今日のヘルスケア業界の顧客は、医療機関、保険会社、 製薬会社、医療機器メーカーに何を求めているのでしょうか。調査結果から解き明かします。
長らくヘルスケア業界の顧客にとって、医療機関、保険会社、製薬会社、医療機器メーカーが構成するエコシステムは複雑で非常に閉鎖的であり、理解するのも利用するのも困難でした。しかし、デジタル化とつながりのある体験があらゆる業界で一般化する中で (英語)、ヘルスケアとライフサイエンスの業界も、新たな機能やエンゲージメントの強化を求める消費者の需要に対応しつつあります。
とはいえ、その変化は速やかに進んでいるのでしょうか? Salesforce Researchはこれを検証するため、全世界約6,000人のヘルスケア業界における消費者を対象にヘルスケア業界への期待や実際の体験について質問し、その結果を『ヘルスケア業界の顧客動向』レポートとして公開しました。質問の内容は以下のとおりです。
消費者がヘルスケアを受ける際の一般的な課題
リアルタイムコミュニケーションに対する消費者のニーズ
ヘルスケア、ライフサイエンス組織において信頼獲得に役立つ要素
人工知能(活用)など、ヘルスケアおよびライフサイエンス業界での新たなトレンドに対する消費者の意識
このレポートでは、以下のような注目すべき結果が明らかになりました。
ヘルスケアおよびライフサイエンス業界の複雑さを考えると、消費者がその全容を把握するのに難しさを感じているのは明白です。消費者の半数以上は総合的な医療記録にアクセスする方法を把握していません。また、約60%は保険の対象となる医薬品、医療機関、処置についてよくわかっていません。
さらに、ヘルスケア、ライフサイエンス業界の対顧客コミュニケーションについて「自分のニーズ・課題との関連性がある」と回答した消費者の割合は40%にとどまっています。こうしたギャップは、消費者が求める心のこもったサービスとはかけ離れています。他の業界がパーソナライズされた体験を非常に効率的に進めている一方で、ヘルスケアおよびライフサイエンス業界は明らかに遅れを取っています。
1. 治療へのアクセスの改善
家族のサポート、リテラシー、交通機関へのアクセスといった健康の社会的な決定要因は、個人の健康に多大な影響をもたらします。多くのヘルスケア業界の消費者は、ウォークインクリニック(予約なしで行ける診療所)や訪問医療など、治療の利便性やアクセス性を高める選択肢に関心を抱いています。実際に消費者の42%は、生活上の事情により医療機関との予約時間に間に合わなかった経験があると回答しています。
2. テクノロジーベースの利便性
モバイルアプリや音声アシスタントなどの新たなプラットフォームについて、デジタルネイティブなミレニアル世代やZ世代は、それ以前の世代よりはるかに高い関心を示しています。若い世代の年齢が上がるにつれて、テクノロジーベースの利便性を求める声は高まる一方です。
3. リアルタイムエンゲージメント
コミュニケーションの嗜好を考えると、リアルタイムのやり取りを求めるトレンドは今後も継続します。
68%の消費者は、企業に対してリアルタイムでのエンゲージメントを期待しています (英語)。ヘルスケア業界の消費者のうち、ミレニアル世代やZ世代にとっては、即時性が特に重要です。こうした世代は、瞬時にフィードバックが可能で、主に外出先で使用できるテキスト、インスタントメッセージ、ビデオチャット機能を多用しています。
すでに小売業 (英語)を始めとする業界では、消費者にリアルタイムで対応していますが、ヘルスケアおよびライフサイエンス組織では導入が遅れています。しかし、One Medical (英語)やJustAnswer (英語)などのスタートアップ企業は、満たされていない消費者ニーズに対応し、ライブチャットや24時間365日のビデオ往診といったリアルタイム機能を展開しています。
消費者の約半数は、定期的に少なくとも1つの製品をブランドから直接購入 (英語)しています。つまり、D2C(直販)形態です。医療サービス機関は医薬品や医療機器の主な販売窓口になっていますが、消費者が自らインターネットで調査して知識を得られる現在では、ヘルスケアおよびライフサイエンス企業にもD2Cという新たな商機が生まれています。
36%の消費者は自らの調査によってプロバイダから良質なケアが受けられると考えており、47%は自らの調査にもとづいて医療機関に対して薬の処方に関する質問を投じていると答えています。これらの数字はミレニアル世代とZ世代ではさらに高くなっており(それぞれ43%と53%)、デジタル世代が成年に達すると、合計の割合はさらに高くなる可能性があります。
当然ですが、質の高い治療を提供しながらコストダウンを継続することがヘルスケア企業の第一の課題です。その課題に対して、人工知能(AI)は効果を発揮するでしょうか? Salesforceの調査によると、ヘルスケア業界の消費者は、AIが体験の改善に明らかに役立つと考えています。
特に消費者は、効率アップに貢献し、パーソナライズされたレコメンデーションをもたらすAIの効果(予約スケジュール、健康関連のリマインダー、コスト削減のためのレコメンデーションなど)を評価しています。この事実は、ルーティーンタスクへの対応や膨大なデータの高速処理といったAIの強みとも一致しています。
ヘルスケア業界の消費者が抱く期待のさらに詳しい解説とともに、現状のプラス点とマイナス点について確認するには、『Connected Healthcare Consumer(ヘルスケア業界のコネクテッド消費者)』レポートの全文をご覧ください。ヘルスケア業界の消費者との関係を改善する方法を学ぶことができます。
Ashwini M. Zenooz医学博士は、Salesforceの最高メディカル責任者兼ヘルスケア&ライフサイエンス担当シニアバイスプレジデントです。Zenooz博士は、直近では退役軍人局(VA)の最高メディカル責任者として、国内のEHR最新化プログラムを統括していました。Zenooz博士は正式な資格を得た放射線学者であり、現在も開業医として活動しています。TwitterとLinkedInでフォローしてください。