コミュニティがビジネスに大きく影響する時代――。企業は今、どのようにコミュニティを活用していくべきなのでしょうか。7月に開催された、Salesforce Summer 2018セッション「コミュニティはなぜ企業にとって重要なのか?」において、ソーシャル経済メディア「NewsPicks(ニューズピックス)」でコミュニティづくりに注力している小野晶子氏と、Salesforceユーザーグループ幹事長を務めるSOMPOシステムズの久保田和巳氏が、コミュニティの価値をそれぞれの視点から語りました。

「コミュニティ」が検索ワード上位にランクインする理由

―コミュニティを価値の源泉とする新メディア「NewsPicks」。小野氏はコミュニティとビジネスの深い関係性を次のように示します。

NewsPicksでは、これまでコミュニティビジネスをテーマにした特集を組んでいます。早くから企業コミュニティを立ち上げた「楽天大学の試行錯誤」や、クリエイターのエージェント会社・コルク代表の佐渡島庸平氏による「ファンコミュニティの育て方」など、有料記事にも関わらず多くの方に読まれています。また、2017年11月以降は「コミュニティ」という言葉が検索ワードの上位にランクインするようになりました。

なぜ、コミュニティビジネスがここまで注目されているのでしょうか。その要因の1つには「マスメディアからの広告」という形でのメッセージが、ユーザーや消費者に届きにくくなったという現実があります。米国の調査会社「フォレスター・リサーチ」によれば、約4割の成人がオンライン広告をブロックしているといいます※。

ユーザー側に視点を移すと、孤立していると感じる人が増えているなか、コミュニティへの関与が健康上でも意味があるという点で注目されています。米国心理学会の発表では「孤立感は肥満よりも深刻な健康脅威」として、とくにスマホを積極的に活用する世代ほど“人との関係構築が上手くできず、うつ傾向にある”と自己分析する人が増えていると指摘します。まさに今の時代、企業側はマスメディアでの広告に代わるものを求め、ユーザーは企業とも深い関係性やつながりを重要視するようになり、両者にコミュニティというニーズが現れてきました。

※出典:米フォレスター・リサーチ調査、CMX SUMMIT 2017より

企業がコミュニティ運営を成功させる3つのポイント

そもそも、NewsPicksは「コミュニティをその価値の源泉」とする新しいビジネスモデルを形成しています。最も特徴的なのは記事に対し、実名登録しているユーザーが自由にコメントできること。専門家や有識者の公式コメンテーター「プロピッカー」にも参画してもらい、コミュニティ内で記事への知見を共有できる仕組みです。現在このビジネスモデルは米国でも注目を集め、今後海外展開を本格化させる予定です。

コミュニティの概念を重要視する当社では、Salesforceのコミュニティ運営に注目しています。そこには3つの素晴らしさが存在すると感じています。
1つは、「ユーザー同士の意見交換を促し、改善提案を受けサービスに反映している」こと。いただいた意見をどれだけ実現できたかまで公開するのは、なかなか企業としては勇気のいることです。
2つ目は、「カスタマーサクセスを徹底して追及している」こと。コミュニティに参加される方のインセンティブがスキルを身につけられることであり、キャリア形成まで描いている点は見事です。そして3つ目がコミュニティ運営に最も大切な「運営側の透明性の担保」です。ユーザーの真の信頼を得るためには透明性が最も重要になります。
企業によるコミュニティ運営は難しいとされています。それは、どうしても売上への直接的な効果を期待してしまいがちで、必死になればなるほどユーザー離れが進んでしまうからです。コミュニティへの参加がカスタマーサクセスに直結し、そのまま製品イノベーションの動力源としているSalesforceのあり方は、まさに後を追う企業の参考となるはずです。

コミュニティ参加で手にするメリット

―事実、カスタマーサクセスをミッションとするSalesforceでは、コミュニティの活性化はそのミッション達成のために不可欠なものとして、オンライン、オフラインでのコミュニティ活動を積極的に行なっています。Salesforceユーザーグループのリーダーとして長年コミュニティに参画するSOMPOシステムズの久保田和巳氏は企業にとってのメリットを次のように語ります。

当社ではコールセンターをはじめ多様な業務にSalesforceを導入しており、2014年からService Cloudのユーザーを中心にした「Service Cloud分科会」のリーダー、さらに2016年からは母体となるSalesforceユーザーグループ幹事長として活動しています。 10年前とは、比較にならないほど参加ユーザー数は増えています。製品別にとどまらず、製造業分科会、働き方改革勉強会など内容も多様化し、その数は全国で40にものぼります。 なぜ、私自身がこれほどまでにコミュニティに力を入れてきたのか。大きな理由は2つほどあります。1つは社内では解決できないSalesforceにまつわる課題の解決方法を知ることができること。例えば、オンラインコミュニティである「Trailblazer Community」に質問を投げかければ、MVPをはじめとするパワーユーザーから早ければ10分程で返答が得られることもあります。もう1点は、Salesforceに機能改善を促せること。いわば圧力団体と言えます(笑)。1社だけでは弱い訴えも、同じ要望があるユーザーがまとまれば強力な訴えとなるわけです。

コミュニティはイノベーションやアイディアが生まれる場

経営者視点から考えると、多様な視点を得ることができ、これからの時代に必要なイノベーションやアイディアが生まれる場として大変価値があると考えています。当社はシステム会社ですが利用者の視点というのもがなかなか分かりにくい。ユーザーグループやコミュニティでは営業職、マーケター、総務などさまざまな立場の方と自由に意見を交換することで、システムに何が求められているかを肌で感じることができます。
加えて、コミュニティに参加される方というのは、先程の質問への回答でも分かるように、熱があり、愛があり、大変ポジティブな環境があります。弊社からも社員をコミュニティに送り出していますが、そういった環境に身をおくことで自然とモチベーションがあがり、新しい発想、アイディアへの視点が養われています。これからの時代に必要とされるイノベーションが生まれる場。企業経営者やマネージャー層の方々には、まず部下の方々のコミュニティへの参加を支援していただきたいと思います。

関連リソース

登壇者一覧

株式会社ニューズピックス
コミュニティチーム
コミュニティ・マネージャー
小野 晶子氏

SOMPOシステムズ株式会社
執行役員/人材統括本部
副本部長 兼 経営企画本部 副本部長
久保田 和巳氏