企業において顧客に対応する部門がどこかを考えた時、従来であればIT部門が真っ先に思い浮かぶことはなかったかもしれません。 しかし、今は違います。 IDG社の記事(英語)によれば、大企業のIT部門は、これまでとは比較にならないほどカスタマーエクスペリエンス(顧客体験)に大きく注力しており、その重要性は高まる一方です。

Salesforceが全世界2,200人以上の IT部門のリーダーを対象に調査結果をまとめた年次レポート『IT最新事情』によると、IT部門のリーダーの75%が、同部門の役割は過去に例を見ないほど大きく変化していると考えていることが明らかになりました。IT部門はビジネスに深く根付き、顧客中心のデータやプロセスを支えるうえで欠かせない役割を担っていると回答しています。そこで今回は、『IT最新事情』の調査結果をもとに、IT部門がより良いカスタマーエクスペリエンスを実現するために果たす役割とその重要性を紐解きます。

かつて、IT部門は脇役と考えられていました。 しかし、現代のビジネスにおいてはこの認識は現実から大きくかけ離れており、 多くの企業は、IT部門をイノベーションリーダーであると考えています。そして昨今、IT部門は企業全体がよりスマートに、よりスピーディに、より効率的に業務を遂行するにはどうすればよいか、模索し続けています。 時代の先端をいくビジネスリーダーは、この転換を機にIT部門に対しても、トップクラスのマーケティングチームに対するのと同じくらい頻繁に、企業の競争力を上げるよう働きかけています。

これはなかなか賢いやり方です。 デバイス(さらに私たちの生活)はかつてないほどインターネットで密につながっているため、高いパフォーマンスを発揮するIT部門がカスタマーエクスペリエンスの最前線に立つ必要が出てきました。 マーケティングに対する顧客の期待やパーソナライズされた顧客サービスは、それらを実現するテクノロジーがなければ意味をなさないからです。

ITは顧客の期待が主導する新たな時代に突入する。 81%のIT部門のリーダーはそう考えています。

 

IT部門がカスタマーエクスペリエンスを支える

一般的に言えば、カスタマーエクスペリエンスに関してIT部門は裏方に回りますが、各事業部門がそれぞれの目標を達成するためにはIT部門と各部門との連携が不可欠です。 実際、IT部門のリーダーの79%が、ビジネス全体でカスタマーエクスペリエンスを向上させる上で、IT部門は最も重要な役割を果たしていると考えています。 IT部門という基盤がなくては、各事業部門のカスタマーエクスペリエンスを向上させることはできません。

IT部門はかつて、「滞りのない業務遂行」のためのプロジェクトに重点を置くコストセンターでしたが、今ではビジネスと緊密に統合されるようになり、IT部門と他部門との境が曖昧になってきています。 部門間の関係が以前より深まる中、IT部門のリーダーの77%が、IT部門は事業部門の拡張組織/パートナーであり、独立した部門ではないと考えています。 ここで問題となるのは、「IT部門は、マーケティング部門や営業部門、サービス部門の顧客中心主義を支えることができるのか?」ということです。

 

IT部門と他部門の連携は顧客の期待に応えるための必須条件

さまざまな部門のニーズに応えるには、連携が不可欠であることは言うまでもありません。 IT部門に求められるのは、あらゆる部門の優先課題を理解する姿勢です。 反対に、各部門はIT部門が数多くの仕事を抱えていることを理解する必要があります。 IT部門の役割がカスタマーエクスペリエンスの革新や強化にまで広がる一方で、従来の仕事である「滞りのない業務遂行」のニーズがなくなったわけではないのです。 部門間の連携には、CIOとIT部門のリーダーが優先順位を厳密に定め、全社に周知徹底させる必要があります。

IT部門が「御用聞き」から「サービスを提供するチーム」に移行することでプロジェクトの数が増え、すべてに対応することができなくなります。 実際、顧客対応業務に関する取り組みの過半数(56%)は遂行されていません。

IT部門はこの状況を改善するため、全社的な連携強化に今まで以上に力を入れています。 IT部門の67%が他部門との連携強化が最優先課題であると回答しており、これは、セキュリティポリシーとその実践の強化に次いで2番目に多い回答でした。

問題なのは、パフォーマンスの高いITチームであっても事業部門の垣根を越え優先課題に関する意識統一がうまく図れているのがわずか44%であるという点です(パフォーマンスの低いチームでは11%)。顧客の期待が大きくなる中、これではペースの速いチームのニーズを満たすことはできません。 事実、法人の購買担当者の77%が「テクノロジーの進化によって企業の顧客への対応に対する期待が大きく変わったと回答。 さらに、Salesforceの調査レポート『State of the Connected Customer(英語)』によれば、消費者の75%が「あらゆるやり取り(Webサイト、ソーシャルメディア、モバイル、対面)において一貫した体験を期待している」と回答しています。

では、カスタマーエクスペリエンスの変革を促しているテクノロジーにはどのようなものがあるでしょうか。 AI(人工知能)を駆使したチャットボットなら、友人や家族とのコミュニケーションに日常的に使用されているメッセージングアプリの中で、自社ブランドとのシームレスな体験を提供できます。 デバイス同士がつながるモノのインターネットなら、修理の機会を予測できます。 持ち主が故障に気付く前に、修理が必要なことをデバイスが修理部門に直接通知する世界を想像してみてください。 未来の話のようですが、こうした顧客サービスはすでに存在しています。その結果、最先端のカスタマーエクスペリエンスに対する期待は急速に膨らんでいます。 こうしたテクノロジーは顧客サービス部門だけでは導入できません。イノベーションを現実のものにするにはIT部門の力が必要不可欠なのです。

 

IT部門の優先課題:顧客情報の一元管理

企業に事業部門がいくつ存在していようと、増え続ける需要がIT部門の対応能力を超えてしまおうと、顧客には関係ありません。 顧客は会社を1つの組織として考え、どのやり取りにも一貫性を求めます。

IT部門はこうした期待に応えなくてはなりません。  IT部門のリーダーの61%が、顧客情報の一元管理を今後12~18か月の間の優先課題であると回答しています。 また、こう回答したパフォーマンスの高いチームは、低いチームの3.2倍です。

顧客情報の一元管理は、企業のあらゆる部門にメリットをもたらします。 個々の顧客に関するすべての情報を企業全体で共有することで、各部門が最先端のカスタマーエクスペリエンスを実現できます。 顧客サービス部門は、一人ひとりに応じたシームレスなサポートを提供し、 営業部門は、顧客の履歴を踏まえてクロスセルやアップセルの機会を見つけられるようになります。 さらに、マーケティング部門は、顧客に合わせて適切なメッセージをタイミングよく届けることが可能になるのです。

IT部門のリーダーが、社内のビジネスパートナーとの連携強化を最優先し、顧客を中心に据えて意思決定を行い、つながりの深い最高の体験を創出する。その重要性は、かつてないほど増しています。

ビジネスにおけるIT部門の役割の変化について詳細は、Salesforceの第2回年次調査レポート『IT最新事情』でご確認ください。 

本ブログは、本社で発表された「Why CIOs and IT Leaders Are Prioritizing Customer Experience」の抄訳です。