コールセンターは、かつては多くの企業が苦情処理を行なうためのコストセンターとして、その設置意義を消極的にとらえていました。しかし経済の成熟で消費者ニーズが多様化するのに伴い、企業は純粋に製品やサービスだけで厳しい競争に勝つことが難しくなり、顧客とダイレクトにつながるコールセンターは、エンゲージメントの端緒となる重要拠点として重要視されるようになりました。今日では、コールセンターに集まる多数の顧客の声を、経営に活かせるかどうかは、企業の長期的な成長を左右する大きな要素といえるでしょう。
コールセンターに集まる情報が、企業経営にとって貴重なものとなるほど、同時にそこで働く人材の質が重要になってきます。適切なコミュニケーションを図ることで、問い合わせ客に不愉快な思いをさせずに、不満や疑問を解消へと導く能力、あるいは収集した情報を深く分析して、そこから新たな商品・サービスを創出するためのヒントを導き出す能力など、コールセンターで求められる能力は多様です。
特に顧客と直接的に会話をするエージェントのコミュニケーション力は、コールセンターの情報収集のカギとなるものです。コミュニケーションの善し悪しによって、収集情報の量や質が決まります。それだけでなく、対応後、電話した顧客が企業から離れてしまうのか、逆により良い顧客体験(Customer Experience)へと誘って、企業のファンになってもらうのかという、両極端の結果へとつながります。
こうしたコミュニケーションでは、顧客の声の調子や抑揚などで瞬時に感情や考えを推測し、同時に最善の対応を行なうことが求められます。当然、一朝一夕に修得できる能力ではありません。また、IT活用が進む現在では、エージェントが覚えなければならない商品知識も多様化・高度化しており、知識面でのジョブトレーニングにも時間がかかります。
この状況と相反するかのように、近年、コールセンターでのエージェントの離職率が高まるという問題が発生しています。そして離職者の抜けた穴を埋めるために募集をかけても、人手不足の影響もあって、かつてのようには応募者が集まらず、必要な人材を十分に確保できないという厳しい環境が続いています。
なぜコールセンターでは離職者が多いのでしょうか? 表向きの理由、つまりエージェントが離職時に上司に伝えた理由は「体調不良」「家庭の事情」「結婚・育児」が多数を占めます。しかし関連団体が数年前に、離職者にヒアリングを行う追跡調査を実施したところ、真の理由は建前とは異なり「組織・上司への不満」「業務や業務環境への不適合」「人間関係への不満」などでした。
コンタクトセンター専門アドバイザーとして、数多くのコールセンターの新規設立やマネジメント体制の確立・改革、人材育成などに携わってきた鈴木誠氏が解説する eBook「コールセンターに人材が定着しない6つの理由」では、離職理由から浮き彫りになった、組織作りに失敗するコールセンターの「6つの共通点」を説明しながら、適切なコールセンター運営のあり方を提言しています。
(コンタクトセンター専門アドバイザー 鈴木 誠 氏)
「組織・上司への不満」の元となっているのが「コールセンターの運営ポリシーや業務フローが不明確」というケースです。企業の製品やサービスが千差万別であるように、コールセンターの目指すべき方針や業務の進め方も一様ではありません。しかしコールセンターの管理者自身が、十分に運営ポリシーなどを把握できておらず、エージェントに対して適切な指示・徹底ができないため、エージェントは業務への不安感が強くなり、組織や上司への不信感が生まれます。
コールセンターの重要な仕組みの1つであるFAQ(Frequently Asked Question)が整備されていないと、エージェントの対応方法がルール化されません。優れたFAQシステムはスムーズなコミュニケーションを促し、エージェントのストレスを減らします。適正なFAQシステムの構築は、導入システムの成熟度や柔軟なカスタマイズ性にかかっており、システムにどれだけ豊富なノウハウを埋め込めるかが決め手となります。
センター内でのコミュニケーション不足の一因は、情報共有やディスカッションの欠如です。風通しの悪い職場は、スタッフのモチベーションが低下して、ポテンシャルを十分に発揮することができません。コールセンターが、業務に適した人材を採用できないことの原因にもなります。ふだんスタッフとのコミュニケーションを十分に図っていれば、センターで必要な能力をプロファイルすることができ、それに沿った人材を採用することができます。
現在、多くのコールセンターで使っている代表的なKPI(Key Performance Indicator)は、応答率、呼損率、稼働率、平均処理時間などです。企業を取り巻くビジネス環境や運営ポリシーが変化するのに応じて、当然KPIも変えていくべきです。しかし従来型の硬直したシステムを使っているために、それが自動的にはじき出すKPIを鵜呑みにするコールセンターが多いのが実情です。
限られた人員でより生産的な仕事ができるようにコールセンターを変革するには、最先端の技術を最大限活用して、エージェントは人間にしかできない業務に専念させるべきです。コールセンターでは、導入システムの品質によってセンター全体のクオリティに大きな差が生まれます。優れたシステムだけが、顧客との結びつきを深めるカスタマーサポートが構築できます。
コールセンターのクオリティ向上のためには、ビジネス環境の変化に応じて、システムを改良していく作業が重要となります。日々の業務で得られた気付きや知見を元に、システムの細かい調整・改変の必要性も頻繁に発生します。多くの企業では、コールセンター外の組織である、本社の経営企画部やシステム部などが対応するケースが多く、それが業務のスピード感を削ぐ要因となっています。
以上の「6つの理由」について、eBookでは詳しい説明があり、それぞれの解決策についても指導しています。またAIの活用など、今後のコールセンターの動向についても詳説しています。詳しくは下記のeBookをご覧ください。