最近耳にすることが増えたキーワード「D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)」。2021年夏、東京で開催された世界最高峰のスポーツの祭典では、D&Iを大会の理想の姿として掲げ、どの選手も年齢、人種、国籍、宗教、心身機能、障がいの有無、性別などに関わらずベストをつくし、熱い戦いを繰り広げました。またアスリート自身が人種差別撤廃に対する意見を積極的に発信したり、LGBTQであることをカミングアウトしたりといったアクションを起こしてくれたことで、多くの消費者の関心を高めるきっかけになりました。
そして今やD&Iは企業活動にも欠かせない存在になっています。経済産業省も、ダイバーシティ経営を「多様な人材を活かし、その能力が最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげている経営」と定義し、国内企業の競争力強化のために推進し始めています。
多様性を認識し、互いが違いを受け入れて尊重し合う「D&I(Diversity and Inclusion)」。最近では従来の考え方に「Equity(公平性)」をとり入れた「DEI」が主流になりつつあります。「D&I」では“同等”の機会を提供するだけだったのに対し、「DEI」は貧困や人種差別など社会構造的な不平等を是正し“公平”に活躍する機会を持たせようとするものです。
この「Equity(=公平性)」に注目が集まった背景には、近年アメリカで議論となっているマイノリティへの差別などの社会問題があります。一人ひとりがそのバックグラウンドによって出発点から“不平等”になってしまう状態のままでは社会構造は変わらず、分断や格差を定着させてしまう。こうした問題意識から、「Equity」が重視されるようになったのです。
Salesforceでは、コアバリューの1つに掲げる「Equality for All(あらゆる人にとっての平等)」と同様に、DEIを推進し、コミュニティの多様性を反映した真に公平な職場づくりにも取り組んでいます。同一賃金同一労働、アクセシビリティオフィスの新設や社員主導のイクオリティグループの支援などを通じて社員をサポートするとともに、包括的なデータに基づいた意思決定、公平かつインクルーシブなビジネス慣行(インクルーシブな雇用やインクルーシブ・リーダーシップ、インクルーシブ・マーケティングなど)の実現をめざしています。
誰もがチャンスを与えられ、尊重されていると感じられる平等な社会を築いていくことは私たちの責務であり、社会貢献だけでなくイノベーションの促進につながると考えているのです。
>>誰もが平等な社会へ Salesforceが考えるEquality(平等)とは→
https://www.salesforce.com/jp/company/equality/
企業がDEIを実践する方法の1つに「インクルーシブ・マーケティング」があります。これは商品・サービスを提供するコミュニティの「真の姿」を捉え、そのニーズを満たす価値を生み出し、届ける手法です。阻害されたり過小評価されたりしてマーケティングのメインターゲットになっていなかった多様な人びとにもフォーカスし、それぞれの暮らしはもちろん社会全体にも良い変化をもたらすものとして注目されています。
実はすでに消費者である私たちの身のまわりにも、インクルーシブ・マーケティングは広がりつつあります。例えばテレビCMの家事シーンに男性が増えエンジニアや経営者役に女性が増えた、絆創膏やファンデーションに従来のベージュ系だけでなくブラウン系などのカラーバリエーションが広がった。こういった従来のステレオタイプに囚われないマーケティングを行うことで、多様性を尊重しているのです。
インクルーシブ・マーケティングは、社会だけでなく企業にも大きなメリットをもたらします。多様性にフォーカスすることで新たな市場にリーチできる上、消費者のニーズにフィットする商品・サービスを提供することで顧客エンゲージメントを獲得しやすくなります。また多様な声に丁寧に耳を傾けるために人財の多様化が進み、新たなイノベーションが生まれやすくなるとも言われています。
Salesforceでは、インクルーシブ・マーケティングを「私たちの会社が寄与する多様性のあるコミュニティを的確に反映したコンテンツを制作すること」と定義し、取り組んできました。その過程で得られた万人の“平等”を叶えるための6つの原則をご紹介します。
1.トーンの決定から始める。
まずはコンテンツのスタイル、特徴、感情を「トーン」として定めます。人々が気分を害する事態を避けるため、テーマやムードにふさわしいスタイルか、メッセージを受け取った人にどうアクションしてほしいのか、どのような影響を意図するものなのかなどを話し合う必要があります。
2.意図を正しく伝える言葉を選ぶ。
使用する単語やフレーズ、例え話などが意図を正しく表現できるものかどうか精査します。言葉の選び方1つで、相手を混乱させたり傷つけたりする可能性があるためです。同じ言葉でも地域や文化の違いによって単語の意味が変わるケースもあり細心の注意が必要です。
3.消費者の真の姿を反映する。
消費者はマーケティングに自分たちの姿が反映されることを期待しています。制作するコンテンツのキャラクターやイメージに多様な人々の姿を正しく反映しましょう。決して「多様な人々を混ぜて見せれば良い」のではなく、真摯に一人ひとりを表現し発信することがポイント。コンテンツがすべての人にチャンスを広げ力づける内容になるよう配慮します。
4.コンテキスト(歴史、順序)を考慮する。
コンテキストとは、コンテンツで触れる内容の「それまでの流れ」に関わる“文脈”を指します。例えば史実や文化的な背景に触れる場合、それが正しく解釈され、敬意が払われ、適切に発信されなければいけません。また登場人物の順序・関係性にも配慮する必要があります。性別、年齢、人種、職業などが異なる複数の人物が登場する場合、搭乗する順番やストーリー、各人の立ち位置や言動、登場シーンの時間配分などにより、誰かに不利益な見え方にならないような配慮が不可欠です。
5.盗用・流用を避ける
盗用・流用とは、マイノリティの文化の一側面を、その背後にある意味を知らないまま、あるいは尊重なく使用することを指します。マイノリティ文化から利益を一方的に搾取していないか、マイノリティ文化が真摯に扱われているか、事実に基づいて正しく解釈されているかなどを、綿密に検証することが重要です。
6.ステレオタイプに抗う。
ワンパターン化された意見や偏見などに基づく安易なイメージでコンテンツを制作するのはNG。多様な人々のリアルな姿や思いに寄り添い「本当にこのイメージで良いのか?」を常に自問する姿勢が大切です。従来のマーケティングで助長されてきた属性ごとのステレオタイプを塗り替えていく挑戦は、私たちの文化や社会を少しずつ変え、次世代に勇気を与える力になるでしょう。
これら6つの原則を実行する際に不可欠なのが、インクルーシブ・マーケティングに関わる全員が平等について真摯に話し合える環境です。その中で一人ひとりが自分の“意図”ではなく、自分が発信したメッセージによる“影響”に目を向けて行動し、改善を重ねる意識を持つことが大切。答えのないDEIを誰もが模索する中で間違いや誤解は起こりますが、その意識があれば継続的に取り組みをアップデートしていけるはずです。
Salesforceではインクルーシブ・マーケティングの実践を通して、社内外の多様性に対し“平等”の機会を重視し、誰もが同じ地平に立つ仲間として力を発揮できる社会を目指しています。インクルーシブ・マーケティングに興味のある方はぜひ無料で学べるTrailheadをご活用ください。
<おすすめのモジュール>
インクルーシブマーケティングの実践方法
https://trailhead.salesforce.com/ja/content/learn/modules/inclusive-marketing-practices