「2025年の崖」が迫るなか、ますます重要性が見直されている「SaaS」。注目は高まっていますが、いまだ活用に至らない企業も少なくありません。
そこで本記事では、ユーザー側と開発側双方の視点から、SaaSを活用のメリット・デメリットを解説します。成功事例の紹介もあわせてご覧ください。
まず、SaaSとは何かをあらためて確認していきましょう。
SaaS(Software as a Service)とはクラウドサービスの一種で、「ネットワークを介してソフトウェアサービスを提供する仕組み」です。私たちが当たり前のようにおこなう「ブラウザから何かしらのソフトウェアを動かす行為」の多くはSaaSを利用しており、現代社会に欠かせないものとなっています。
SaaSを活用する有名企業やそのサービスとして代表的なものは以下のとおりです。
SaaS製品:Gsuite
多くのビジネスパーソンが利用しているGsuite。GmailをはじめCalender、Map、Driveなどさまざまな機能を提供します。インターネット接続さえできれば、すぐにでもメールやドキュメント作成、表計算等が可能になるすぐれものです。当たり前のように使っているためにSaaSだと意識していなかった方も多いのではないでしょうか。
SaaS製品:TeamSpirit
TeamSpiritは勤怠管理や工数管理、経費精算や社内コミュニケーション等を統合管理し、業務の効率化と透明化を実現するSaaSです。Gsuiteと比較するとバックオフィス業務にも対応したものといえるでしょう。
SaaS製品:Slack
Slackはチャット、ダイレクトメッセージ、チャンネル作成、音声通話等の機能をもち、コミュニケーション効率の向上を実現するSaaSです。”皆さんのビジネスライフをよりシンプルに・より快適に・より有意義に”というコンセプトのに基づいて日々改善が図られています。
SaaS製品:Zoom
Zoomはスマートフォン、タブレット、PCのようなデバイスを利用してWeb会議を実現できるSaaSです。異なる国どうしでの会議、商談、テレワークでの打ち合わせ、オンラインイベント等に活用されています。
SaaS製品:freee
freeeは、経理や会計の業務の効率化に特化したSaaSです。会計フリー、人事労務フリー、申告フリーとがあり、個人事業主や法人のバックオフィス業務に従事する方、ペーパレス化を目指す組織にも利用されています。
SaaSの詳細や、類似概念である「PaaS」や「IaaS」との違いについては、以下の記事で詳しく解説しています。本記事とあわせてご参照ください。
PaaSとは?IaaSやSaaSとの違い、クラウドサービスの選び方について紹介
次に、ユーザー視点でのSaaSを活用するメリット・デメリットを紹介します。なお、ベンダーからSaaSの提供を受ける企業も「ユーザー側」に該当します。
最大のメリットは「知識・労力・時間・費用いずれの面でも導入が容易であること」です。SaaSはインストールや環境の構築が不要で、前提知識や労力なくに利用を開始できます。またハードウェアの購入などの高額な初期費用が発生しないため、導入障壁が低いのが特徴です。
ネットワークがあれば、時間や場所を選ばない点もSaaSの魅力です。離れた場所にいる社員同士が情報共有しながら作業できるため、新型ウイルス感染拡大以降に必要性が増しているリモート業務でも活躍します。
社員間のみならず、端末間の情報共有にもSaaSは優れています。複数端末からのアクセスにより、社内での作業を出張先のノートパソコンから引き続きおこなう場合にもスムーズです。また、負担のかかる処理はサービス側でおこなうため、接続端末のスペックもさほど要求されません。
セキュリティ面の不安が挙げられます。クラウドゆえにデータの漏洩リスクが存在するほか、社内から外部サービスへのアクセス制限が施されている場合には、新たにセキュリティ体制の策定が必要です。
企業による情報流出事故が社会問題となる現代では、SaaSの導入に関わらずセキュリティの更新は重要です。この機会に整備し直すのもよいでしょう。
ベンダーがソフトウェア提供まで引き受ける特性上、ユーザー側からサービスへの大規模なカスタマイズがおこなえません。自分たちに適したカスタマイズができる点では、自社開発サービスの方が優れています。
ただし、多数のパーツを提供してユーザーが自分好みのサービスを組み立てられるようにしているベンダーや、SaaSのカスタマイズや導入を専門で請け負う企業も存在します。工夫次第で一定の対策が可能です。
各種メンテナンスやネットワーク障害など、自社以外の都合で一時的に利用が制限される可能性があります。ベンダーにとってもサービスの稼働率は死活問題であるため、日々改善されています。
続いて、開発側であるベンダーにとってのメリット・デメリットを見ていきましょう。
SaaSの特徴である初期費用の安さは、ベンダーにとっても有利に働きます。必要なサービスのみを切り売りしやすいSaaSの特徴とあわせ、「わずかこれだけの予算で始められる」など訴求力の高い営業が可能です。
ユーザーを獲得しやすい
導入ハードルの低さにより、従来のパッケージタイプのサービスに比べて、ニーズにあったユーザーを獲得できます。「とりあえず○ヶ月だけ試してみたい」といったニーズも満たせます。
月額課金などのサブスクリプションを採用した場合、売り切り型と異なり、一度獲得したユーザーから継続して売り上げが発生します。月々の売り上げも予想しやすくなるため、経営面の安定に大きく寄与します。
SaaSのメリットを活かすためには、ユーザーに継続してサービスを利用し続けてもらう必要があります。バグフィックスやユーザビリティの向上、新規コンテンツの提供など絶え間ないアップデートが不可欠です。
ユーザーの初期費用を抑えている分、開発費用などを即座に回収できず、一時的にキャッシュアウトが大きくなりがちです。サービスが軌道に乗るまで耐えられるだけの資金力が求められます。
継続利用してもらうためには、ユーザーに生じた疑問や不満を解消できるフォローアップ体制も重要です。ユーザー数の増加にあわせてカスタマーサービスの負担も増えるため、部門規模の拡大などの対応が必要となります。
最後に、SaaSを活用した成功事例を紹介します。
私たちにとって身近な例は、Googleが提供する「Gmail」です。Googleアカウントでログインするだけで、ソフトをインストールせずブラウザから利用できる仕組みは、SaaSそのものです。Gmailはその利便性の高さから2018年にはユーザー数15億人を突破しており、大きな成功事例のひとつといえるでしょう。
大手オンラインストレージ「Dropbox」も、SaaSを活用した成功事例です。端末を問わず、ログインするだけでオンライン上に保存されたデータへとアクセスできます。同期機能に優れており、一つの端末で行った変更がリアルタイムで他の端末から確認できる点に、SaaSの強みが活かされています。
SaaSをはじめとするクラウドサービスの導入は、従来では考えられなかったほどの業務効率改善を可能にします。初期費用や前提知識がほとんど必要ないなど導入自体も容易であり、活用の場面は今後ますます増えそうです。
これからの企業競争に負けないためにも、SaaSを積極的に導入し、効率化やコスト削減に取り組んでいくことが求められています。