テクノロジーの進展により、顧客の購買行動が大きく変わり続ける中、「カスタマーエクスペリエンス(CX:(顧客経験価値)」の重要性がますます高まっています。
カスタマーエクスペリエンスとは、商品やサービス購入前の選定・導入・利用・サポートなどの企業との接点を通じて顧客が感じる「価値」のこと。カスタマーエクスペリエンスを高めるためには、製品やサービスの質をあげることはもちろん、顧客に更なる付加価値を体験してもらうことが大きな効果を生みます。この付加価値を体験してもらうための重要な顧客接点の一つがカスタマーサービスです。
NewVoiceMediaの調査によれば、米国の企業は、カスタマーサービスの不備が原因で年間 620 億ドルもの利益を逃しているといわれています。(詳細はこちら(英語)※外部サイトに移動します)
原因はどこにあるのでしょう?そのヒントを探るために、顧客の行動に関するデータをご紹介します。顧客が何らかのトラブルを体験した際、苦情を申し立てる顧客は業種・業態を問わず、多くても25%程度。70%以上の顧客は苦情を申し立てないまま、場合によっては悪評の口コミを広めると言われています*。
受け付けた苦情件数は氷山の一角
(*出典:Salesforce 『グッドマンの法則』に学ぶ カスタマー・エクスペリエンスの新常識)
また、Salesforce Researchの最新調査よると、優れたカスタマーサービスを提供することの重要性は、これまでになく高まっており、「1回のサービスエクスペリエンスの悪さが顧客関係に与えるダメージの大きさは5年前よりも増大している」と答えたサービスチームは68%にものぼります。さらに、消費者の70%、法人の購買担当者の82%が、「ITの活用により取引先を簡単に変えることができるようになった」と回答しています。顧客が自身でさまざまなチャネルを自在に操りながら、購入や乗り換えを実行していける今、受動的なサービスを提供しているだけでは、顧客の行動に追いつくことはできません。
顧客の行動を正しく理解し、カスタマーエクスペリエンスを高めるには、一体どうすればよいのでしょうか。そして、高まり続ける要望に応えるために、世界のカスタマーサービスチームはどのようなことに取り組んでいるのでしょうか。
今回は、Salesforce Researchが全世界 2,600 人のカスターサービス関係者を対象に徹底調査した結果をまとめた、『カスタマーサービス最新事情』をもとに、世界のカスタマーサービスにおける現状について、日本と海外の比較も交えながらご紹介していきます。
より良いカスタマーサービスを提供するためには、会社全体がひとつになって、顧客と向き合う必要があります。顧客対応のあり方が様変わりする中、サービスチームの多くは、顧客の要求に応えるだけではなく、企業のカスタマーエクスペリエンスの向上を主導する役割も果たすようになっているようです。
本調査によれば、カスタマーエクスペリエンス向上のための、全社的な取り組みを主導していると答えたサービスチームは全体の3分の2以上(68%)にのぼります。また、サービスチームの中でも高いパフォーマンスを発揮するサービスチーム程、高い確率で部門横断の改善活動を自らがリードしていることも明らかになりました。
例えば、パフォーマンスが高いチームが「サービス部門と営業部門が同じ目標と指標を共有」していると答えた割合は、低いチームの1.8倍に上っており、営業チームとの連携が強ければ強いほどビジネスチャンスをものにできる確率が高まることが見て取れます。
このように、サービスチームが営業チームやマーケティングなど他の部門と連携し、一貫したカスタマーエクスペリエンスを提供し、顧客とのエンゲージメントを高めることができれば、前述の苦情の例のように顧客を理解できないまま競合に乗り換えられてしまうというリスクは避けやすくなるかもしれません。
最近まで、サービスチームの優先課題は、短時間でいかに多くのケースを解決できるかが優先課題でした。
しかし、昨今の顧客中心の考え方を反映し、優先課題やサービスチームで使用される重要度評価指標(KPI)も変化しつつあるようです。
本調査によると、過去12 - 18か月間は、サービスチームの70%が戦略的ビジョンの一環として顧客との関係を深めるための取り組みを強化したと回答しており、顧客との強化やチャネルをまたいだ一貫性あるカスタマーエクスペリエンス実現など力を入れていることがわかります。
ここで国別のデータを見てみたいと思います。まず、アメリカのデータを見てみると、パフォーマンスを測定するため顧客思考のKPIの数を増やしたと回答した担当者の割合は71%。戦略的ビジョンの項目をみても、顧客との関係を深めるための取り組みを強化したと答えた担当者の割合は77%で、顧客中心のサービスが戦略的ビジョンの中核に据えていることが分かります。
一方、日本のデータを見てみると、「パフォーマンスを測定するために顧客思考のKPIを増やした」と回答した担当者の割合は37%にとどまっています。また、「顧客との関係を深めるための取り組みを強化したか」などの項目を見ても、今はまだアメリカはもちろん、他の国の数字と比較してもまだまだ低い数字であると言えます(カナダやフランス、ドイツなど他の国のデータの詳細はこちらをご覧ください)。
今や、カスタマーエクスペリエンスは、企業の競争優位性を高める上で重要な要素となっていることから、日本でも今後重要性が増していくことは間違いないでしょう。では、顧客中心のサービスを導入していく上で、必要なことはどんなことでしょう。
IT技術の発展により、顧客と企業の間のチャネルは一気に増加しました。以前は電話やメールといったやり取りが主流でしたが、今や5種類以上のチャネルを通じてカスタマーサービスを提供しているチームが半数を超えています。本調査で、下記のようなチャネルを通じてカスタマーとのやり取りを行っていることがわかりました。
このようにチャネルが多様化する中、すべてのチャネルにおいてパーソナライズしたサービスを提供することは非常に困難になってきており、専用のITツールの導入が急がれています。実際、カスタマーサービスに関連するテクノロジーの導入は一気に広がっています。AI(人工知能)や予測インテリジェンスといった、インテリジェントサービスの普及もトップチームを中心に本格化してきました。
サービステクノロジーを取り入れ、効率的かつ効果的なカスタマーサービスを提供していくことが、競合との差別化を図る近道といえそうです。
今回データを参考にしたeBook「カスタマーサービス最新事情」では、今回紹介した以外にもカスタマーサービスに関する貴重なデータが多く掲載されています。ぜひダウンロードし、あなたの会社のカスタマーサービス向上にお役立てください。