Salesforceでは、新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言発令の翌日(2020年4月8日)に、マーケティング本部がオンラインボランティアを開催しました。
創業当時より精力的に社会貢献活動に取り組んできたため、オフィス閉鎖によるテレワークの中、何かできることはないかという想いからスタート。現在までに日本オフィスの20近い部署・チームへと広がり、オンラインボランティアが社内のムーブメントになっています。

この記事では、オンラインボランティアを働きかけたマーケティング本部の吉田英幹、社会貢献専門部署であるSalesforce.orgに所属する松山亜紀、丸野遥香の3名の社員にインタビュー。オンラインボランティアをはじめるに至った理由や背景、思わぬ副次的効果として得られたチームビルディングへの好影響を紹介します。

初開催のオンラインボランティアに大反響

――4月8日に、オンラインボランティアとして「Zooniverse(ズーニバース)」を実施されたそうですが、これはどのような内容なのでしょうか?

マーケティング本部・吉田英幹(以下、吉田):Zooniverseは、市民ボランティアがCitizen Scientist(市民科学者)として、天文学や物理学、生物学研究者が使用するデータ収集に協力するというグローバルなプラットフォームです。具体的な内容は、サイト上に表示される写真を見て、その写真の中に何頭の動物がいるかなどを回答します。とても簡単に誰でも参加できるボランティアです。

――ゲーム感覚で楽しめそうですね!

吉田:そうなんです。オンラインボランティアというのは、チームとして初めての開催でしたが、部内のメンバーにZooniverseを提案してみたところ、皆やってみたいと言ってくれました。 5人ずつのグループに分かれ、チーム対抗戦として1時間弱ボランティアを行ったところ大変盛り上がりました。動物を見ることでリラックスできますし、ボランティアを行いながらリフレッシュできるとあって、「とても有意義な時間でした」「素晴らしい企画ありがとうございました」と部内のメンバーたちからとても感謝されました。

――でも、なぜオンラインボランティアをやろうと思われたのでしょうか?

吉田:私は社内の社会貢献委員を担当していて、これまでも児童養護施設や病児施設の支援活動など、さまざまなボランティアに携わってきました。その中で、オンラインボランティアにはずっと関心を寄せていたんです。そうしたことから、緊急事態宣言の渦中に何か社会貢献できることはないかと考え、オンラインボランティアはどうだろうと思いつきました。

――それにしても、すごいスピード感ですよね。

吉田:アイデアのもとを辿ると、発端は常務執行役員 チーフ・マーケティング・オフィサーの鈴木祥子がChatter(社内SNS)で、緊急事態宣言直後に次のようなメッセージが送られてきました。

「WFH(Work From Homeの略。テレワークと同義)での毎日お疲れ様です。そろそろWFH疲れをしていると思いますので、チームがチョッと気分転換できるボランティア&チームビルディング大募集します。​CAMP B-WELL (Live well everyday, in every way) の5つのPillarを参考にしながら提案型でチームに仕掛けてください。」

鈴木のメッセージにある「5つのPillar(柱)」ですが、Salesforceでは、健康的なライフスタイルと生産性の高い人材にとって絶対に必要である重要な5つの主要項目を定義しています。

  • 栄養(Nourish)・・・健康的な食事に関する目標に取り組むために役立つ知識を得ます。
  • 回復(Revive)・・・十分な睡眠、休み、電源オフなどのリソースを利用して元気を取り戻します。
  • 運動(Move)・・・自分のライフスタイルに合わせた運動や活動で、身体に良いことをします。
  • 成長(Thrive)・・・ストレスにうまく対処し、回復力を養い、柔軟に対応します。
  • 繁栄(Prosper)・・・自分の経済状態を注視し、将来の備えに役立つ知識を蓄積します。

鈴木はもとより、社員は普段からChatterを通じてフランクにコミュニケーションを取っているので、提案しやすい環境だったというのも、オンラインボランティアをいち早く開催できた理由のひとつです。

社会貢献へのコミットを強固にする「1-1-1モデル」

――Salesforceは、社会貢献専門の部署としてSalesforce.orgを設置されていますよね。組織としてボランティアに本気で取り組まれていることが窺えます。

Salesforce.org・松山亜紀(以下、松山):私たちは創業当時から、「世の中を良くすることがビジネスの本質である」と信じて有言実行してきました。それを象徴するのが「1-1-1モデル」です。これは、就業時間の1%、株式の1%、製品の1%を社会貢献に充てるというものです。創業初期から会社の規模が拡大したいまに至るまで継続しています。

――具体的な数値で示しているところは、とてもユニークですね。

松山:そうですね。就業時間の1%については、実は先日ちょうどグローバルで累計500万時間を超え、社会に対して非常に大きなインパクトをもたらしていると思います。株式の1%は、これを原資として若年層の就労支援を展開するNPOなどへの助成を行っています。製品の1%については、NPOに無償や割引で弊社製品のライセンスを提供し、寄付者・会員情報の管理やファンドレイジングの管理に使っていただいています。

――では、今回のオンラインボランティアに関しても、就業時間の1%に含まれているということでしょうか?

