Salesforceでは、SaaSスタートアップを対象としたWebinarを2ヶ月連続で開催しました。第1回目はSalesforce Venturesという投資部門にフォーカス。Salesforce Venturesは、10年以上にわたり、全世界のベンチャー企業に投資しており、26か国で累計400社以上への投資実績があります。日本拠点では、2011年から活動を開始、2018年には約100億円のJapan Trailblazer Fundを発表しています。
Salesforce Venturesについて知っておられる方も、このブログで初めて知った方も、まず疑問に思われるのは「なぜセールスフォース・ドットコムが投資事業をするのか?」ということかもしれません。その答えは、私たちの投資領域を見ていただければご理解いただけるでしょう。私たちの投資領域は、以下の2つです。
まずは、システムインテグレーター。Salesforce製品のデリバリー経験があり、Salesforce認定エンジニアを抱えるスタートアップに投資を行います。
もう1つは、B2B市場のSaaSスタートアップ企業です。Salesforceのプラットフォーム上でサービスが稼働する独立系ソフトウェアメーカー(ISV)はもちろん投資対象になります。加えて、Amazon AWSやMicrosoft AzureなどSalesforce以外のプラットフォームでサービスを稼働させていても、Salesforce製品との連携が見込める魅力的なサービスを提供しているISVの場合は投資を行います。
Salesforceのソフトウェア群と連携できるサービスへの投資例。
バーティカルSaaSやテクノロジー基盤への投資実績も豊富です。
このように、私たちは投資収益を得ることに加え、Salesforceのエコシステムの成長を加速させるという役割も担っています。一般の投資家より対象領域は狭く見えるかもしれませんが、Salesforceのエコシステムはかなりの規模です。実際に、ForbesのB2B SaaS領域の投資ランキングでは僅差の2位。この領域の投資家として市場からは高い評価を受けています。活動はワールドワイドに展開し、地域別のファンドも充実しています。日本で私たちが運用している「Japan Trailblazer Fund」は日本と韓国の企業を投資対象としており、日本の投資先数は38社で米国に次ぐ2位。日本市場に注力していることもSalesforce Venturesの特長のひとつです。
シリコンバレーの105社が目立つが、B2B SaaSスタートアップの絶対数が多いという背景もある。
日本ではすでに38社に投資し、投資先数は米国に次ぐ2位。日本市場に注力していることがわかる。
投資に当たっては、経営チームの魅力やターゲット市場の可能性、製品そのものの完成度など、一般的な投資評価の観点はもちろん重視します。その上で、セールスフォース・ドットコムとの協業可能性やSalesforceソフトウェアとの連携見込みについても精査して投資することになります。SaaSスタートアップの場合は、SaaS単体でのARR(年次継続収益)が1億円を越えているかどうかを判断基準にしています。これは、顕在化したニーズがあって、そのニーズにこたえられる製品がすでにあり、きちんとお客様から対価をいただけているかどうか、という評価です。シード投資は行っておらず、ある程度成熟した企業に対して、さらなる成長のための資金を提供することになります。
マジョリティを握ることが目的ではありません。投資額は多くても株式の十数%以内にとどめています。そして、投資先とはSalesforce のお客様にとって有益なソリューションを共に提供するパートナーとして、Win-Winの関係を構築します。実際に、お客様に対して共同提案や共同サポートを行うケースも多くあります。
セールスフォース・ドットコムも投資先と同様に、SaaSスタートアップから始まりました。そのため、セールスフォース・ドットコムがSaaS企業として成長してきた経験やノウハウ、知識を投資先へ積極的にお伝えし、投資先を支援する活動も行っています。
具体的には、取締役会に出席し、SaaS企業ばかりを見ているからこそわかる知見を共有したり、投資支援先限定で開催する勉強会を開催したりするなどです。セールスフォース・ドットコムの幹部社員との個別メンタリングを実施することもあり、実際にSaaS企業のオペレーションに携わってきた中での経験をお伝えできる場として好評です。
Salesforce Venturesは資金面をサポート。セールスフォース・ドットコムのパートナーアライアンスとフロント営業が
AppExchangeパートナーとして成長するための実務的な支援を提供する。
投資決定時に、AppExchange(Salesforceと連携し、Salesforceの機能を拡張できるアプリを幅広く取りそろえたビジネスアプリのマーケットプレイス)に製品を登録してある必要はありません。ただ、Salesforceとの連携目処がつけば、AppExchangeパートナーにならない理由はありません。実際に、システムインテグレーターを除く投資支援先のAppExchangeパートナーになっています。私たちはGo-To-Market支援として、出資先企業とセールスフォース・ドットコムの営業部門が共通のお客様へ共同提案する機会を積極的に創出するようにしています。その際に、AppExchangeに製品が登録されていると営業面等協業を行いやすいのは確かです。昨年度に中小企業市場の売れ筋トップ3だったTeamSpirit、Sansan、mitocoは、すべて投資先企業の製品でした。
いま、投資したいと考えているソリューション領域は大きく4つあります。もちろんこれらに限定するというわけではありませんが、注目領域として挙げておきます。
中でも、「未来の働き方」を実現するソリューション領域は魅力的です。コロナ禍で働き方は大きく変わってきていて、テレワークが当たり前になると社内のコラボレーションは難しくなっています。その“コミュニケーションのすき間”を埋めるようなサービスがいくつも立ち上がっています。従業員の健康管理も大きなテーマですし、リモート営業やリモート顧客サポートを効率的に提供するサービスにも注目しています。
今回は、Salesforce Venturesの活動内容を紹介しました。第2回目となる次回は、「成長SaaS企業からベストプラクティスを学ぶ」と題し、私たちの出資先企業からスピーカーをお迎えし、セールスフォース・ドットコムのアライアンス戦略についてもお伝えします。セールスフォース・ドットコムは、B2B SaaSの領域で飛躍しようとしている企業と共に成長していきたいと考えています。この分野をさらに勢いづけていくためにも、Salesforce Venturesは引き続きSaaSスタートアップを強力に支援していきます。
ご参考:
寄稿者:セールスフォース・ドットコム アライアンス