載第4回では、レッティで営業を担当するシステム営業部 部長である平健司氏に、Salesforce1が日本のユーザーにどんな変化をもたらすことになるのかを訊いた。

株式会社レッティ システム営業部 部長 平 健司 氏
株式会社レッティ システム営業部 部長 平 健司 氏

トップページに必要な基本メニューを集約

名古屋市に本社がある株式会社レッティは、中部地区を中心にセールスフォース・ドットコムのパートナーとして活動してきた。
「2006年頃から、中部地区のユーザーを中心にSales CloudやService Cloudの導入支援を事業としてきました。salesforce.comの本社がある米国と、日本ではグループウェアに対する概念が異なります。日本の ユーザーが考えるグループウェアを、Salesforceのプラットフォーム上で実現するための開発、導入支援を行ってきたのです」

レッティのホームページを見ると、「Salesforce Partnerとして中部地区ナンバー1」とアピールされている。「従業員規模が多くなると、様々な設定が必要になり、AppExchangeからダウン ロードして即導入というわけにはいきません。個々のお客様に合わせた開発を行うことが当社のビジネスとなっています」

平氏は営業の最前線に立って、日本のユーザーの声を聞いている。その中で感じる、日本のユーザーならではのニーズとして、オールインワン型のトップページをあげる。

「日本のお客様は画面を見れば状況が把握できる、必要なものが全部揃ったトップページを求めます。本来Salesforceは自分自身で自由に設定 できる機能があるのですが、日本の情報システム部門から、『ユーザー自身が自由に設定できるのは好ましくない』という声もあがります。アルバイトも含め、 幅広い社員が利用するため、トラブルを減らすために、情報システム部門が提供するものだけを利用して欲しいと考えるからです。最初から必要なものを用意さ れているトップページは、ユーザー自身がカスタマイズする必要がありません」

トップページに加え、スケジューラーといえば四角いマスのスケジュール帳のような画面があることを好むといった日本ユーザーが好む仕様がある。レッティではこうした日本のユーザーの声に合わせた仕様のものを開発してきた。
また、すでに別のグループウェアを導入しており、そこからSalesforceに乗り換えるユーザーも多い。なかでも日本のグループウェアを使っていた ユーザーは、スケジューラー、施設予約といった日本のグループウェアの代表的な機能を利用しており、同じような機能をSalesforce導入後も利用し たいと希望する。
そんな中、2013年1月に誕生したのがオリジナルアプリケーション「Argus」だ。元々、ユーザー向けに開発したものを磨き上げ、パッケージとして発 売した。商品名の「Argus」はギリシャ神話の目を6つ持つ魔神。多角的に把握するスケジューラーとして命名されたという。

Argusは、Salesforce上で施設予約、スケジュール管理、文書管理、ToDo管理、メール、電話メモ、アドレス帳、掲示板など日本のグ ループウェアではお馴染みの機能を利用できる。さらにグループウェアと業務アプリを紐づけるのも日本独特だ。プラットフォームとしての Salesforceの機能をフルに生かしたアプリケーションとなっている。

モバイル対応に悩んでいた時に登場したSalesforce1

Salesforce1は、Argusのモバイル対応に悩んでいたタイミングで登場した。
「スケジュール管理、メールといった機能を持っているので、モバイル版を要求するお客様は当然いらっしゃいます。SalesforceのTouchプラッ トフォームを使って開発を行うべきか、独自に開発した方がいいのか、社内で議論している時に登場したのがSalesforce1だったのです」

そこですぐにSalesforce1に対応することを決定。2013年12月に発表された、日本でSalesforce1に対応したアプリケーションとして、最初に発表された10本の1つとなった。

営業職である平氏にとって、Salesforce1は大きな武器になるものだ。メール、スケジュール管理はモバイルファーストであるSalesforce1とは相性がいい。
「個人のモバイル端末でメール、スケジュール管理といった操作がしたいという声があったのですが、その場合のセキュリティをどう確保するのかが大きな課題 となっていたのです。Salesforce1上であれば、個人の端末を利用してもセキュリティを確保することができます」
外部からの攻撃、そして内部からの情報漏洩をいかに防ぐのかがアプリケーションにとって大きな課題となる。Salesforceというプラットフォームで 動くことで、セキュリティを確保していることがArgusの大きな強みとなっている。Salesforce1では、モバイルでも同様の高いセキュリティを 確保することができるようになり、「世界一セキュアなグループウェアと言えます」と平氏は胸を張る。

Salesforce1のもう一つの魅力は、「AppExchange上の他社アプリケーションとの連携がしやすい点」だと平氏は話す。実際に Argusのユーザーの約6割が他の業務アプリと連携して活用している。最初にグループウェア機能を導入し、その後、他社製の人事・勤怠管理、承認申請 ワークフロー、営業管理分析などと連携することで、ユーザーにとってはより利便性が増すことになる。

「営業でお客様と話しをする中で、Salesforceの奥深さは大きな武器となります。お客様からあがる声として、『グループウェアとして導入す る当初は、シンプルで使いやすいものであることが望ましい。しかし使い続けて慣れてきたら、あれもやってみたい、これもやってみたい』というものがありま す。そこでArgusの最初の基本機能はシンプルに、その後、他社アプリケーションと連携できることで、やりたいことを実現できますよとアピールすること ができるのです。もはやArgus自身が、単なるSalesforce社のAppExchangeというマーケットプレイスに存在するアプリケーションの 一つではなく、業務アプリのプラットフォームという位置づけになってきております」

Salesforceというプラットフォームが持つ、セキュアさ、他社アプリケーションとの連動が自由に行えるといった特徴がArgusというアプリケーションを支えている。

Argus

Argus

ユーザー数2000を超えるライセンスの大規模導入が進行中

現在、レッティでは大手外食企業へ、2000超のユーザーのArgus導入を進めている最中だ。

「この案件はまさに、最初はシンプルに、その後は他社製アプリケーションとの連携によって、やりたいことを実現していきたいというビジョンがベースとなっています」

実は平氏が最初にこのユーザーを訪問した際は、「グループウェアを導入する意向はない」と言われていた。そのため、ユーザー自身の選択肢から Salesforce製品は外れてしまっていた。それが一転して導入が決定したのは、Salesforceという枠の中で自由に開発ができる点が評価され てのことだった。

「このお客様は、すでに情報共有や、ワークフローを導入しています。新たにクラウド導入を考えている状況だったのですが、それはグループウェアでは ないということでした。商談を進めるうちにグループウェアを入り口に、自分達に必要なものを開発していけばいいのではないかということになりました。 Salesforceプラットフォームという枠の中で、最大限に進化していくことができる点が導入を決めるポイントとなったのです」

この導入後に大きな進化が実現できるという点が、Argusにとって最大のセールスポイントとなっている。平氏は当初はArgusの機能を前面に出 してアピールしていたのだが、機能をアピールするよりも、長年開発してきた実績を生かし、ユーザーの要望に合わせて進化することができる点をアピールする 方がユーザーに響くケースが多かった。

「その際、Salesforceのプラットフォームとしての奥深さが大きな武器になります。Salesforce1の登場で、モバイルへの対応も万 全となりました。今後、Salesforce1の知名度があがり、それに対応しているアプリならモバイルも万全だねと日本企業の皆さんにわかってもらうよ うになれば、我々のビジネスはもっとやりやすくなりますね」と平氏は今後のビジネス拡大に大きな期待を見せている。

ギリシャ神話の目を6つ持つ魔神から名付けられたArgusが、多くの業務アプリと連携することでさらに多様に進化することになりそうだ。