松山:はい。日本オフィスでは、一人あたり年間目標として56時間をボランティアに割り当てられており、今回のオンラインボランティアに関しても業務時間内に実施しました。とはいえ、Salesforce.orgでのボランティア活動促進の専任は丸野のみですから、1人ですべてを担うのは困難です。そこで、ボランティアの企画、推進を担うために、全社で約70人の社員が社会貢献委員として協力してくれています。吉田もその一人です。

――なるほど。社会貢献への並々ならぬ思い入れを感じます。

松山:やはり創業者兼共同CEOのマーク・ベニオフが、常に社会貢献にまつわる発信をしており、コミュニティへの貢献を通じた社会課題の解決をトップダウンで牽引していることが大きいのではないかと思います。

――Salesforce.orgでも、オンラインボランティアを推進されていたのでしょうか?

Salesforce.org・丸野遥香(以下、丸野):オンラインボランティアは、もともと社会貢献部門がまとめて社内向けに公開していたボランティアメニューのひとつでした。新型コロナウイルスの影響で全社的なテレワークとなったことで、吉田をはじめ自分たちにできることは何かを探し、検討する中で社会貢献部門でまとめたメニューを役立ててもらえたかたちです。 ボランティアについては、社員の自主性に委ねられている部分が大きく、1-1-1モデルに共感している社員が多いのか、Chatterでの募集がすごく活発です。今回のオンラインボランティアもChatterで吉田が報告したところ、部門を超えて大きな反響がありました。

オンラインボランティアはテレワーク時代のチームビルディングのヒントにもなる

――オンラインボランティアは、とても好評だったとのことですが、どのような手応えを感じていらっしゃいますか?

吉田:マーケティング部では、2週間も経たないうちに2回目を実施しました。部内のメンバー45人のうち35名ほどが参加しています。また、Chatterで日本オフィスの全員が閲覧できるスレッドに実施報告を投稿したら、66件ものコメントが寄せられました。他の部署のマネージャーからも「うちでもやりたい!」という声があがり、20以上のチームに横展開されました。

――常日頃からボランティアへの意識が高いのに加えて、全社員テレワークという状況も反響につながっていそうですね。

吉田:そうだと思います。テレワークはとても生産性が高い一方で、チームビルディングの観点に立つと課題も少なくないと思います。face to faceならオンラインでもできますが、そもそも会議がミルフィーユのごとく立て続けに入るので、業務に直結しない雑談がしにくい印象です。でも、出社していれば、会議の移動中やちょっと席を立ったときに、ささいな会話が気兼ねなくできますよね。

松山:チームビルディングは、同じ場を共有していることで生じる偶発性に助けられているケースが多いと思うんです。たとえば、マネージャーがメンバーと顔を合わせたとき、何となく気になってさりげなく声をかけるとか、しっかりと時間を取らなくても、特別に何か仕掛けなくても、場所を共有していることによってコミュニケーションが生まれます。でも、テレワークだとあえて時間を作ってコミュニケーションする必要があるのではないかなと。

吉田:緊急事態宣言以降、オンラインボランティア以外にもオンライン飲み会やオンラインヨガなど、いろいろな取り組みを実施しています。でも、社会貢献というひとつの目的のもとに実施したからこそたくさんのメンバーが参加してくれましたし、参加したことにより孤立感や寂しさが紛れたと言ってくれました。もちろん本質は社会貢献ですが、図らずもチームビルディングにもプラスに働いたと思います。

松山:チームビルディングの土台でもあるコミュニケーションに関しては、確かに工夫が必要だと感じます。業務時間内に「雑談したいからオンライン会議をしましょう」と呼び掛けるのは、罪悪感がありますよね。その点、オンラインボランティアは業務時間に行えますし、チームで取り組んだことで結束力の向上につながったのではないでしょうか。

――では最後に、今後オンラインボランティアをどのように推進していきたいのか、お聞かせください。

丸野:実は、今回のZooniverseをきっかけとして、その後さまざまなオンラインボランティアをコーディネートしており、4月末までに既に2,400時間ものオンラインボランティアが実現しました。たとえば、休校で家にいる子どもたち向けに居場所作りを手掛ける団体があります。その団体がオンライン上にプラットフォームを構築しているので、そこで子どもたちと対話をするようなボランティアに参加しています。また、NPO団体様の研修やワークショップのオンライン化にアドバイスするボランティアなども実施しました。これからも世の中のニーズに合わせて私たちのボランティア文化を発展させて、コミュニティ支援を継続していきたいです。

松山:緊急事態宣言を契機に、自分と社会、職場とのつながりを再定義する気運が高まっていると思います。ボランティアもそのひとつであり、自分が社会にどう貢献できるか向き合うきっかけにもなります。Salesforceとして、これからもオンラインボランティアも含めて、社会に何を貢献し、どのようにつながっていけるのかを改めて考えていきたいと思っています。

吉田:ハワイ語で家族の絆を表す「オハナ」という言葉があります。Salesforceはオハナカルチャーがあると言われるくらい、普段からシェアの精神はもとより、社員同士の濃いつながりがある会社です。しかし、それでもテレワークにおけるチームビルディングには課題を感じています。そうした中で、オンラインボランティアは、社会貢献でありながらもチームビルディングにプラスのエッセンスをもたらすと思います。今後もオンラインボランティアについて発信を続けていきたいです。

 

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